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分からないことだらけ
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結局、ヒッチハイクで雷亜が家に帰れた頃には東の空が白み始めていた。
家に着き、鍵を開けようとしたら、トレーニングに出る達也とかち合った。
「た、ただいま……」
「なんだ、お前。帰って来れたのか」
「なんとかね」
「じゃあ、俺がランニング終わるまでに朝食を用意しとけ、卵は半熟のスクランブルな」
「えっ?ちょっと待って、俺……」
──疲れたから学校に行く時間まで仮眠したい、と言いたかったが、達也は言うだけ言ってトレーニングに行ってしまった。
こんな日くらいゆっくり休ませて欲しいと思ったが、昨夜からの事が叔父の耳に入っても嫌なので、疲れてはいたが達也の言う通りにした。
達也が戻り、シャワーを浴びている間に急いで朝食をテーブルに並べる。
要望通りの半熟のスクランブルエッグにカリカリベーコン。青じそドレッシングの海藻サラダにジャガイモのポタージュスープ。
オーブンから焼き上がった厚切りトーストを慌てて取り出し、冷えたカルダモン入り蜂蜜レモンウォーターをコップに注いだところで、丁度達也が椅子に座った。
(──間に合った~!)
雷亜は胸を撫で下ろし、達也の正面に座った。
達也は蜂蜜レモンウォーターを口にしながら、トーストを齧り始めた。
雷亜はその様子をじっと伺い、そこはかとなく質問した。
「達也、あのさ、シャノンが昔、日本人に世話になったって話、具体的にどんな事か聞いたことある?」
「いや、詳しくは知らないなあ」
「そうなんだ……。でも、日本人には甘いって言ってたよね。ってことは達也には優しいの?」
ギロリ──と、達也が此方を睨んできた。
「そういやお前。学校の廊下でいきなりシャノンに告白してたよなあ!なんだ、ありゃ?」
雷亜はドキリとした。
「あ、あれは違う!単なる勘違い!!──痛っ!!」
達也の奴がテーブルの下から脛を蹴ってきた。
「嘘つくな!ありゃマジだったろ!正直に言ってみろ!一目惚れか?」
「い、いや違う!」
「ああ???!」
「あ、はい。そうです!」
もう何て答えたらいいんだ。
「うん……きっと、一目惚れ。だから昨夜は、思いっきり振られて終わり……」
(──そうだ。もう終わりなんだ。向こうも酷かったけど、俺も酷かった。あんな酷い者同士、惚れたも糞もない。ただ、終わり。
──終わりにするのが一番だ)
しかし、そう思うと途端に全身の力が抜けてくる。
カラカラに干からびた枯れ木と同じ。
潤いが全てなくなり、あとは風化するのを待つばかりだった。
「そりゃそうだ。そんな汚ない顔、振られるに決まってる。でも良かったなあ。一晩であっさり振られて。無駄に想いが募ると余計に辛いだけだろ。一晩なら逆にサクッとスッキリじゃね?」
(この言い草は俺のことを慮っているからなのか、人の不幸を笑っているのか……多分、達也の事だから後者だな……。
──サクッとスッキリなんてするかよ、バカ!!)
雷亜の想いは昨日やそこらではないのだ。
「達也は……あの人と仲がいいの?」
試合の際、達也がシャノンと交代するシーンが思い浮かんだ。
嬉しそうに微笑む達也と──、シャノンは──。
「あの人は達也に微笑んでくれるの?」
「あ?」
「日本人に甘いってことは、そういうことだよね。優しく微笑んでくれたりするってことだよね……」
「いや……、あの人はそんなに笑う人じゃねえよ。そういや笑ってるところは俺も見たことねえなあ」
「え?!」
(──そうなんだ?!)
家に着き、鍵を開けようとしたら、トレーニングに出る達也とかち合った。
「た、ただいま……」
「なんだ、お前。帰って来れたのか」
「なんとかね」
「じゃあ、俺がランニング終わるまでに朝食を用意しとけ、卵は半熟のスクランブルな」
「えっ?ちょっと待って、俺……」
──疲れたから学校に行く時間まで仮眠したい、と言いたかったが、達也は言うだけ言ってトレーニングに行ってしまった。
こんな日くらいゆっくり休ませて欲しいと思ったが、昨夜からの事が叔父の耳に入っても嫌なので、疲れてはいたが達也の言う通りにした。
達也が戻り、シャワーを浴びている間に急いで朝食をテーブルに並べる。
要望通りの半熟のスクランブルエッグにカリカリベーコン。青じそドレッシングの海藻サラダにジャガイモのポタージュスープ。
オーブンから焼き上がった厚切りトーストを慌てて取り出し、冷えたカルダモン入り蜂蜜レモンウォーターをコップに注いだところで、丁度達也が椅子に座った。
(──間に合った~!)
雷亜は胸を撫で下ろし、達也の正面に座った。
達也は蜂蜜レモンウォーターを口にしながら、トーストを齧り始めた。
雷亜はその様子をじっと伺い、そこはかとなく質問した。
「達也、あのさ、シャノンが昔、日本人に世話になったって話、具体的にどんな事か聞いたことある?」
「いや、詳しくは知らないなあ」
「そうなんだ……。でも、日本人には甘いって言ってたよね。ってことは達也には優しいの?」
ギロリ──と、達也が此方を睨んできた。
「そういやお前。学校の廊下でいきなりシャノンに告白してたよなあ!なんだ、ありゃ?」
雷亜はドキリとした。
「あ、あれは違う!単なる勘違い!!──痛っ!!」
達也の奴がテーブルの下から脛を蹴ってきた。
「嘘つくな!ありゃマジだったろ!正直に言ってみろ!一目惚れか?」
「い、いや違う!」
「ああ???!」
「あ、はい。そうです!」
もう何て答えたらいいんだ。
「うん……きっと、一目惚れ。だから昨夜は、思いっきり振られて終わり……」
(──そうだ。もう終わりなんだ。向こうも酷かったけど、俺も酷かった。あんな酷い者同士、惚れたも糞もない。ただ、終わり。
──終わりにするのが一番だ)
しかし、そう思うと途端に全身の力が抜けてくる。
カラカラに干からびた枯れ木と同じ。
潤いが全てなくなり、あとは風化するのを待つばかりだった。
「そりゃそうだ。そんな汚ない顔、振られるに決まってる。でも良かったなあ。一晩であっさり振られて。無駄に想いが募ると余計に辛いだけだろ。一晩なら逆にサクッとスッキリじゃね?」
(この言い草は俺のことを慮っているからなのか、人の不幸を笑っているのか……多分、達也の事だから後者だな……。
──サクッとスッキリなんてするかよ、バカ!!)
雷亜の想いは昨日やそこらではないのだ。
「達也は……あの人と仲がいいの?」
試合の際、達也がシャノンと交代するシーンが思い浮かんだ。
嬉しそうに微笑む達也と──、シャノンは──。
「あの人は達也に微笑んでくれるの?」
「あ?」
「日本人に甘いってことは、そういうことだよね。優しく微笑んでくれたりするってことだよね……」
「いや……、あの人はそんなに笑う人じゃねえよ。そういや笑ってるところは俺も見たことねえなあ」
「え?!」
(──そうなんだ?!)
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