5 / 16
1章 〜我ら初心者冒険者〜
5話
しおりを挟む
熊の討伐、というなんとも微妙なクエストに、羽美以外のメンバーは少し不満そうにしている。羽美もそのことには気付いていた。
「あの、羽美さん……その、こういうのってスライムとかゴブリンを相手にするのが定番では?」
浦星は小さな声で羽美に尋ねる。
「ダメダメ! 初心者でゴブリンは絶対ダメ!」
羽美は激しく頭を横に振る。
「ゴブリンを女子だけで相手にしたら、どんなことになるか……考えただけでも恐ろしい」
「そ、そうなの?」
あまりにもリアクションが大きいので、宮野は若干引きながら聞く。
「うん。会長の、このメイルに隠された豊満な体なんか! ゴブリンの格好の的だよ!!」
羽美は宮野のお尻をがっしりと掴む。
「うわぁーー!! やめてくれ!」
宮野は羽美を引き剥がして一気に距離を置く。羽美は「おほん」と咳払いをして立ち上がる。
「とにかく、真面目な話をすればゴブリンは普通に危険だから。水無月より賢いし、すばしっこい。おまけに残忍で人をいたぶる快楽を知っている」
「ねえ! 私のことゴブリンより頭悪いって言った!」
水無月は羽美の頬を引っ張る。
「知力の数値だけ見れば、そういうことになる」
何分かいざこざを続け、やっと言い合いは落ち着きを見せる。
「さ、早く行こう。まだ昼前だしね」
羽美は何事もなかったかのように落ち着いた声で提案する。
「あぁ。この力を道中で試しつつ行こう」
相変わらずな発言をする宮野を無視して、3人はギルドの外に向かう。
大門からライアスの街を抜けて、4人は街に来た時に使った街道に出る。
「おお、まだ1日も経ってないのになんか懐かしいね」
そう言いながら羽美は街道を進む。
およそ2時間歩いたところ、宮野が「むっ?」と声を出す。
「どうしたの?」、と羽美。
「あ、いや……」
宮野は何もなかったようにするが、羽美が口を開く。
「ちょっと異変を感じたらなんでも言って。後悔してからじゃ遅いから」
「いや、その草むらが怪しくて」
宮野が指差した方向を警戒したその瞬間、草むらから巨大な鷲が飛び出てくる。
「ジャイアントイーグル……! 最初の相手にしては厄介すぎる」
羽美はそう言いながら宮野の後方に行こうとする。だが宮野も水無月もどんどん走って後ろに行く。
「ねえ、2人とも前衛でしょ!?」
「あ、あれ? そうかも!」
水無月はとりあえず前に出る。だがジャイアントイーグルは水無月の上空を飛んで、後方にいる浦星へ突っ込んでいく。
「危ない!!」
宮野はそう言いながらスピアを投げつけた。攻撃はかする。そしてジャイアントイーグルは旋回して浦星から少しだけ離れた。
「これを喰らえ!」
羽美がそう言って魔法の準備を始めると、頭の中から不思議な声が聞こえる。
-ウォーロックを選びしヒューマンの娘。この世ならざる契約相手を選ぶが良い
「きたきた!」
羽美は内心でガッツポーズを決める。
-フェアレル、ケイオス、スペース・ワン、ヘルブレード。さあ、どれを選ぶ?
