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婚約者が口説かれました

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 入学式の翌日。

 ああ、爽やかな朝だ。しっかり寝たし、疲労も回復。

「おはようございます。王子」

 ナクサスがいつものように挨拶をし、寝室に入ってきたが、すでに明るい室内を見て、おや?っと眉を上げた。

「おはよう、ナクサス」
「今日は機嫌がよろしいようで」

 ナクサスが自然な笑みを浮かべながら、朝の支度の準備に取りかかる。

 ほらほら、いつもみたいに聞くんだナクサス。俺がご機嫌の理由をさ。

「朝食の準備ができました」

 聞けーーーー!!
 いっつも余計なことは言うくせに!

「ああ、聞いて欲しそうですね。なんで、ご機嫌なんですか?」

 今、気づきましたと言わんばかりの表情をするナクサスは、さぁさぁ早く言いなさい。と目で急かす。

 お前…………わざとだろ?
 それに、そう言われると……言いづらいじゃないか。

「言わないなら、さっさと朝食を召し上がってください」
「あーーー言う言う! 今日は学園でダンスパートナー決めがあるんだよ」

 ダンスパートナー……学園では1年を通し、同じパートナーとダンスの授業を受ける。学年全体でパートナー決めが行われるのだが、同学年の中に婚約者がいる人は、婚約者がパートナーになる。今回、俺達はこれに当てはまるので、クラリスのパートナーは俺なのだ。
 大事な事なのでもう1回。

 クラリスのパートナーは"俺"なのだ!

 他の生徒……ジェスターやミカエルは、くじ引きでパートナーが決まるわけで……もう、そこでカップルでもなんでも誕生しちゃってくれ。

「ああ、だから機嫌が良いのですか。クラリス様のパートナーは婚約者でもある王子に確定ですから」
「そうなんだよなぁ。この件はあいつらがどれだけ頑張ってもどうしょうもないからさぁ」

 へっへっへー
 顔が自然に緩むな。やっぱり婚約者の立場は強い。

「ああ、そうそう、ダンスパートナー決めの時間、一旦王宮に戻ってきてください」
「へ?」
「先日の公務の契約書、間違った処理をしてしまったそうで。今日までの契約書です。公務なので、抜けられるでしょう?」
「え……でも……」
「ダンスパートナー決めの間は時間があるでしょう? 王子はクラリス様に決定しているのだから」
「まぁ……そうだが……でも」
「はい、早く朝食召し上がってください」
「お、おう……」

 結局、押し切られてしまった俺。

 みんながパートナー決めている間、クラリスと2人でいられると思ったのになぁ……
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