Broken Arrows

蓮華空

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達也の執着

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 一体、いつから雷亜が大学推薦を狙っていることになっているのか……。

 確かに以前、シャノンから進路について尋ねられたことがあった。けど、雷亜は叔父の世話になっている手前、自分の進路なんて選べる身分ではないと思っていたから、きっと日本に帰るだろう、と話した。すると、シャノンはむっとした顔をして、全力でプレイオフでの優勝を目指すぞ、と雷亜に言ってきた。

 その時のシャノンの気迫が余りにもすごかったので、雷亜は気押されながら、うん、と答えたのだが、まさかそれが大学推薦を狙っているって事になってしまったのだろうか?

 兎も角、大学推薦なんて、雷亜には突拍子もないことのように感じられ、全力で否定した。

「マジで? 大学に行く気はないの?」

「うん。この留学が終わったら日本に帰ると思う」

「ふうん。プレイオフで州チャンプになったら、結構いい大学から声をかけられるってのになあ」

「ははは……」

 と、乾いた笑いで雷亜はその場をしのいだ。

 さっきから少し離れたベンチに座る、達也の視線が心なしか怖かったからだ。

 きっと達也こそ、そんな筋書きで大学まで行けたらと、夢見てアメリカまで来たはずだ。

「お、俺はみんなのために応援出来たらそれでいいんだ」

 そんな事を言ったら突然後ろから頭を叩かれた。

「馬鹿!お前は応援じゃなくて、みんなのためにプレイだろ!」

 振り向くと、シャノンが呆れた顔で立っていた。

「この期に及んでまだお前は自分の実力が分かってないのか? この鈍感さ……いよいよ腹が立ってくるな!」

 別に怒らすつもりなんてなかったのに、イライラしたシャノンを見て、雷亜はショックを受けた。

「あ、あの……だって、その……」

 青ざめた顔で身を震わせていたら、ルーカスが間に入って「まあ、まあ」とシャノンを宥めてくれた。

「一試合一試合、重ねていけばこいつもそのうち自覚するようになるでしょ」

「だといいけどな」

 シャノンの呆れたような視線を受け、雷亜は少し落ち込んだ。もっと自信満々の自分を手に入れたいけど、なかなか昔からの癖が取れない。しかし、ここでまたどっぷりと気分を沈めては、シャノンが折角与えてくれた自分を変えるチャンスを無駄にしてしまう。

「分かったよ!俺、今日は死に物狂いで頑張る!」

 雷亜が意を決して言うと、隣にいたルーカスに肩を組まれて頭をポンポンと叩かれた。

「死に物狂いって……そんな気張り過ぎてると怪我するぞ。もうちょっと気を抜いていけ。でも、まあ、お前が怪我をすれば、シャノンがまたランニング・バックに戻って、俺もまたレギュラーに戻れるしなあ……。だったらそれもいいけどな」

 キシシっと白い歯を見せてルーカスは笑った。すると、シャノンはルーカスに向かって歯を剥いた。

「冗談じゃない!プレイオフ優勝までしっかりやって貰わないと困る!!」

「……何でそんなにお前が困るんだ?」

 ルーカスがきょとんとした顔で訊ねたが、シャノンが答えるより早く、背後からやって来た見知らぬ男に会話を遮られた。

「よう!シャノン。久し振りだな! 今日はランニング・バックしゃなくて、クォーター・バックなんだって?」

 栗色の髪を綺麗に後ろに流し込んだ男は、白い歯を煌めかせて雷亜達に近付いてきた。雷亜にとっては初見であるが、シャノンとルーカスは顔見知りのようだった。

「あー、ニック先輩。お久し振りでーす」

 ルーカスが軽く挨拶をした。
 
 ニックは既にユニフォームを着ていた。つまり、この人が今日、対戦するOBチームのうちの一人のようだ。身長もシャノンと並ぶ高身身でルックスもかなり良い。おまけに笑顔にも華があって優しそうだ。煌めく瞳は純粋そうで、皆の信頼を一発で集めそうな雰囲気を醸し出している。

(きっとこの人もすごくモテるんだろうなあ……)

 というのが、雷亜の第一印象だった。
 







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