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クラリスが17歳になりました

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 パーティーの時間が迫り、公爵とミカエルは招待客を出迎える為、ジェスターはゲストとして、渋々パーティールームへむかった。

 俺と2人きりになったクラリスは視線を外し、話したい事があるのに話すのを躊躇しているような素振りを見せる。その様子を横目で見ていた俺は、好きな男の話をされるのではないかと、胸中穏やかではない。

 せめてダンスが終わってからにしてくれ……
 
 クラリスは意を決したのか、フンヌッとガッツポーズで気合いを入れ、俺を見た。

 ああ、意を決しちゃったかぁぁ……

「あの……アルベルト様……私と今日ダンスして大丈夫ですか? 今更ですが……」
「えっ? どういう意味だ?」

 少し意外な方向の話に俺はポカンとしてしまう。
 
 それはこっちの台詞だろ……

「今日、世間に婚約者として認知されてしまったら、後々、破棄するにしても……アルベルト様の想い人に誤解を……」
「されない」
「えっ?」
「誤解なんてされない」

 俺ははっきりときっぱり否定をする。

 まだ勘違いしていたのか……俺に好きな人がいるって……まぁ、いるのは事実だけど。

「えっと……今夜は名のある貴族のご令嬢は招待しておりますので……あ、ご令嬢ではないのですか?」
「そうじゃないが……」
「では、今夜、パーティーに参加しているのでは?」
「まぁ、いるけどな」
「そう……です……よね」
「あのな……」
「アルベルト様、お嬢様、パーティールームにお越しください」

 メイドの声に俺達は顔を上げ、目を合わせた。

 なんていうか……こう核心に迫る話をしようとすると、何故か邪魔が入るのは、そういう星の下に生まれてしまったんだろうか?
 俺はこの時間がない状況で、好きな人が誰かということを話すのは得策ではないと判断をする。
 この後、踊るのだから尚更だ。

 この話題を止め、立ち上がりついでに思いっきり伸びをし、気持ちを整えた。クラリスに右手を差し出し、王子スマイルでダンスに誘う。

「さぁ、パーティーが始まりますよ。踊りましょう、婚約者殿」

 クラリスは俺を見上げ「アルベルト様?」と目を白黒させ、瞬きを数回し、きょとんとする。

 おいおい、びっくりするなよ。俺だって、たまには王子らしいことをするんだぞ?

 ダンスの誘いに薄っすら頬を染めたクラリスは俺が差し出した手にそっと触れ、真っ直ぐ見つめた。そして、はにかんだ笑みを浮かべる。

「はい、アルベルト様」
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