Broken Arrows

蓮華空

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旅立ち

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※※※※

「折角、いいパートナーが出来たと思ったのになあ……」

 そう言って、がっかりと肩を落としたのは宇辰だ。パートナーというのは、宇辰の趣味であるラップのパートナーという意味だ。

「ごめん……。流石にあんな写真が出回って、これ以上、人前に立つのは……」

「分かってるよ!だから、名誉毀損で徹底的にあいつと戦えばいいのに!!」

 悔しそうに言う宇辰に対し、雷亜は首を振った。

「これ以上、話を蒸し返したらどっちも傷付くだけだよ。幸い、みんな単なるコラ画像だと思って、もう気にしなくなってきただろ?だったら、あの騒ぎはこのまま消滅してくれた方がいい。達也に関しては、これからゆっくり自分のしてきたことを考え直して貰えれば、それでいいよ」

「全く甘い奴だよなあ、お前は!!あいつがそう簡単に、物事を考え直すような奴か?!多分、無理だと思うから、あいつのロッカーに、う○こと見紛う味噌をボトボト落としてきてやった!見た目マジでヤバイぞぉ!周りからエンガチョ!と言われ、嫌われること間違いなしだな!」

 得意気に言う宇辰に、雷亜は苦笑いをしながら、自分のロッカーの荷物を片付けた。持ってきた大きなリュックに、全部荷物を入れて、それを持ち上げると、シャノンが同じように大きな鞄を肩にかけてやって来た。

「荷物は全部持ったか?」

「そっちこそ、もう済んだ?」

「ああ、もう……心残りはない」

 シャノンはさっぱりとした顔で言うけど、こうなるまで、暫く周囲は大変だった。

 雷亜の痴態画像が出回り、先生の目にも留まるようになって、校内ではかなりの問題になった。やれ苛めだの、人種差別だの、大人の間で問題視されてから、余計に騒ぎは大きくなり、写真の出所に関してだとか、誰がばら撒き、誰が撮った写真か、など、先生らの追及はヒートアップ。雷亜に同情し、涙する大人も現れた。そして、雷亜が日本へ帰りたいと言うと、皆、納得してくれ、騒ぎは治まるかに見えた。が、シャノンまで学校を辞め、日本へ行きたいと言うと話は別だった。

──なんで、そんな意味のないことをするんだ!バカ!!!

──お前には将来性があるのに、気は確かか?!!

 と、生徒達だけではなく、先生など、大人達まで発狂する大惨事となった。
 シャノンは雷亜とは違って、学校を代表するアメフトのスーパースターだ。それが本シーズンを前にして、アメフトを辞め、学校すら辞めて日本へ行きたい!などと言い始めたのだから周りにとっては一大事だ。

「何をバカな事を!!」と、校長室で、先生やシャノンの叔父らに怒鳴られながら、シャノンは全てを打ち明けた。

 雷亜の例の写真を撮ったのが、シャノンであること。そして、雷亜との関係性が、そもそもそういう関係であること。今回のことで雷亜を傷付けただけでなく、幼い頃、日本で出会って、顔に傷を負わせてしまった事までも話し、自分は雷亜に対して責任があるから、日本へもついて行く、と言って、周囲の大人を黙らせた。雷亜にとって、シャノンがそう言って言ってくれたことは嬉しいが、本当にそれで良かったのか……?
アメフトの仲間も、急なシャノンの行動に、最初は猛反対していたけど、どうしてそうなったのか、決して口を割らないシャノンに、みんな呆れて去っていった。その様子を見ていると、雷亜は自分から言い出したとはいえ、本当にこれでいいのか不安になった。



「ねぇ、シャノン。シャノンは本当にいいの?高校を卒業して、大学進学して、その後日本へ来ても良かったんだよ?」

「無理!!俺は気が短いんだ。そんなに長いこと後にしておけるか?!それに……俺は自由になりたい!!」

「……そっか。でも、俺のことに関して、そんなに責任を感じなくてもいいよ。それじゃあ、自由になったと言い難いんじゃないかな?」

「お前はまたそういう言い方をする!!俺はお前に対して責任を持ちたいんだ!勝手にやらせろ!!」

 少し顔を歪めて言い放つも、以前のシャノンよりも表情が柔らかく、無理のない感じなので、これで良かった……としよう。

「じゃあな、猿!!今後も耳障りなラップを頑張れよ!」

「うっせ!!耳障りとはなんだ!!とっとと失せろ!タコ!!」

 宇辰とシャノンは中指を立てて、別れの挨拶に代えた。

「じゃあな、雷亜!俺もいつか日本へ遊びに行くからよ!お前もこっちに来れたら来いよな!勿論、一人で!!」

「あ、うん。一人がどうかは分からないけど、数年後、また来れるようにするよ!じゃあ、元気でね!!」

 宇辰の見送りを後に、シャノンと雷亜は校舎から出て行った。















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