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21.もどかしい

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 ティメオが陛下に掛け合い、騎士達が派遣された。そうして、沿岸沿いを捜索した結果、本当に洞窟が見つかったというニュースは、社交界に衝撃を与えた。
 ここで普段のマルベーだったら、鼻高々になってラファイエットにゴシップ紙を見せびらかすのだが……

「うぅ~」
「……おい、大丈夫か……」
「大丈夫じゃない! 俺の旦那はぁ?!」

 マルベーはベッドの上で、体を丸めていた。掛け布団を体に巻き付け、枕を頬に押しつける。ぼんやりした頭で、ラファイエットを呼びつけていた。

「なんで来ないんだよ! 俺、発情期なんだけど!!」
「……今、洞窟への派遣とかあって、忙しいんだよ……」

 ラファイエットはドア越しに、マルベーを慰める。城に帰ってきて早々に、主人は発情期に入ってしまい、部屋に閉じこもっていた。
 部屋の中からわーっと泣き声がした。

「それ本当?! 本当に忙しいから来れないわけ?!」
「……多分」

(嘘だ!! 仕事を口実に、部屋に来ないんだろ!! あのヘタレ!!)

 舞踏会での一件以来、貴族達から手紙が大量に届いていた。だけど目を通す余裕もなく、マルベーはベッドの上で伸びていた。
 頭はぼんやりするし、体は熱い。今まで抑制剤を飲んでいたから、初めて発情期を体験して体が辛かった。
 ぐらぐらする視界の中で、泣きながら叫んだ。

「もういい!! じゃあ娼館に行く!! 俺、娼館に行くから!!」
「おい、落ち着けって」
「もう良いよ!! 発情期の俺とやりたくないんだよ! ティメオに伝えろ!! 俺は今から発情期抑えるために娼館に行くって!!」
「……頼むから、落ち着いてくれよ……」

 ラファイエットは宥めるだけで、動いてくれない。「娼館に行く!!」と喚き続けていたら、ため息が聞こえてきた。

「……伝えて良いんだな……どうなっても知らんぞ」
「良いよ!!あのヘタレに伝えろ!!」

 布団をぼこぼこにしながら、ティメオを罵った。マルベーの夫は、セックスしないことが、大切にしている証とでも思っている。
 毎日あれだけキスをして、添い寝をしているのに、それ以上触れてこない。マルベーの欲求不満が爆発していた。

「ふざけんなーー!! ヘタレ童貞!!」

 罵倒したところで、足音が遠のいていく。ラファイエットが伝えに行ったらしい。娼館は脅しだが、これでも来なかったら……

(本気で行ってやる!! 娼館で(親の金で)酒池肉林してやる!!)

 城に来てから、マルベーは娼館に一度も行かなかった。他国から嫁いだ身の上、大人しくしておこうと自制心もあったが、なんとなく行く気になれなかった。

(ティメオと一緒にいるだけで満足してたけど……)

 発情期で体は辛い。こんなことなら、いつものように抑制剤を飲んでおけば良かった。もしかしてティメオは本当に、マルベーを抱く気にならないのかも……十歳も年上だし、今までモテなかったぐらい美形でも無いし、親のすねかじりだったし……

(最悪だ……いつもだったら落ち込まないのに……発情期で病む……)

 ぐるぐると嫌なことばかり考えていたら、ドタドタと荒々しい足音が聞こえてきた。けたたましくドアを叩かれた。
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