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意外な強敵、現れました

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 翌日。
 
 謁見やら、勉強やらに予想よりだいぶ時間が取られてしまった俺は一段落した時に、急いで胸ポケットに入れてある懐中時計を取り出し、時間を確認した。
 時計の針はクラリスが王宮にきていたであろう時間から、数時間後を指している。
 
 こんな時間か……もうクラリスは帰っただろうな。

 念の為、ナクサスに確認してもらうと、なぜか、まだクラリスはザラの執務室にいることがわかり、嬉しい反面、不思議に思う。

 時間、かかりすぎじゃ……クラリスは大丈夫なのか?

 すぐに準備をし「ザラ先生のところにいってくる」とナクサスに言い残し、急ぎ足でザラの執務室にむかう。

 相手はあのザラだ。きっと不安なはず。

 心細く思っているであろうクラリスのそばに、早くいってあげたくて、気がいてしまう。
 早く早くと、大股で歩き、執務室に近づくと、普段とは違う現象を耳にする……笑い声が聞こえたのだ。
 
 笑い声? ザラの執務室で?
 
 執務室の前に立つと、話し声と笑い声の発生源は間違いなくこの中だと断定できた。
 頭は疑問符でいっぱいになり、執務室の扉が少し開いてるのに気づいた俺は隙間から様子を窺う……
 
 クラリスとザラ……あと、あいつは王宮騎士のエドワード・ブライトン……ザラの兄か?
 
 ザラとエドワードを見た途端、俺の心臓がドクンと体中を大きく震わせた。
 2人がとても嬉しそうに、愛しそうにクラリスを見ていたからだ。
 
 なんで? なんでだ? この数時間で何があったんだ? なんでこんな事になっているんだ?
 そんな目でクラリスを見るな! そんな顔でクラリスに笑いかけるな!
 
 怒りと嫉妬が入り混じった感情が俺の胸を支配する。
 後悔した。無理矢理にでも予定を変更して、ついていくべきだった、と。
 あまりにも楽しそうな3人の様子に、邪魔してやりたいが体が動かない。なぜか、あの3人の中に入るのは躊躇してしまう。
 あの2人がクラリスに話しかけ、クラリスはガクッと肩を落とした。
 
 一体、何を言ったんだ?
 本当に何が起こっているんだ!
 
 とうとう我慢できなくなり、扉をノックしようした時、ザラとエドワードが大事そうにクラリスの頭を撫でたのだ!

 クラリスの
 頭を
 撫でた

 俺の中で何かが弾けて、気がつくと扉を思いっきり開けていた。
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