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婚約者が口説かれました

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「先生、お話の続きは後ほど伺いますので。失礼します」

 俺は先生にお辞儀をして2人の方へむかう、一方、クラリスの手を取ったカールは強い力でクラリスを引き寄せ……早い話、抱きしめようとしたのだ。
 俺はカッとなって、すぐ横に行き、カールの腕をガシッと掴んだ。

「クラリスの手を離せ」
 
 怒気を込めた声で言い、カールを睨む。

 俺の顔を見るとカールは驚愕し、思考が停止してしまったのか、クラリスを離すことに考えが及ばないようだった。

「聞こえなかったか? クラリスの手を離せ」

 やっと自分の状況を理解し、慌ててクラリスの手を離すと、カールは小刻みに震えだす。

「カール・グロスター。クラリスは俺の婚約者と知っての行動か?」
 
 俺は睨みつけながら、淡々と質問する。カールは俺の逆鱗に触れたことを察したのか、震えが更に大きくなり、顔面蒼白になった。
 すると、クラリスが俺とカールの間に入り、カールを庇いだし…………って、なんで?

「アルベルト様、カール様はご病気なんですよ? 早く保健室にお連れしないと……」

 病気だぁぁ? 

「はぁぁ? クラリス、なに言ってるんだよ?」
「ほら、今だって……青ざめてらっしゃるし、こんなに震えて……寒気が止まらないのですわ。カール様、熱があるかもしれません」
「いや、だって、それは……」

 それは……王族である俺に睨まれたからで……決して、病気じゃないだろ。でも、それを口にすると、権力を振りかざしているみたいで、言えない。

 俺は頭を片手でクシャクシャに掻きながら、そっぽをむいた。

 このままだとクラリスの中で俺は病人をいじめるやつになっちまう。

「あああ! 気が削がれた。とっとと保健室でもどこでも行け。クラリスに感謝しろよ」
 
 俺が言い放ち、カールは無言で何度も頷いたあと、猛ダッシュでこの場から去っていき、クラリスは不思議そうに走っていくカールを眺めていた。
 
 ほらっ、あいつ、元気に走って行ったぞ? どこが病人なんだよ。

「クラリス、男に気をつけろって、いつも言ってるだろ」

 俺はクラリスにもブスッとした声でひと言。

 俺がもう少し遅ければ、お前、カールに抱きしめられてたんだぞ? うわっ、考えだけでも、腹が立つ……やっぱりカールあいつ許さん。

「えっ? お話ししていただけですが?」
「話してただけって……」
「はい、別にカール様は私に危害を加えようとはしてませんでしたし」
「だから! そういうことじゃないって……」

 俺は額を押さえながらため息をつく。
 だからさぁ、そういう事じゃないんだよ……

 俺は昨日に引き続き、疲れがドッと身体の中に押し寄せてきた。
 
 入学2日でこの状況……俺の身体、卒業までもつ?

 「あのな……」

 もう1度クラリスに注意をしようと顔を上げた時、クラリスの胸元に輝くペンダントが目に入り……あれ?

 あのザラから貰ったペンダント……ブルーの石じゃなかったっけ? なんで透明なんだ? 

 俺は気になり、ペンダントをジッと見ていると透明だった石がスッとブルーに戻る。

 へ? これ、ただのペンダントじゃない? 魔法道具かよ!? 
 
 ザラ……一体どんな魔力を込めたんだ……
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