「ヘルブレードだ」
羽美は心の中で答える。
「いいだろう。今日から俺がお前の契約相手だ」
邪悪な声が羽美の頭の中で響き渡る。
これでウォーロックの始まりだ、と羽美は心の中で叫び、指先から紫色の閃光を放つ。
「マナ・ブラスト」
魔法はジャイアントイーグルに直撃した。ジャイアントイーグルは危機を感じてすぐに逃げる。
「ふう、危なかった」
羽美は汗を拭う。
「羽美、さっきの独り言、なにかあったのか?」
宮野が心配そうに羽美に近寄る。
「あれはウォーロックになるための儀式みたいなもの。ウォーロックというジョブは、この世ならざる生き物と契約を交わし、彼らの力を借りるの」
「そうなのか。なんかカッコいいな」
宮野は微笑む。だが、羽美はその微笑んだ顔をつまむ。
「会長、そして水無月。あなたたちは体が強いから前衛なの。無理をしろと言ってるわけじゃないけど、敵前逃亡だけはやめて」
「す、すまない」
宮野は申し訳なさそうに顔を歪める。
「ごめんね~」
対して水無月は申し訳なさそうにはしない。
「うん。でも初めてだししょうがないかな。次から頑張っていこう。浦星さんも、なるべく水無月と会長を盾にね」
浦星は苦笑いしながら頷く。
旅は再開し、4人は地図にある通り北西部にある森へと向かう。北西部に存在する巨大な森林の名前はグリーンロッドという。
羽美が事前に回収した情報では、グリーンロッドは比較的穏やかな魔物が多いと言われている。
森と街道の境界まで辿り着いた4人は、一旦停止する。
「さ、小休憩を挟もう」
羽美がそう提案すると、他の3人は頷いた。まだ旅にも慣れていないので、歩くだけでも体力は使うのだ。
「あーあ。私活躍できなかったな~。ごめんね、羽美っち」
水無月は丸太の上に腰をかけながら言う。
「ううん。私も強く言い過ぎたかも。慣れるまで無理しないで」
そう言って羽美は水分を補給する。
「そうだ、スキルとか魔法っていうのは使い放題じゃないの。こうやって休憩しないと使える回数が回復しないから。ただ、初級呪文だけは使い放題だから」
「「分かった」」
全員、真剣に頷いて静かな小休憩を過ごす。水無月は軽い体操をしたり、武器の素振りをしている。宮野は静かに瞑想をしていた。
浦星は自分が持っている呪文にしっかりと目を通して暗記作業をする。
各々が満足のいく小休憩を終え、4人はまた出発する。
時刻は13時。羽美たちはグリーンロッドの地へ足を踏み入れた。
「あの、羽美さん……その、こういうのってスライムとかゴブリンを相手にするのが定番では?」
浦星は小さな声で羽美に尋ねる。
「ダメダメ! 初心者でゴブリンは絶対ダメ!」
羽美は激しく頭を横に振る。
「ゴブリンを女子だけで相手にしたら、どんなことになるか……考えただけでも恐ろしい」
「そ、そうなの?」
あまりにもリアクションが大きいので、宮野は若干引きながら聞く。
「うん。会長の、このメイルに隠された豊満な体なんか! ゴブリンの格好の的だよ!!」
羽美は宮野のお尻をがっしりと掴む。
「うわぁーー!! やめてくれ!」
宮野は羽美を引き剥がして一気に距離を置く。羽美は「おほん」と咳払いをして立ち上がる。
「とにかく、真面目な話をすればゴブリンは普通に危険だから。水無月より賢いし、すばしっこい。おまけに残忍で人をいたぶる快楽を知っている」
「ねえ! 私のことゴブリンより頭悪いって言った!」
水無月は羽美の頬を引っ張る。
「知力の数値だけ見れば、そういうことになる」
何分かいざこざを続け、やっと言い合いは落ち着きを見せる。
「さ、早く行こう。まだ昼前だしね」
羽美は何事もなかったかのように落ち着いた声で提案する。
「あぁ。この力を道中で試しつつ行こう」
相変わらずな発言をする宮野を無視して、3人はギルドの外に向かう。
大門からライアスの街を抜けて、4人は街に来た時に使った街道に出る。
「おお、まだ1日も経ってないのになんか懐かしいね」
