106 / 107
旅立ち
105
しおりを挟む
※※※※
「折角、いいパートナーが出来たと思ったのになあ……」
そう言って、がっかりと肩を落としたのは宇辰だ。パートナーというのは、宇辰の趣味であるラップのパートナーという意味だ。
「ごめん……。流石にあんな写真が出回って、これ以上、人前に立つのは……」
「分かってるよ!だから、名誉毀損で徹底的にあいつと戦えばいいのに!!」
悔しそうに言う宇辰に対し、雷亜は首を振った。
「これ以上、話を蒸し返したらどっちも傷付くだけだよ。幸い、みんな単なるコラ画像だと思って、もう気にしなくなってきただろ?だったら、あの騒ぎはこのまま消滅してくれた方がいい。達也に関しては、これからゆっくり自分のしてきたことを考え直して貰えれば、それでいいよ」
「全く甘い奴だよなあ、お前は!!あいつがそう簡単に、物事を考え直すような奴か?!多分、無理だと思うから、あいつのロッカーに、う○こと見紛う味噌をボトボト落としてきてやった!見た目マジでヤバイぞぉ!周りからエンガチョ!と言われ、嫌われること間違いなしだな!」
得意気に言う宇辰に、雷亜は苦笑いをしながら、自分のロッカーの荷物を片付けた。持ってきた大きなリュックに、全部荷物を入れて、それを持ち上げると、シャノンが同じように大きな鞄を肩にかけてやって来た。
「荷物は全部持ったか?」
「そっちこそ、もう済んだ?」
「ああ、もう……心残りはない」
シャノンはさっぱりとした顔で言うけど、こうなるまで、暫く周囲は大変だった。
雷亜の痴態画像が出回り、先生の目にも留まるようになって、校内ではかなりの問題になった。やれ苛めだの、人種差別だの、大人の間で問題視されてから、余計に騒ぎは大きくなり、写真の出所に関してだとか、誰がばら撒き、誰が撮った写真か、など、先生らの追及はヒートアップ。雷亜に同情し、涙する大人も現れた。そして、雷亜が日本へ帰りたいと言うと、皆、納得してくれ、騒ぎは治まるかに見えた。が、シャノンまで学校を辞め、日本へ行きたいと言うと話は別だった。
──なんで、そんな意味のないことをするんだ!バカ!!!
──お前には将来性があるのに、気は確かか?!!
と、生徒達だけではなく、先生など、大人達まで発狂する大惨事となった。
シャノンは雷亜とは違って、学校を代表するアメフトのスーパースターだ。それが本シーズンを前にして、アメフトを辞め、学校すら辞めて日本へ行きたい!などと言い始めたのだから周りにとっては一大事だ。
「何をバカな事を!!」と、校長室で、先生やシャノンの叔父らに怒鳴られながら、シャノンは全てを打ち明けた。
雷亜の例の写真を撮ったのが、シャノンであること。そして、雷亜との関係性が、そもそもそういう関係であること。今回のことで雷亜を傷付けただけでなく、幼い頃、日本で出会って、顔に傷を負わせてしまった事までも話し、自分は雷亜に対して責任があるから、日本へもついて行く、と言って、周囲の大人を黙らせた。雷亜にとって、シャノンがそう言って言ってくれたことは嬉しいが、本当にそれで良かったのか……?
アメフトの仲間も、急なシャノンの行動に、最初は猛反対していたけど、どうしてそうなったのか、決して口を割らないシャノンに、みんな呆れて去っていった。その様子を見ていると、雷亜は自分から言い出したとはいえ、本当にこれでいいのか不安になった。
「ねぇ、シャノン。シャノンは本当にいいの?高校を卒業して、大学進学して、その後日本へ来ても良かったんだよ?」
「無理!!俺は気が短いんだ。そんなに長いこと後にしておけるか?!それに……俺は自由になりたい!!」
「……そっか。でも、俺のことに関して、そんなに責任を感じなくてもいいよ。それじゃあ、自由になったと言い難いんじゃないかな?」
「お前はまたそういう言い方をする!!俺はお前に対して責任を持ちたいんだ!勝手にやらせろ!!」
少し顔を歪めて言い放つも、以前のシャノンよりも表情が柔らかく、無理のない感じなので、これで良かった……としよう。
「じゃあな、猿!!今後も耳障りなラップを頑張れよ!」
「うっせ!!耳障りとはなんだ!!とっとと失せろ!タコ!!」
宇辰とシャノンは中指を立てて、別れの挨拶に代えた。
「じゃあな、雷亜!俺もいつか日本へ遊びに行くからよ!お前もこっちに来れたら来いよな!勿論、一人で!!」
「あ、うん。一人がどうかは分からないけど、数年後、また来れるようにするよ!じゃあ、元気でね!!」
宇辰の見送りを後に、シャノンと雷亜は校舎から出て行った。
「折角、いいパートナーが出来たと思ったのになあ……」
