jkたち、trpg風な異世界を大冒険する

丸々 かずきち

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1章 〜我ら初心者冒険者〜

9話

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「馬鹿なの!?」

 全裸の女は、凄まじい速度で右手を振り抜く。彼女の手の甲は羽美の頬を打ち抜く。羽美は「ぐはっ」と言いながら倒れる。

「誰……か……回復呪文を」

 そんなことを言う羽美を無視して、女は部屋の中へと戻る。

「なにをやっている」

 羽美の目の前には、呆れ顔をした宮野、浦星、水無月が覗き込んでいた。

「一目惚れって、こいうことなんだな」

 まだそんなことを言う羽美に、宮野はため息を吐いて、右手を差し出す。

「早く立て。そしてクエストを進めるぞ」

 差し出された手を掴み、羽美は立ち上がる。4人は1階に戻って、モーグと共にリビングの床に座る。ダイニングテーブル周りの椅子は2つしかないからだ。

「さて、これからどうするかだが二手に分かれようかと思う。赤い石の発生源はこの森のどこかにあるはずだからな」

「そうだね。人数の配分はどうする?」

 羽美が聞く。

「私1人で、君たちはいつも通り4人……いや、もう1人助っ人がいる」

「モーグさん、本当に1人で良いのですか?」

 宮野が尋ねると、モーグは自分の冒険者シートを取り出して4人に見せる。

「レンジャーのレベル10。さすがに強いね」

 羽美は言う。

「そうだな。合計レベルでも負けてるし……って、助っ人とは誰なのですか? あ、もしかしたら羽美をビンタした人か」

「正解だ宮野さん。おーい、セリカー。外に出るぞ」

 モーグの呼びかけと同時に、2階から赤髪の女が降りてくる。赤髪は桜の形をした髪留めで後ろにまとめてあり、緋色の剣道着、黒色の袴を身につけている。さらに、腰には刀を携えている。

「あぁ、君はセリカと言うんだね」

 羽美は無駄にイケボで話す。セリカは羽美を無視しながらモーグの前に正座した。

「セリカ、この4人と共に森の異変を調べに行ってくれ」

「え……でも、いや……了解です」

 セリカは嫌そうに羽美をチラチラと見る。

「ウチの羽美っちがごめんねー。でも、一緒に頑張ろうよ」

 水無月はフレンドリーに話しかける。だがセリカはキッと水無月を睨む。

「なによ」

 水無月はセリカを睨み返す。

「はいはい、ゆっくりでいいから仲良くなろう」

 宮野は手をパチパチ鳴らしながら場を収める。

「とにかく、僕は1人で十分だから5人はなんとか頑張ってくれ。それで、この集落よりもっと北西に向かえばソレイヌと言う湖がある」

 モーグは地図を出して説明する。

「5人はここへ向かって欲しい。ここ2ヶ月の間統計を取って見たのだが、西へ向かえば向かうほど赤い石を持つ生き物が多いのだ。南西は私が行ってみる」

「分かりました。それじゃ、行こうか」

 羽美は早速武器や装備の準備を始める。その間にモーグは準備を済ませ、なにも言わずに外へと出て行った。

「えぇ、冷めてるね」

 水無月は言う。

「モーグさんはそういう人です」

 セリカは聞こえるか聞こえないかの微妙な音量で話す。

「って、あなためっちゃ武器持ってるね」

 水無月はセリカの腰や背中を見る。背中には大弓、太刀があり、腰には刀がある。セリカは「うん」と言うだけだった。

 準備が終わった5人はモーグの家を出て、村の門へと向かう。道中、武器屋や防具屋で装備を修繕し、他にも食料や水分を調達した。

「いやー。凄い速度でお金が減っていく」

 水無月は寂しそうに財布の中身を眺める。

「狩りをすればいいだけだ」

 セリカはそっぽを向きながら呟く。

「狩り?」

 宮野がどこか嬉しそうに言う。

「そうだ。そもそも、この世にはまったく街や村のない地方も存在する。何ヶ月も自然に身を投じるとなると、狩りは必要になるだろう」

「さっすがセリカちゃん。かっこいいね」

 羽美はセリカかの肩に手を置くが、振り払われる。

 そんな調子で、5人はグリーンロッドの森へ再度足を踏み入れる。相変わらず陽光も届かないほどに木々が生えていて、地面はぬかるんでいる。

 野生動物の襲撃に気をつけながら、5人は北西のソレイヌへ向かっていく。

 しばらくすると羽美たちは泥の水たまりがそこら中にある湿地に到着する。長い草が生い茂っていて視界は非常に悪い。

「どうする羽美」

 宮野が聞く。

「湿地は危険。遠回りするのがいいと思う」

「遠回りか。なるべく一歩でも多く進みたいのだがな」

 宮野はしゃがんで、泥の水たまりに人差し指を入れる。ドロっとしていて、足を入れなくても足場が悪いことが分かる。

「羽美の言う通り、遠回りをしましょう」

 セリカも賛成したようで、5人は湿地と森の境目に沿って北西へ向かうことにした。

 村を出てからおよそ1時間。そろそろ休憩を挟みたいな、と羽美が思った時、隣に見える湿地から巨大なカエルが姿を現す。

「うわぁっ!」

 羽美は思わず腰を抜かす。巨大なヒキガエルは舌を羽美に向かって伸ばす。

「危ない!」

 なんと、セリカが羽美を押して身を庇った。だがヒキガエルの舌はセリカの体に巻き付いて、セリカを引っ張って丸呑みする。

「セリカ!!」

 続いて水無月が突っ込んでいく。ヒキガエルは重そうにお腹をさすっていて、動きが鈍い。

 セリカのハンマーは見事にヒキガエルの顔面に深く命中する。

 カエルは吹き飛ぶが、まだピンピンとしている。

 羽美は水無月が作ったチャンスを逃さず、マナ・ブラストを人差し指から発射する。紫色の閃光はカエルの腕を貫く。

「ゲゴォォ……」

 カエルは、飲み込んだ獲物を吐かないように必死に口を抑えながら逃げ出そうとする。

「くっ、逃げるな!」

 宮野はスピアを投擲する。スピアもなんとかカエルの体に命中するが、浅い傷しか付けられない。カエルはまだ動いている。

「追いかけよう!」

 羽美はそう叫んで、巨大なヒキガエルを追う。走っている間、浦星が呪文の詠唱を始めたのに気付いた3人は、呪文のための通り道を開く。

「スロット消費……アイスブレード!! セリカさんを返して!」

 浦星はこれまでにないくらいの大きさで叫び、右手から氷の剣を発射させる。

 氷の剣は思い切りカエルに刺さり、追い討ちとして刺さった場所から氷の柱が四方八方へ突き刺さる。

「あ、ちょっとやりすぎ! お腹の中のセリカに当たっちゃうかも!」

 水無月はそう言いながら巨大なヒキガエルの死体に近寄る。

「ご、ごめんなさい。こんな威力があるなんて……」

 羽美は浦星の肩にポンと手を置く。

「大丈夫だよ。ありがとうね」

 そして、ヒキガエルの大きな口から、胃液で濡れているセリカが出てくる。

「うっ……気持ち悪い……」

 そしてセリカは気を失った。



※スロットという単語が出ましたので、解説2を出します。呪文詠唱に必要なポイントだと思ってください。それ以上の説明が欲しい方はどうぞ解説へお越しください。
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