そう言いながら羽美は街道を進む。
およそ2時間歩いたところ、宮野が「むっ?」と声を出す。
「どうしたの?」、と羽美。
「あ、いや……」
宮野は何もなかったようにするが、羽美が口を開く。
「ちょっと異変を感じたらなんでも言って。後悔してからじゃ遅いから」
「いや、その草むらが怪しくて」
宮野が指差した方向を警戒したその瞬間、草むらから巨大な鷲が飛び出てくる。
「ジャイアントイーグル……! 最初の相手にしては厄介すぎる」
羽美はそう言いながら宮野の後方に行こうとする。だが宮野も水無月もどんどん走って後ろに行く。
「ねえ、2人とも前衛でしょ!?」
「あ、あれ? そうかも!」
水無月はとりあえず前に出る。だがジャイアントイーグルは水無月の上空を飛んで、後方にいる浦星へ突っ込んでいく。
「危ない!!」
宮野はそう言いながらスピアを投げつけた。攻撃はかする。そしてジャイアントイーグルは旋回して浦星から少しだけ離れた。
「これを喰らえ!」
羽美がそう言って魔法の準備を始めると、頭の中から不思議な声が聞こえる。
-ウォーロックを選びしヒューマンの娘。この世ならざる契約相手を選ぶが良い
「きたきた!」
羽美は内心でガッツポーズを決める。
-フェアレル、ケイオス、スペース・ワン、ヘルブレード。さあ、どれを選ぶ?
「ヘルブレードだ」
羽美は心の中で答える。
「いいだろう。今日から俺がお前の契約相手だ」
邪悪な声が羽美の頭の中で響き渡る。
これでウォーロックの始まりだ、と羽美は心の中で叫び、指先から紫色の閃光を放つ。
「マナ・ブラスト」
魔法はジャイアントイーグルに直撃した。ジャイアントイーグルは危機を感じてすぐに逃げる。
「ふう、危なかった」
羽美は汗を拭う。
「羽美、さっきの独り言、なにかあったのか?」
宮野が心配そうに羽美に近寄る。
「あれはウォーロックになるための儀式みたいなもの。ウォーロックというジョブは、この世ならざる生き物と契約を交わし、彼らの力を借りるの」
「そうなのか。なんかカッコいいな」
宮野は微笑む。だが、羽美はその微笑んだ顔をつまむ。
「会長、そして水無月。あなたたちは体が強いから前衛なの。無理をしろと言ってるわけじゃないけど、敵前逃亡だけはやめて」
「す、すまない」
宮野は申し訳なさそうに顔を歪める。
「ごめんね~」
対して水無月は申し訳なさそうにはしない。
「うん。でも初めてだししょうがないかな。次から頑張っていこう。浦星さんも、なるべく水無月と会長を盾にね」
浦星は苦笑いしながら頷く。
旅は再開し、4人は地図にある通り北西部にある森へと向かう。北西部に存在する巨大な森林の名前はグリーンロッドという。
羽美が事前に回収した情報では、グリーンロッドは比較的穏やかな魔物が多いと言われている。
森と街道の境界まで辿り着いた4人は、一旦停止する。
「さ、小休憩を挟もう」
羽美がそう提案すると、他の3人は頷いた。まだ旅にも慣れていないので、歩くだけでも体力は使うのだ。
「あーあ。私活躍できなかったな~。ごめんね、羽美っち」
水無月は丸太の上に腰をかけながら言う。
「ううん。私も強く言い過ぎたかも。慣れるまで無理しないで」
そう言って羽美は水分を補給する。
「そうだ、スキルとか魔法っていうのは使い放題じゃないの。こうやって休憩しないと使える回数が回復しないから。ただ、初級呪文だけは使い放題だから」
「「分かった」」
全員、真剣に頷いて静かな小休憩を過ごす。水無月は軽い体操をしたり、武器の素振りをしている。宮野は静かに瞑想をしていた。
浦星は自分が持っている呪文にしっかりと目を通して暗記作業をする。
各々が満足のいく小休憩を終え、4人はまた出発する。
時刻は13時。羽美たちはグリーンロッドの地へ足を踏み入れた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる