鈍感令嬢に恋した時から俺の苦労は始まった

桜乃

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クラリスが17歳になりました

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「今日はダンスが踊れなくて残念でした」
「申し訳ございません、バード様。少し疲れてしまいまして……どうぞ、パーティーは楽しんで下さいませ」

 クラリスは丁寧にお辞儀をするとニコリと微笑む。バードはプラチナブロンドの髪をかき上げ、クラリスに翠色の瞳をむけ、笑いかける。

 月夜の中庭で微笑み合っている2人の姿はお似合いで……絵画を見ているような錯覚さえおこし、俺の心臓はギュッと握りつぶされたような痛みを感じた。

「クラリス嬢、先日、お渡しした物はいかがでしたか?」
「最高でした! 素晴らしい物をご用意いただきありがとうございます」

 クラリスの顔がぱあっと明るくなり、思い出して高揚したのか、興奮気味にバードに感謝を伝えていた。

 えっ……なにか贈り物でも貰ったのか? あんなに喜んだクラリスの姿、俺、見たことないぞ……やっぱり、好きな男からの贈り物は特別なんだろうか……

「それは良かった」
「バード様……バード様のおかげで甘い幸せな時間がすごせましたわ」

 唐突にクラリスから発せられた台詞の内容に頭を鈍器で思いっきり殴られたのかと思うほどの衝撃を受けた。狼狽うろたえ、身体が小刻みに震えてしまう。

 甘い幸せな時間ってなんだよ……
 2人はそういう関係なのか……俺には望みは残されてないのか……?

「クラリス嬢が上手だからですよ」
「まぁ、褒めていただき嬉しいです。でも、それもバード様が良くしてくださるからですわ」

 なんの話してるんだよっ。上手ってなにがだよっ。良くしてくれるってなにをだよっ。なんなんだよ……やっぱり……そういう仲なのか? あの2人は恋仲なのか……?

 思考停止した俺の頭が必死に警鐘を鳴らす。
 ここにいてはダメだと、絶望の底なし沼に落ちていくだけだと。

 この場を離れる為、よろよろと後ろに1歩下がった時……クラリスとバードの会話が再び耳に入ってくる。

「そうだ、バード様。今度、上質の小麦粉がありましたら、お売りくださいね」
「はい、わかりました。良さそうな品が入りましたら、クラリス嬢の分はよけておきます」
「わぁ、ありがとうございます。楽しみ! 今度はパンケーキを作ろうと思いまして……」
「それは美味しそうですね」

 打ちひしがれていた俺は顔を上げた。

 …………へ?
 こむぎこぉ? ぱんけーきぃ? え? 何の話?

「先日のカカオも本当に質も良くて、上品なチョコレートが作れましたわ。一口食べただけでも、甘くて幸せな気持ちで満たされました。また売ってくださると嬉しいです」

 甘い幸せな時間って……チョコレートを作って、食べたことか!?
 
「クラリス嬢は菓子作りがお上手ですから」

 上手って……それかよっっ。

 俺は顔を空にむけ、額を手で押さえると大きく大きく息を吐いた。

 ああ、そういうことか。

 ハミルトン伯爵家は他国との貿易を手掛けている。クラリスはお菓子作りの材料を少し分けてもらってたんだな……そういうことか……そうか……本当に良かった。まだ、俺にも希望はある。

 全身の力が抜け、その場にしゃがみ込みそうになる。一方、クラリスがパーティールームに戻りましょうかと歩き出すと、突然、バードがクラリスの手を取り、素早く手の甲にキスをした。

「踊れなかったのですから、これくらいはお許しください。僕との結婚は考えていただけましたか?」

 えっ?
 
 ええっ?

 えぇぇぇぇ!?
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