そう言って、がっかりと肩を落としたのは宇辰だ。パートナーというのは、宇辰の趣味であるラップのパートナーという意味だ。
「ごめん……。流石にあんな写真が出回って、これ以上、人前に立つのは……」
「分かってるよ!だから、名誉毀損で徹底的にあいつと戦えばいいのに!!」
悔しそうに言う宇辰に対し、雷亜は首を振った。
「これ以上、話を蒸し返したらどっちも傷付くだけだよ。幸い、みんな単なるコラ画像だと思って、もう気にしなくなってきただろ?だったら、あの騒ぎはこのまま消滅してくれた方がいい。達也に関しては、これからゆっくり自分のしてきたことを考え直して貰えれば、それでいいよ」
「全く甘い奴だよなあ、お前は!!あいつがそう簡単に、物事を考え直すような奴か?!多分、無理だと思うから、あいつのロッカーに、う○こと見紛う味噌をボトボト落としてきてやった!見た目マジでヤバイぞぉ!周りからエンガチョ!と言われ、嫌われること間違いなしだな!」
得意気に言う宇辰に、雷亜は苦笑いをしながら、自分のロッカーの荷物を片付けた。持ってきた大きなリュックに、全部荷物を入れて、それを持ち上げると、シャノンが同じように大きな鞄を肩にかけてやって来た。
「荷物は全部持ったか?」
「そっちこそ、もう済んだ?」
「ああ、もう……心残りはない」
シャノンはさっぱりとした顔で言うけど、こうなるまで、暫く周囲は大変だった。
雷亜の痴態画像が出回り、先生の目にも留まるようになって、校内ではかなりの問題になった。やれ苛めだの、人種差別だの、大人の間で問題視されてから、余計に騒ぎは大きくなり、写真の出所に関してだとか、誰がばら撒き、誰が撮った写真か、など、先生らの追及はヒートアップ。雷亜に同情し、涙する大人も現れた。そして、雷亜が日本へ帰りたいと言うと、皆、納得してくれ、騒ぎは治まるかに見えた。が、シャノンまで学校を辞め、日本へ行きたいと言うと話は別だった。
──なんで、そんな意味のないことをするんだ!バカ!!!
──お前には将来性があるのに、気は確かか?!!
と、生徒達だけではなく、先生など、大人達まで発狂する大惨事となった。
シャノンは雷亜とは違って、学校を代表するアメフトのスーパースターだ。それが本シーズンを前にして、アメフトを辞め、学校すら辞めて日本へ行きたい!などと言い始めたのだから周りにとっては一大事だ。
「何をバカな事を!!」と、校長室で、先生やシャノンの叔父らに怒鳴られながら、シャノンは全てを打ち明けた。
雷亜の例の写真を撮ったのが、シャノンであること。そして、雷亜との関係性が、そもそもそういう関係であること。今回のことで雷亜を傷付けただけでなく、幼い頃、日本で出会って、顔に傷を負わせてしまった事までも話し、自分は雷亜に対して責任があるから、日本へもついて行く、と言って、周囲の大人を黙らせた。雷亜にとって、シャノンがそう言って言ってくれたことは嬉しいが、本当にそれで良かったのか……?
アメフトの仲間も、急なシャノンの行動に、最初は猛反対していたけど、どうしてそうなったのか、決して口を割らないシャノンに、みんな呆れて去っていった。その様子を見ていると、雷亜は自分から言い出したとはいえ、本当にこれでいいのか不安になった。
「ねぇ、シャノン。シャノンは本当にいいの?高校を卒業して、大学進学して、その後日本へ来ても良かったんだよ?」
「無理!!俺は気が短いんだ。そんなに長いこと後にしておけるか?!それに……俺は自由になりたい!!」
「……そっか。でも、俺のことに関して、そんなに責任を感じなくてもいいよ。それじゃあ、自由になったと言い難いんじゃないかな?」
「お前はまたそういう言い方をする!!俺はお前に対して責任を持ちたいんだ!勝手にやらせろ!!」
少し顔を歪めて言い放つも、以前のシャノンよりも表情が柔らかく、無理のない感じなので、これで良かった……としよう。
「じゃあな、猿!!今後も耳障りなラップを頑張れよ!」
「うっせ!!耳障りとはなんだ!!とっとと失せろ!タコ!!」
宇辰とシャノンは中指を立てて、別れの挨拶に代えた。
「じゃあな、雷亜!俺もいつか日本へ遊びに行くからよ!お前もこっちに来れたら来いよな!勿論、一人で!!」
「あ、うん。一人がどうかは分からないけど、数年後、また来れるようにするよ!じゃあ、元気でね!!」
宇辰の見送りを後に、シャノンと雷亜は校舎から出て行った。
0
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
あなたの隣で初めての恋を知る
彩矢
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる