鈍感令嬢に恋した時から俺の苦労は始まった

桜乃

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あれから……

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 俺は唇を重ねながら長年の想いが叶った喜びと幸せを噛み締めていた……が。


 扉のノックの音に俺達はビクゥゥと大きく身体を震わせ、慌てて離れる。

「なんだ?」

 俺が少し不機嫌そうに声を出すと、扉のむこうから躊躇している様子のナクサスが用件を話す。

「アルフォント家から早馬がきました。ミカエル様が怪我をされたそうです」

 クラリスが「えっ!?」と驚いて立ち上がり、心配そうにオロオロし始めたが、俺は、またか……と顔をしかめた。

 前回は寝込んだと大騒ぎして、微熱だったじゃないか……今回は怪我って……そして、次のナクサスの台詞も予想がつく。

「シトリン家からも使いがきてます。今すぐ大事な話があるからこちらにいらっしゃるとの事です」

 はい、的中。
 ……うん。それも、たぶんたいした話じゃないよね?

「あ、ぴーちゃん……」

 いつの間にかクラリスの肩にレモン色の小鳥がとまっていた。

 ぴーちゃんとは、ザラがクラリスとの連絡用にと魔法で作り出した伝書鳩みたいなもんで……んなもん作るなよ!

「クラリス、アタラシイペンダントヲワタスカラ、イマスグ、シツムシツニキナサイッテ」

 ぴーがさえずる……げっ、また、新しい魔法道具を作ったのかっ!? あいつの魔法道具はクラリスが見てない所で攻撃を仕掛けてくるんだよな……
 この間なんか、クラリスがよそ見をしている間に指輪から雷が放たれ、危うく、俺、丸焦げになるところだったんだぞ? これ以上兵器をもたせるの止めてくれ。

 俺がげんなりしていると、ぴーと目が合い、ぴーはパタパタ俺の肩に飛んできて、クラリスには聞こえないような小さな声で「アホオウジ、テヲダスナ」とさえずる……ホント、お前、ザラそっくりだな。

「ああ、それと、今、連絡が入りました。エドワード様が今すぐ鍛錬を始めるので集合するようにとの事です……」

 なんだこの邪魔の数々は……恋人同士の甘い時間を邪魔するなぁぁぁぁ。

「アルベルト様、私、ミカエルのところに行きますわ。怪我をしたって……心配だわ。ザラ様には事情を話してきますわね。では、失礼します」

 クラリスはペコリと頭を下げると、俺の返事を待たずして急いで部屋から出ていった……

 俺は遠くを見つめ、思う。

 ミカエルの怪我……かすり傷だぞ……きっと。
 
 ぴーはクラリスの後を追い、部屋を出る際に俺の方を向いて「ヤーイヤーイ、フラレテヤンノ、バーカ」とさえずり……お前、ザラより口悪くないかっ!? 焼き鳥にするぞっ。

 俺の思考を敏感に感じ取ったのか「クラリスゥ、オウジガイジメルゥゥ」と嘘泣きしながら、パタパタとクラリスを追いかける。

 おい、まて、クラリスにチクるなっ。

 怒涛のように邪魔が入り、結果、今日もクラリスとすごすことができなかった。この調子で結婚しても毎日引き離されるんじゃ……俺の頭に恐ろしい考えがよぎってしまう……いやいや、さすがに結婚したら、諦めるだろ。諦めて。諦めるよね?諦めるかなぁ。諦めてください……
 
 はぁ……
 さて、俺も行くか……

 ため息をつきながら、俺は準備を始める。まずはエドワードのところに行って……ジェスターと会って……

 ……いつになったら、俺はクラリスとゆっくりできるのだろうか……
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