102 / 107
混乱
101
しおりを挟む
しかし、その間にトム・サラヤンが入って行く手を阻む。
「どけ!!」
「そうイラつくなよ、シャノン。そんな事より、お尻に瓶を突っ込んだ奴とはどんな関係? もうヤったのか? 俺にもヤらせてくんない?」
シャノンの拳が空を切った。トム・サラヤンの右頬をシャノンの拳が掠める。
「おっと!危ねぇ!こいつはマジだな? そうか、ヤったのか?!」
喜ぶトム・サラヤンにシャノンは無言で拳を繰り出した。寸前で何とかトム・サラヤンはその拳を避けているが、このままでは危ない。
雷亜は思わず飛び出していた。
「シャノン止めて!!暴力は駄目だよ!!」
シャノンの腕にすがり付き、彼の怒りを鎮めようと必死になる。
「大会が近いんだよ!シャノンがこんなことしてたんじゃ、チームが出場停止になってしまう!!」
「うるせぇ!大会がなんだ!!止めるんじゃねぇ!!」
「駄目だよ!!絶対に駄目!!みんなの努力を無駄にする気?」
シャノンは拳を下した。静かにアメジストの瞳が雷亜を見る。
「お前……みんなの、って……。お前自身はどうなるんだよ? あんな写真をバラまかれて……腹が立たないのかよ?!傷付かねぇのかよ?」
「それは……そうだけど……。でも、そんな事でみんなの人生を狂わせたくない。勿論、シャノンの人生もだ」
シャノンは眉をひそめた。そして、達也を指さし「こいつの事はどうなんだよ? お前の人生、滅茶苦茶狂わそうとしてるだろ? この現況を放っておけって言うのかよ?」
雷亜は頷いた。
「そうだよ。だって、ここで騒ぎ立てたら、狂うのは俺だけの人生じゃなくなる。達也が狂わせたいのは俺だけだ。ねぇ、達也。シャノンの人生まで狂わす気はないよね?」
「まあな……。だけど、お前を庇う奴なら、誰でも地獄に落ちちまえ!!」
それを聞いてシャノンが肩をすくめ、呆れた。
「なんなんだよ、お前ら? 雷亜をそこまで貶める達也も達也だが、それを甘んじて受ける雷亜もおかしい!全く気が知れない。お前がそんなに落ち着いていると、さっきまで怒り狂ってた俺が馬鹿みたいじゃないか!」
「はははは!そうかもね」
雷亜が声を出して笑うとシャノンがムッとした顔でこちらを睨んだ。
「ごめん、ごめん。シャノンは俺のために怒ってくれたのに、笑うとこじゃないよね。でも……、俺はどういう訳かもう本当に大丈夫なんだよね。昔の俺とは違うんだ。だから、心配しないでシャノン。達也はだた、俺がアメリカに留学してきたとことが気に入らないだけなんだ。だから、この問題の解決は簡単なんだよ。俺が日本に帰ればいいだけだ。そうだよね、達也?」
「ああ、俺はお前が嫌いだからな!視界にも入れたくない。名前を聞いただけで寒気がする」
はっきりと吐き捨てる達也に、シャノンが「お前なあ~」と言って突っかかりそうになるのを雷亜は止めた。
「いいんだ、シャノン。好き嫌いは達也の自由なんだから」
「そうは言っても、していい事と悪い事があるだろう?!……まあ、俺が言えるようなことじゃないけど……」
シャノンが罰の悪そうに頭を掻いた。例のバラまかれた写真の事だろう。そもそもシャノンがそんな写真を撮らなければこんな事にはならなかったのだ。
「何でも起こってしまうのは仕方がないよ。人間の心って不安定だから、その不安定の波にさらされたら、予期せぬことはいつでも起きる。だから、俺はその都度、出来る限り冷静に現実を見つめていきたいな、って思ってる」
「大人だな……お前は。でもなぁ、俺はどうしてもこいつだけは許せねぇ」
そう言って不意にシャノンは後ろを振り返り、達也に右の拳を叩きつけた。
「シャノン!!」
「どけ!!」
「そうイラつくなよ、シャノン。そんな事より、お尻に瓶を突っ込んだ奴とはどんな関係? もうヤったのか? 俺にもヤらせてくんない?」
シャノンの拳が空を切った。トム・サラヤンの右頬をシャノンの拳が掠める。
「おっと!危ねぇ!こいつはマジだな? そうか、ヤったのか?!」
喜ぶトム・サラヤンにシャノンは無言で拳を繰り出した。寸前で何とかトム・サラヤンはその拳を避けているが、このままでは危ない。
雷亜は思わず飛び出していた。
「シャノン止めて!!暴力は駄目だよ!!」
シャノンの腕にすがり付き、彼の怒りを鎮めようと必死になる。
「大会が近いんだよ!シャノンがこんなことしてたんじゃ、チームが出場停止になってしまう!!」
「うるせぇ!大会がなんだ!!止めるんじゃねぇ!!」
「駄目だよ!!絶対に駄目!!みんなの努力を無駄にする気?」
シャノンは拳を下した。静かにアメジストの瞳が雷亜を見る。
「お前……みんなの、って……。お前自身はどうなるんだよ? あんな写真をバラまかれて……腹が立たないのかよ?!傷付かねぇのかよ?」
「それは……そうだけど……。でも、そんな事でみんなの人生を狂わせたくない。勿論、シャノンの人生もだ」
シャノンは眉をひそめた。そして、達也を指さし「こいつの事はどうなんだよ? お前の人生、滅茶苦茶狂わそうとしてるだろ? この現況を放っておけって言うのかよ?」
雷亜は頷いた。
「そうだよ。だって、ここで騒ぎ立てたら、狂うのは俺だけの人生じゃなくなる。達也が狂わせたいのは俺だけだ。ねぇ、達也。シャノンの人生まで狂わす気はないよね?」
「まあな……。だけど、お前を庇う奴なら、誰でも地獄に落ちちまえ!!」
それを聞いてシャノンが肩をすくめ、呆れた。
「なんなんだよ、お前ら? 雷亜をそこまで貶める達也も達也だが、それを甘んじて受ける雷亜もおかしい!全く気が知れない。お前がそんなに落ち着いていると、さっきまで怒り狂ってた俺が馬鹿みたいじゃないか!」
「はははは!そうかもね」
雷亜が声を出して笑うとシャノンがムッとした顔でこちらを睨んだ。
「ごめん、ごめん。シャノンは俺のために怒ってくれたのに、笑うとこじゃないよね。でも……、俺はどういう訳かもう本当に大丈夫なんだよね。昔の俺とは違うんだ。だから、心配しないでシャノン。達也はだた、俺がアメリカに留学してきたとことが気に入らないだけなんだ。だから、この問題の解決は簡単なんだよ。俺が日本に帰ればいいだけだ。そうだよね、達也?」
「ああ、俺はお前が嫌いだからな!視界にも入れたくない。名前を聞いただけで寒気がする」
はっきりと吐き捨てる達也に、シャノンが「お前なあ~」と言って突っかかりそうになるのを雷亜は止めた。
「いいんだ、シャノン。好き嫌いは達也の自由なんだから」
「そうは言っても、していい事と悪い事があるだろう?!……まあ、俺が言えるようなことじゃないけど……」
シャノンが罰の悪そうに頭を掻いた。例のバラまかれた写真の事だろう。そもそもシャノンがそんな写真を撮らなければこんな事にはならなかったのだ。
「何でも起こってしまうのは仕方がないよ。人間の心って不安定だから、その不安定の波にさらされたら、予期せぬことはいつでも起きる。だから、俺はその都度、出来る限り冷静に現実を見つめていきたいな、って思ってる」
「大人だな……お前は。でもなぁ、俺はどうしてもこいつだけは許せねぇ」
そう言って不意にシャノンは後ろを振り返り、達也に右の拳を叩きつけた。
「シャノン!!」
0
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる
七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。
だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。
そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。
唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。
優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。
穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。
――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる