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1章 〜我ら初心者冒険者〜
13話
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香草の効いたステーキを食べながら、羽美たちはモーグの話を聞き始める。
「君たちが北の方へ向かっている間、僕は南を探索していたんだ。そこで僕は山賊を見た」
モーグはポケットから赤い石を取り出す。
「山賊はこれを身につけていた。目の周りが赤くなっていて、発作のように斧を振り回していたんだ。今僕が持っているのは山賊から奪ったもの」
「それって、赤い石はとんでもない範囲にまで及んでいるということか……」
宮野は顎に手を当てて呟く。
「そうだと思う。君たちが来た、と言っているライアスの街にまでこの被害は出ているかもしれない。そして南西も北西と同じくらい凶暴化した魔物が多かった。つまり、この赤い石は西から発生しているものだと思われる」
そこでモーグは再度地図をテーブルの上に出す。モーグが指差した場所は、このグリーンロットの森よりも西にある山脈だ。
「ガルオン山脈と言う。そして、この山脈よりも西の地方と、ここライアス地方を繋ぐのがガルオンのトンネル。トンネルのちょっと北にあるのがガルオン鉱山だ」
鉱山、という言葉に水無月以外はピンとくる。
「てことは、そのガルオン鉱山に赤い石のヒントがあるかもしれないのか」
羽美が言うとモーグは「その通りだ」と言って頷く。
「ただ、その鉱山に行くまでに盗賊団のアジトがあるはずだ。私もまだ実際に確認していないので本当かどうかは分からないが」
「つまり行くまでに盗賊団も退治しろってこと?」、と羽美が聞く。モーグは無言で頷いた。
「正確には君たちだけではないはずだ」
そしてモーグはクエスト用紙を羽美たちに手渡す。その紙には印鑑と〈ウォルタス〉というサインがある。ウォルタスは狩人の集落の長だ。
「これは?」
「見ての通りクエスト用紙、そしてライアスの街の長に宛てた手紙だ。君たちがこれを提出すれば、このクエストは公認となる」
そこで羽美は首を傾げる。
「公認? 非公認のクエストもあるの?」
「ああ。非公認のクエストは、個人が直接ギルドに提出してあるものであり、ギルドが無理だと判断したらいつでも処分できる。けどクエストを提出する際は無料なんだ。
公認のクエストは街長が目を通すことにより、解決するまで必ず引き受けてもらうことができる。まあ、公認にするかどうかは街長の判断だし、非公認と違って有料だ。
それで、公認クエストは街を代表する熟練騎士団がクエストを引き受けてくれる特典まであるのさ」
「そうなんだ。じゃあ、さっき盗賊団を退治すれば良いの? って聞いた時、『正確には君たちだけでは無いはず』って答えたのは騎士団もいるからってこと?」
「その通りだ。理解してくれてありがとう」
水無月以外はちゃんと納得したように頷く。かんなら水無月は瞼を半開きにして眠そうにあくびをしている。
羽美は水無月を無視して、他の3人の方と向き合う。
「じゃあ今から今後の予定を言ってみるね。まずライアスの街に帰る。その後クエストを公認にしてもらい、騎士団と一緒に盗賊団のアジト、そして鉱山まで行く。OK?」
「「うん」」、と3人は答える。
ご飯も食べ終わり、羽美たちが出発し始めると、モーグは家の扉を開く。
「本当に色々ありがとう。これからも力になりたいから、困った時はいつでも来てくれ。それとこれが報酬だ」
モーグは小さな木箱を用意する。羽美たちは家から出る際に、その木箱を受け取った。
「ありがとう。これが報酬なんだね」
「ああ。小さいがとても有用なものが3つある。是非役に立ててくれ」
それから、羽美たちはモーグに別れを告げて狩人の集落を出る。セリカはあっさりと村を出て行く。
「挨拶とかしなくていいの?」
羽美は聞く。
「うん。さようなら、なんて言ったらもう会えないみたいじゃない。モーグさんも、村長も、必ず会えるから」
「そっか」
羽美は微笑んだ。
ジャイアント・バインド・スネークは赤い石があってもなくても、どちらにせよ凶暴なので、羽美たちは森を大きく迂回する。
グリーロッドを丸1日かけて抜けた羽美たちは、久しぶりの街道を見て、どこか感慨深く感じた。
「いやはや、平らで乾いた道は安心して歩けるねぇ。湿地なんて膝まで泥が被るからさ」
羽美は泥まみれの足を見下ろしながら呟く。泥は乾燥しているせいで、鎧のように足にくっ付いている。
全員疲労を溜め込んでいる表情で、とぼとぼ歩き出す。雑談する気力もなく、5人は静かな空気を保っていた。
2時間ほど街道を歩き続け、羽美たちはついにライアスの街まで到着する。
門の前にはいつもの衛兵が立っている。
「お前たち、身分を証明するものあるか?」
羽美たちはゾンビのように体を震わせながら、冒険者シートを取り出す。衛兵は若干引き気味になりながらシートを受け取った。
「せ、正規の冒険者のようだな。いいぞ……通って」
羽美たちは無言で街の中へ入っていく。彼女たちの目的地は街長の家だ。
「君たちが北の方へ向かっている間、僕は南を探索していたんだ。そこで僕は山賊を見た」
モーグはポケットから赤い石を取り出す。
「山賊はこれを身につけていた。目の周りが赤くなっていて、発作のように斧を振り回していたんだ。今僕が持っているのは山賊から奪ったもの」
「それって、赤い石はとんでもない範囲にまで及んでいるということか……」
宮野は顎に手を当てて呟く。
「そうだと思う。君たちが来た、と言っているライアスの街にまでこの被害は出ているかもしれない。そして南西も北西と同じくらい凶暴化した魔物が多かった。つまり、この赤い石は西から発生しているものだと思われる」
そこでモーグは再度地図をテーブルの上に出す。モーグが指差した場所は、このグリーンロットの森よりも西にある山脈だ。
「ガルオン山脈と言う。そして、この山脈よりも西の地方と、ここライアス地方を繋ぐのがガルオンのトンネル。トンネルのちょっと北にあるのがガルオン鉱山だ」
鉱山、という言葉に水無月以外はピンとくる。
「てことは、そのガルオン鉱山に赤い石のヒントがあるかもしれないのか」
羽美が言うとモーグは「その通りだ」と言って頷く。
「ただ、その鉱山に行くまでに盗賊団のアジトがあるはずだ。私もまだ実際に確認していないので本当かどうかは分からないが」
「つまり行くまでに盗賊団も退治しろってこと?」、と羽美が聞く。モーグは無言で頷いた。
「正確には君たちだけではないはずだ」
そしてモーグはクエスト用紙を羽美たちに手渡す。その紙には印鑑と〈ウォルタス〉というサインがある。ウォルタスは狩人の集落の長だ。
「これは?」
「見ての通りクエスト用紙、そしてライアスの街の長に宛てた手紙だ。君たちがこれを提出すれば、このクエストは公認となる」
そこで羽美は首を傾げる。
「公認? 非公認のクエストもあるの?」
「ああ。非公認のクエストは、個人が直接ギルドに提出してあるものであり、ギルドが無理だと判断したらいつでも処分できる。けどクエストを提出する際は無料なんだ。
公認のクエストは街長が目を通すことにより、解決するまで必ず引き受けてもらうことができる。まあ、公認にするかどうかは街長の判断だし、非公認と違って有料だ。
それで、公認クエストは街を代表する熟練騎士団がクエストを引き受けてくれる特典まであるのさ」
「そうなんだ。じゃあ、さっき盗賊団を退治すれば良いの? って聞いた時、『正確には君たちだけでは無いはず』って答えたのは騎士団もいるからってこと?」
「その通りだ。理解してくれてありがとう」
水無月以外はちゃんと納得したように頷く。かんなら水無月は瞼を半開きにして眠そうにあくびをしている。
羽美は水無月を無視して、他の3人の方と向き合う。
「じゃあ今から今後の予定を言ってみるね。まずライアスの街に帰る。その後クエストを公認にしてもらい、騎士団と一緒に盗賊団のアジト、そして鉱山まで行く。OK?」
「「うん」」、と3人は答える。
ご飯も食べ終わり、羽美たちが出発し始めると、モーグは家の扉を開く。
「本当に色々ありがとう。これからも力になりたいから、困った時はいつでも来てくれ。それとこれが報酬だ」
モーグは小さな木箱を用意する。羽美たちは家から出る際に、その木箱を受け取った。
「ありがとう。これが報酬なんだね」
「ああ。小さいがとても有用なものが3つある。是非役に立ててくれ」
それから、羽美たちはモーグに別れを告げて狩人の集落を出る。セリカはあっさりと村を出て行く。
「挨拶とかしなくていいの?」
羽美は聞く。
「うん。さようなら、なんて言ったらもう会えないみたいじゃない。モーグさんも、村長も、必ず会えるから」
「そっか」
羽美は微笑んだ。
ジャイアント・バインド・スネークは赤い石があってもなくても、どちらにせよ凶暴なので、羽美たちは森を大きく迂回する。
グリーロッドを丸1日かけて抜けた羽美たちは、久しぶりの街道を見て、どこか感慨深く感じた。
「いやはや、平らで乾いた道は安心して歩けるねぇ。湿地なんて膝まで泥が被るからさ」
羽美は泥まみれの足を見下ろしながら呟く。泥は乾燥しているせいで、鎧のように足にくっ付いている。
全員疲労を溜め込んでいる表情で、とぼとぼ歩き出す。雑談する気力もなく、5人は静かな空気を保っていた。
2時間ほど街道を歩き続け、羽美たちはついにライアスの街まで到着する。
門の前にはいつもの衛兵が立っている。
「お前たち、身分を証明するものあるか?」
羽美たちはゾンビのように体を震わせながら、冒険者シートを取り出す。衛兵は若干引き気味になりながらシートを受け取った。
「せ、正規の冒険者のようだな。いいぞ……通って」
羽美たちは無言で街の中へ入っていく。彼女たちの目的地は街長の家だ。
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