推し活、始めました。

桜乃

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出会い

綺良くん 1

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 5年前……僕はバイトの面接の帰りに渋谷を歩いていた。

 足りないな……

 面接担当者に聞いた条件を考え、大きなため息をついた。

 今回のバイトが決まって、限界までシフトを入れてもらっても、目標金額を貯めるまで、時間がかかりすぎる。

「ねぇ、君、いくつ?」

 肩を叩かれ、振り返るとヒゲ面のいかついおっさんが立っていた。その姿を見た瞬間、僕の脳裏に浮かんだ言葉。

 ヤバい……

 ヤバい、ヤバいよっ。変なのに絡まれた。

 僕が困惑していると、ああ……と呟き、名刺を差し出す。

とどろき芸能事務所?」

 つい名刺を受け取ってしまい、声に出して読んでしまった。

「うん、そう。ねぇ、君、芸能界、興味ない?」
「芸能界?」

 いやいやいや、怪しさ満点じゃないか……

 僕は名刺を突き返したが、おっさんはヒゲを触りながらニマニマと話し始める。

「君、売れると思うんだよねーー、うちの敏腕びんわんクール女史が絶対に太鼓判押しそうな雰囲気なんだよ」
敏腕びんわんクール女史?」

 全然話が見えず、質問をしてしまってからハッとした。

 これって、もう相手のペースじゃん!!

「うん、うちのナンバーワンマネージャー。彼女が認めれば、必ず売れるからさ。ためしに顔出してみない?」
「お断りします」
「ええっ? 速攻すぎじゃない?」

 当たり前だっ! 何の事務所に連れていかれるかわかったもんじゃない。

 僕の警戒心が危険信号を出しているにもかかわらず、少し心が揺れている。

 でも……もし、本当に本当に芸能事務所のスカウトだったら……お金……すぐ貯まる?

 微妙な顔の変化を読み取られたのか、おっさんは笑い出した。

「あれぇぇ、実は迷ってない? 迷ってるならさ、来てみなよ。ま、たしかに、怪しいよね。今の若者、これくらいの警戒心も必要、必要。結構、結構」
 
 うんうんと頷き、ニカッと笑いながら、1つ提案をされた。

「じゃあさ、携帯電話、手に持ってなよ。少しでも怪しかったり、怖かったら110番かければいいからさ。あと、録音もしていいよー」

 なるほど……すぐに警察に電話できる状態だったら安心だし、録音もできる。

「じゃ、じゃあ……話を聞くだけなら……」


 この決断が僕の運命を変えた。
 
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