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隣国王子がやってきました

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 ザラの睡眠魔法により翌朝までぐっすり眠った俺は、回復魔法のおかげで体力も完璧に戻り、すっかり元気になった。ナクサスは「さすがザラ様です。ザラ様に診ていただけたなんてありがたい事ですよ?」と機嫌良く話す。

 めっちゃ扱い雑だったけどな!

 カーテンを開け、朝の日の光で部屋が明るくなると俺は枕元にあるメモに気がついた。

「おはようございます。今日も1日無理しちゃだめですよ」

 メモを読み、自然と顔が綻んでしまう。心配性め……と幸せな気分に浸りながら。

 朝食をとっているとザラが部屋に来て、俺の顔をチラリと見る。

「ああ、もう大丈夫ですね」
「ザラ先生、ありがとうございました」
「クラリスに頼まれましたから」

 俺はふと入眠直前に聞こえたクラリスとザラの会話を思い出し、軽い気持ちで口にした。

「ザラ先生、昨日……」
「昨日?」

 無表情だったザラの目がキラリと光り、不快感全開の声を投げかけられる。

「クラリスの頬にキスした件ですか? 病人には手は出しませんけど、元気になったら話は別です。覚悟しておきなさい」

 うっ……やべぇ……やっぱり見られてた……
 昨日の事は話題にするのはやめとこう……きっと、あの会話も夢だ、夢。

 食事が終わり、俺は思いっきり伸びをする。ナクサスに正装の準備をさせ、昨日の事を考える。

 父上から呼び出しがないという事は、昨日の俺の行動は不問にされた可能性が高い。それは、正直、助かったな。

 ナクサスが俺の隣に立ち「準備ができましたが」と言い、時間を確かめる。

 そろそろ、行くか。

「セドニー王子の見送りにいく」

 着替えを終え、鏡の前に立つとタンザ王家の象徴ともいえる濃いブラウンの瞳が映る……そう俺だって一国の王子なんだ。これが最後の対峙になる。負けてなるものか。背筋を伸ばし、気持ちを引き締め「よし」と鏡に映った自分を鼓舞する。

「では、いってくる」

 気合いを入れ直した俺は、力強く声を出し、身を翻した。
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