24 / 47
23.朝の二人
しおりを挟むマルベーが目を覚ますと、頬に柔らかいものが当たった。寝ぼけた目を擦ると、だんだん視界がはっきりしてくる。
(わ~、モコモコのフワフワ……)
クリームパンみたいな手足に、むき出しの歯と立派なたてがみ……熟睡したティメオが、ベッドで完全に獣型になっていた。
(でかいぬいぐるみ……)
マルベーはもふもふの胸元に、頬を寄せる。すうすうと聞こえる寝息と、穏やかな心臓の音に包まれて、再度目を閉じた。
(ティメオが起きてないってことは、まだ早いな。二度寝しよ……)
大きな背中に、腕を伸ばす。その拍子に「マルー?」と寝ぼけた声。城の主人を起こしてしまったらしい。
「悪い、起こした?」
「いえ……もうすぐ起床の時間です……」
まだ完全に起きていないのか、声が頼りない。だんだん頭がはっきりしてきたのか、人型になった。
「な~、また俺が寝てる時に跡付けてたな」
気がつくと、体はあちこちに赤い点が付いていた。行為が終わると、だいたい先に寝てしまうマルべーに、ティメオが体中にキスをするからだ。薄くなったと思ったら、上書きするみたいに、しつこくキスをされるのが日課になっていた。
「……だって」
ティメオは不服そうに、頭を掻いた。筋肉質な裸体が露わになり、蜂蜜色の金髪が乱れている。寝起きから絵になる年下の夫は、唇を尖らせた。
「娼館に行かないで欲しい……から」
「行かないよ」
何回このやり取りを繰り返しただろう。最初の発情期、マルベーが脅して以来、何度も念押しされる。
がばりと覆い被さるようにして、押し倒された。
「起きるんじゃないの~、旦那様」
「私が貴方のものであるように、貴方は私のものでしょう?」
ティメオは体中に行為の跡を残せば、妻が娼館に行かないと思っているらしい。
(マーキングみたいだな)
「ん……っ」
有無を言わせぬ瞳が、迫ってくる。マルベーは大人しくキスを受け入れた。最初は何をするにもマルベーの許可を取っていた年下は、最近は当たり前のようにキスをするし、押し倒してくる。
天蓋の下、妻を抱き込むようにして、ティメオは熱心に口づけをする。心地よい腕の力と、のしかかってくる重みに、マルベーは眠りに誘われた。
「どこにも行かないで」
「行くってどこに! どこにも行かないよ~……娼館にも行ってないし」
「……」
返ってきたのは、熱い舌だった。マルベーの頤を掴み、舌を入れてくる。寝ぼけたマルベーから、快感を引き出すような舌の動きだった。
息が上がる頃にやっと、唇が離れた。
「マー、愛しています」
「……俺もだよん、旦那様♡」
また繰り返すやり取り。だけど最近、ティメオは不満そうだった。
「……私の方が貴方の事が好きです」
「同じくらいでしょ」
「いいえ、私の方が好きです」
またキスをされる。苦笑しながら、マルベーは受け入れた。最初はキスを覚えたてだから、キスばかりするのだと思っていた。
でも体を重ねても変わらない。というか、それ以上にキスをされる。ティメオは口づけが好きなのだと受け入れた。
「マルー……私だけの人」
「俺だけの旦那様♡」
侍女が起こしにくるまで、二人はキスをしていた。
22
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
目が覚めたら宿敵の伴侶になっていた
木村木下
BL
日本の大学に通う俺はある日突然異世界で目覚め、思い出した。
自分が本来、この世界で生きていた妖精、フォランだということを。
しかし目覚めたフォランはなぜか自分の肉体ではなく、シルヴァ・サリオンという青年の体に入っていた。その上、シルヴァはフォランの宿敵である大英雄ユエ・オーレルの『望まれない伴侶』だった。
ユエ×フォラン
(ムーンライトノベルズ/全年齢版をカクヨムでも投稿しています)
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
召喚されたアラサー元ヤンはのんびり異世界ライフを満喫……できません
七夜かなた
BL
門脇紫紋(かどわきしもん)(30歳 元暴走族総長 現農業従事者)は、偶然歩道橋の上ですれ違った女子校生と共に異世界に転移してしまった。
どうやら彼女は聖女として召喚されたらしい。
そして彼本人のステータスは、聖女を護る聖騎士になっていた。
仕方なく自分の役割を受け入れ、騎士として過ごすことになったが、最初は彼のことを警戒していた人々も、次第に彼に魅了されていく。昔から兄貴肌で、男に好かれていた彼の元には彼を慕う人々が集まってくる。
しかし、彼の思う好意と、相手の好意は何だか違うみたいで…
イラストは樹 史桜(fumi-O)(@fumio3661)さんがXで上げていた名もなきスーツメンを贈呈してもらいました。
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
女神様の間違いで落とされた、乙女ゲームの世界で愛を手に入れる。
にのまえ
BL
バイト帰り、事故現場の近くを通ったオレは見知らぬ場所と女神に出会った。その女神は間違いだと気付かずオレを異世界へと落とす。
オレが落ちた異世界は、改変された獣人の世界が主体の乙女ゲーム。
獣人?
ウサギ族?
性別がオメガ?
訳のわからない異世界。
いきなり森に落とされ、さまよった。
はじめは、こんな世界に落としやがって! と女神を恨んでいたが。
この異世界でオレは。
熊クマ食堂のシンギとマヤ。
調合屋のサロンナばあさん。
公爵令嬢で、この世界に転生したロッサお嬢。
運命の番、フォルテに出会えた。
お読みいただきありがとうございます。
タイトル変更いたしまして。
改稿した物語に変更いたしました。
転生悪役召喚士見習いのΩくんと4人の最強の番
寿団子
BL
転生した世界は、前世でやっていた乙女ゲームの世界だった。
悪役お姫様の兄に生まれ変わった少年は普通のゲーム転生ではない事に気付く。
ゲームにはなかったオメガバースの世界が追加されていた。
αの家系であった一族のΩとして、家から追い出された少年は1人の召喚士と出会う。
番となる人物の魔力を与えられないと呪いによりヒートが暴走する身体になっていた。
4人の最強の攻略キャラと番になる事で、その呪いは神秘の力に変わる。
4人の攻略キャラクターα×転生悪役令息Ω
忍び寄る女王の祭典でなにかが起こる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる