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混乱
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「条件反射ねぇ……」
足下に伸びているサラヤンを気の毒そうに見つめ、シャノンは残っていたバーモント校の生徒に向き直った。
「お前らはどうする?一人殴るも二人殴るも、もう同じだろうから、今すぐこの場を立ち去らなかったら、お前らもこうしてやるつもりだが、残るか?」
そう言ってシャノンが拳を上げると、バーモント校の奴らは一目散に逃げて行った。
「……シャノン。いいの? あいつらきっと、シャノンが暴力を奮った事を喋ると思うよ……。そしたら、アメフト……出来なくなるんじゃないの?」
「いいさ、別に……。元は自分の弱さからこうなってしまったんだから、俺の場合は自業自得。そんなことより、お前をろくでもない事に巻き込んでしまった。あの写真の事……本当に悪かった……恥をかいて、辛い思いをするのは、お前ばかりで……本当になんて言ったらいいのか……」
暗く伏せった紫の瞳。雷亜に対する罪悪感が、シャノンの生命力を削いでいくようで、それがすごく嫌だった。
「充分反省しているみたいだから、もういいよ」
「もういいって、お前……」
「僕らに必要な事は、これからのことじゃないのか?」
にっこりと笑って見せたけど、シャノンの瞳は暗いままだ。
「……これからの事ったって……どうしたらいいのか……」
雷亜は背筋を伸ばし、しっかりと空気を吸い込んだ。
「だから、俺、やっぱり日本へ帰るよ!」
「──なっ!!」
シャノンの顔面が蒼白となった。直ぐ様、雷亜の肩に手をかけ、揺さぶりながらシャノンは「何故だ?何でだよ!!!」と叫んだ。
「俺が、俺がいけないのか?!お前の人生を、俺がまた駄目にしたからか?!なあ??俺は一体、どうしたらお前に償えるんだ?!教えてくれよ!俺は、一体どうしたらいい?!」
「落ち着いてよ、シャノン。俺の人生、駄目になんてなってないから、大丈夫だよ」
「どこがだ!!一番最初は、お前の顔を台無しにして、それだけでも、お前の人生、狂わされてきただろっ!!その後、俺のせいでまたこんな痴態を晒され、挙げ句の果てに、俺と一緒に暴力沙汰だ!!それさえなければ、お前はアメフトの名RBとなって、人生をやり直せるはずだった!!それを!!全て俺が台無しにしている!!俺は……お前に、どう償っていけばいいんだ……」
シャノンが足下に崩れ、膝を着き、項垂れている。雷亜も視線を合わすように、シャノンの前に跪き、優しく語りかけた。
「違うよ、シャノン。俺の人生、全てがシャノンで台無しになんかなってないよ。俺は、どんなに辛くても、自分の人生を誰かのせいになんてしたくない!!でも、一時は、父のせいにしていた時もあった。けど、それをやってても、自分の中の劣等感や他人に対しての嫉妬心が膨れ上がるばかりで、何も良いことなんてなかった。だから、これからはどんなに辛いときが来ても、それはひとつのターニングポイントなんだ、と思うようにしたんだ。だからね、シャノン。シャノンは自分を責めちゃ駄目なんだよ。シャノンも自由に生きていいんだ。折角、今日まで生き抜いて来たんだから、自責の念に駈られた人生なんか送っちゃ駄目だよ。シャノンに、そんな人生は似合わない」
「そうは……言っても……俺は、俺自身を許す事が出来ない……。どうしてお前は、俺を許す事が出来るんだ?」
「それは、シャノンが俺の事で苦しんでるから。俺は、苦しんでるシャノンを見たくない。シャノンには、幸せになって貰いたいんだ」
シャノンがそっと顔を上げ、潤んだ紫の瞳と目が合う。
「ねえ、シャノン。もしも、よかったら、俺と一緒に日本へ来ない?」
「──え?!」
足下に伸びているサラヤンを気の毒そうに見つめ、シャノンは残っていたバーモント校の生徒に向き直った。
「お前らはどうする?一人殴るも二人殴るも、もう同じだろうから、今すぐこの場を立ち去らなかったら、お前らもこうしてやるつもりだが、残るか?」
そう言ってシャノンが拳を上げると、バーモント校の奴らは一目散に逃げて行った。
「……シャノン。いいの? あいつらきっと、シャノンが暴力を奮った事を喋ると思うよ……。そしたら、アメフト……出来なくなるんじゃないの?」
「いいさ、別に……。元は自分の弱さからこうなってしまったんだから、俺の場合は自業自得。そんなことより、お前をろくでもない事に巻き込んでしまった。あの写真の事……本当に悪かった……恥をかいて、辛い思いをするのは、お前ばかりで……本当になんて言ったらいいのか……」
暗く伏せった紫の瞳。雷亜に対する罪悪感が、シャノンの生命力を削いでいくようで、それがすごく嫌だった。
「充分反省しているみたいだから、もういいよ」
「もういいって、お前……」
「僕らに必要な事は、これからのことじゃないのか?」
にっこりと笑って見せたけど、シャノンの瞳は暗いままだ。
「……これからの事ったって……どうしたらいいのか……」
雷亜は背筋を伸ばし、しっかりと空気を吸い込んだ。
「だから、俺、やっぱり日本へ帰るよ!」
「──なっ!!」
シャノンの顔面が蒼白となった。直ぐ様、雷亜の肩に手をかけ、揺さぶりながらシャノンは「何故だ?何でだよ!!!」と叫んだ。
「俺が、俺がいけないのか?!お前の人生を、俺がまた駄目にしたからか?!なあ??俺は一体、どうしたらお前に償えるんだ?!教えてくれよ!俺は、一体どうしたらいい?!」
「落ち着いてよ、シャノン。俺の人生、駄目になんてなってないから、大丈夫だよ」
「どこがだ!!一番最初は、お前の顔を台無しにして、それだけでも、お前の人生、狂わされてきただろっ!!その後、俺のせいでまたこんな痴態を晒され、挙げ句の果てに、俺と一緒に暴力沙汰だ!!それさえなければ、お前はアメフトの名RBとなって、人生をやり直せるはずだった!!それを!!全て俺が台無しにしている!!俺は……お前に、どう償っていけばいいんだ……」
シャノンが足下に崩れ、膝を着き、項垂れている。雷亜も視線を合わすように、シャノンの前に跪き、優しく語りかけた。
「違うよ、シャノン。俺の人生、全てがシャノンで台無しになんかなってないよ。俺は、どんなに辛くても、自分の人生を誰かのせいになんてしたくない!!でも、一時は、父のせいにしていた時もあった。けど、それをやってても、自分の中の劣等感や他人に対しての嫉妬心が膨れ上がるばかりで、何も良いことなんてなかった。だから、これからはどんなに辛いときが来ても、それはひとつのターニングポイントなんだ、と思うようにしたんだ。だからね、シャノン。シャノンは自分を責めちゃ駄目なんだよ。シャノンも自由に生きていいんだ。折角、今日まで生き抜いて来たんだから、自責の念に駈られた人生なんか送っちゃ駄目だよ。シャノンに、そんな人生は似合わない」
「そうは……言っても……俺は、俺自身を許す事が出来ない……。どうしてお前は、俺を許す事が出来るんだ?」
「それは、シャノンが俺の事で苦しんでるから。俺は、苦しんでるシャノンを見たくない。シャノンには、幸せになって貰いたいんだ」
シャノンがそっと顔を上げ、潤んだ紫の瞳と目が合う。
「ねえ、シャノン。もしも、よかったら、俺と一緒に日本へ来ない?」
「──え?!」
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