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達也の執着
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シャノンは達也の質問に「そうだ」と、短く答えた。
「──だけど、最初に雷亜を見た時、シャノンはそんな素振りを全然見せなかったよね?」
達也がさらに畳み掛ける。すると、シャノンは肩を竦めて「雰囲気が違っていたから最初は分からなかったんだ」と軽くいなした。だが、達也はそれでも食い下がらず、「俺はこいつと従兄弟だから言うけど、こいつの雰囲気なんか物心付いた3歳位からちっとも変わってないぞ!」と否定した。
雷亜自身もこれには達也の言うことに加担せざる負えない。自分でも自分の雰囲気なんか昔と同じだと思う。変わった所と言えば顔に傷が出来た事とそれを隠すために髪を伸ばしたくらいだ。それが無くとも雷亜は消極的でずっと俯きがちな人生を送っていた。だから、あの時のシャノンはきっと雷亜の事をまだ信用していなかっただけなのだ。
「でも、こいつはある瞬間だけは別人になるだろ?」
「ある瞬間って?」
達也が尽かさず聞き返す。
「誰かを守ろうとした時──。
その瞬間だけは、こいつの目の輝きが違う」
達也が息を呑んだ。そして、シャノンは紫の瞳を輝かせながら続けた。
「こいつが人を守ろうとする時、こいつは誰よりも強い目をするんだ。俺はその目に惚れたんだ」
シャノンがそう言うと、達也の肩が小刻みに震えた。
「ふーん……。そうなんだ……。俺にはそれが無いっていうのか……?
そういえば、シャノンが俺と仲良くして、優しくしてくれたのは最初だけだったもんな……」
達也の顔が次第に雲っていき、視線が下に落ちていく。そして、遂には顔の半分が影になった。
「そういえば、そうだったな。
あの頃の俺が持つ日本人のイメージって、雷亜で固定されていたからな。最初はお前も別の顔を持って、瞬間的にその強さを見せてくれるかと期待していたんだけど、段々と俺に馴ついて来るばかりで周りのご機嫌取りと変わらないから正直お前はつまらなかったな。
でも、そうか。お前、従兄弟だったんだな。従兄弟なのにお前は全然違うな。例え雷亜が止めたにせよ、ジョージに弄られるこいつをあの猿ほど助けようとはしなかったもんな。薄情者の弱虫か?」
シャノンがひどく棘のある言い方をした。
一瞬にして部屋の空気がおかしな方向へと向かい、雷亜は慌ててシャノンと達也の間に入った。
「そ、そんなことはもうどうでもいいだろ?それより、達也、早くご飯を食べちゃおう」
雷亜は達也に駆け寄り、席に付いてもらおうと椅子を引いた。ところが達也は椅子に座るどころかテーブルの上のブレッドを手に取ると雷亜に向かって投げつけた。
「誰がお前の作った飯なんか食うか!お前なんか日本に帰っちまえばいいのに!!」
達也はそう怒鳴ってダイニングから出ていった。雷亜は慌ててその後を追ったが達也に「ついてくるな!」と強く拒絶されてしまった。
後から近付いてきたシャノンは雷亜の肩を優しく叩き、「放っておけよ、あんな奴」と、言った。
「あいつはお前に甘えすぎ、馬鹿にし過ぎ。いくら恩があると言ってもそれは叔父に対してなだけで、あいつじゃないんだから、変な構い方をするなよ。あいつにも頭を冷やす時間が必要だ」
シャノンは簡単にそう言うけど、雷亜の胸中は不安で一杯になっていた。
達也は時間の経過と共に頭が冷えるようなタイプじゃない。寧ろ一度恨みの炎を燃やしてしまったら蛇のような執着でその事に拘り続ける。
雷亜はシャノンのシャツの袖を摘まんで、不安げに見上げた。
「なんだよ?そんなにあいつが気になるのか?」
雷亜は頷いた。
「……用心して。俺も気を付けるけど、シャノンも決して達也を見くびらないで……」
シャノンは言葉の意味が分からず、首を傾げて雷亜の横顔をじっと見つめた。
「──だけど、最初に雷亜を見た時、シャノンはそんな素振りを全然見せなかったよね?」
達也がさらに畳み掛ける。すると、シャノンは肩を竦めて「雰囲気が違っていたから最初は分からなかったんだ」と軽くいなした。だが、達也はそれでも食い下がらず、「俺はこいつと従兄弟だから言うけど、こいつの雰囲気なんか物心付いた3歳位からちっとも変わってないぞ!」と否定した。
雷亜自身もこれには達也の言うことに加担せざる負えない。自分でも自分の雰囲気なんか昔と同じだと思う。変わった所と言えば顔に傷が出来た事とそれを隠すために髪を伸ばしたくらいだ。それが無くとも雷亜は消極的でずっと俯きがちな人生を送っていた。だから、あの時のシャノンはきっと雷亜の事をまだ信用していなかっただけなのだ。
「でも、こいつはある瞬間だけは別人になるだろ?」
「ある瞬間って?」
達也が尽かさず聞き返す。
「誰かを守ろうとした時──。
その瞬間だけは、こいつの目の輝きが違う」
達也が息を呑んだ。そして、シャノンは紫の瞳を輝かせながら続けた。
「こいつが人を守ろうとする時、こいつは誰よりも強い目をするんだ。俺はその目に惚れたんだ」
シャノンがそう言うと、達也の肩が小刻みに震えた。
「ふーん……。そうなんだ……。俺にはそれが無いっていうのか……?
そういえば、シャノンが俺と仲良くして、優しくしてくれたのは最初だけだったもんな……」
達也の顔が次第に雲っていき、視線が下に落ちていく。そして、遂には顔の半分が影になった。
「そういえば、そうだったな。
あの頃の俺が持つ日本人のイメージって、雷亜で固定されていたからな。最初はお前も別の顔を持って、瞬間的にその強さを見せてくれるかと期待していたんだけど、段々と俺に馴ついて来るばかりで周りのご機嫌取りと変わらないから正直お前はつまらなかったな。
でも、そうか。お前、従兄弟だったんだな。従兄弟なのにお前は全然違うな。例え雷亜が止めたにせよ、ジョージに弄られるこいつをあの猿ほど助けようとはしなかったもんな。薄情者の弱虫か?」
シャノンがひどく棘のある言い方をした。
一瞬にして部屋の空気がおかしな方向へと向かい、雷亜は慌ててシャノンと達也の間に入った。
「そ、そんなことはもうどうでもいいだろ?それより、達也、早くご飯を食べちゃおう」
雷亜は達也に駆け寄り、席に付いてもらおうと椅子を引いた。ところが達也は椅子に座るどころかテーブルの上のブレッドを手に取ると雷亜に向かって投げつけた。
「誰がお前の作った飯なんか食うか!お前なんか日本に帰っちまえばいいのに!!」
達也はそう怒鳴ってダイニングから出ていった。雷亜は慌ててその後を追ったが達也に「ついてくるな!」と強く拒絶されてしまった。
後から近付いてきたシャノンは雷亜の肩を優しく叩き、「放っておけよ、あんな奴」と、言った。
「あいつはお前に甘えすぎ、馬鹿にし過ぎ。いくら恩があると言ってもそれは叔父に対してなだけで、あいつじゃないんだから、変な構い方をするなよ。あいつにも頭を冷やす時間が必要だ」
シャノンは簡単にそう言うけど、雷亜の胸中は不安で一杯になっていた。
達也は時間の経過と共に頭が冷えるようなタイプじゃない。寧ろ一度恨みの炎を燃やしてしまったら蛇のような執着でその事に拘り続ける。
雷亜はシャノンのシャツの袖を摘まんで、不安げに見上げた。
「なんだよ?そんなにあいつが気になるのか?」
雷亜は頷いた。
「……用心して。俺も気を付けるけど、シャノンも決して達也を見くびらないで……」
シャノンは言葉の意味が分からず、首を傾げて雷亜の横顔をじっと見つめた。
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