Broken Arrows

蓮華空

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達也の執着

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「お前は誰にも心を開かないのかと思っていたよ」

 ニックの言葉にシャノンは片方の眉を吊り上げた。

「どういう意味だ?」

「氷の弾丸みたいにフィールドを走り回っていた奴が、今では背中に翼が生えているように見える。あの子が入って自由にプレイが出来るようになったってだけでは、そこまで人は変わらないんじゃないのか?──つまり、あの子はお前にとってそれだけの存在じゃないってことだ。どうだ?当たってるだろ?」

 ニックは白い歯を輝かせた。

 シャノンは渋面を作り、ニックを睨み付ける。

「そんなわけないだろ!!雷亜だって俺にとっては単なる駒だ!」

「ふう~ん。じゃあ、試合が終わったら俺の家に連れて帰ろう。俺、あの子と仲良くなりたいんだよねー。そうだ!今夜は家に泊まってもらおう!」

「──はっ?!」

 驚愕したシャノンにニックは意地悪く微笑んだ。

「何をそんなに驚いているんだ?別にいいだろ?お前には関係ないだろうし……」

「いや、あいつは確か、今夜の予定は埋まってるはずだ」

「何でお前があの子の予定まで知ってるんだ?」

「前々からあそこの中国人と今夜のハロウィンパーティーのステージでラップを歌うってっ言ってたからだ」

 シャノンはフィールド脇の応援席を指差した。

「ふう~ん、じゃあ、そのパーティーが終わったら誘おう」

 シャノンはニックを睨み付けた。

 ニックは気にした風もなく、何?、って顔をしている。

「あの子はこれからステージにも立つんだねぇ~。それは楽しみだなあ~、ねぇ、シャノン?君も見に行くの?」

「別に……。そんな下らねぇくそラップなんか見ねぇよ」

「あらあら、あの子と仲が良い訳ではないんだ?」

「プレイする以外に、あいつに用はねぇ」

 シャノンがそう言うと、こちらに戻って来た雷亜が真後ろに居た。

「あ……、シャノンは……今夜、来てくれないんだ……」

 シャノンが振り返ると、ちんまりと肩を落とした雷亜が目に入ってきた。

「当たり前だ。何で俺がそんなもん観に行かなきゃならない。早々に俺は帰るぞ」

「そ、そっか……まあ、俺もたくさんの人に見られるのはちょっと恥ずかしいから、シャノンが来ない方がいいかな……。シャノンが来るとそれだけで人を呼びそうで緊張しちゃいそうだし。だから、良かった!」

 雷亜がそう言うとシャノンがムッとしたように、眉間に皺を寄せた。

「あはは!確かにこいつが来ると変な取り巻きがゾロゾロやって来るからな。しかもみんな質が悪いし、来てもらわない方が確かにいいかも」

「そりゃどういう意味だ!!」

 指を指して笑うニックにシャノンが怒鳴る。

「おい!お前らそこで喋ってないで次のプレイしろよ!」

 ジョージの叫びに、悪い悪い、と片手を上げてニックが返し、シャノンは踵を返した。そして、もう一度雷亜と目が合うなり冷たく視線を逸らす。

 なんで急にこんな態度を取られるのか……?

 プレイする前のシャノンの笑顔を思い出すと、雷亜が何か気に触る事をしてしまったのだろうか?

「ごめん、シャノン!今はプレイに集中するから、また俺にパスしてくれ!」

 雷亜が気合いを入れて声をかけると、シャノンは振り返ってさらに冷たい瞳でこちらを睨んできた。

「バカ!ゲームを組み立てるのはお前じゃない。俺だ!」

「……あ、いや、それは分かってる。ただ、俺はやる気を示したかっただけだよ!」

 雷亜は慌てて訂正した。すると、ほんの少しだけ、紫色の瞳が優しく緩んで頷いた。

 気持ちが届いたのだろうか?

 
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