上 下
34 / 64
遭逢 ―ソウホウ―

3

しおりを挟む

 我が国は魔法をむやみに使うことを禁じている。

 治療魔法と魔法の鍛錬時、国王が許可した時、人命にかかわる時のみ魔法の使用が許されているが、王族と国王の許可を得た数名の上級魔道士のみ魔法を常時使うことができた。

 そして、僕は国王の許可を得た者に属される。ただし大鎌を顕現している死神の時だけ。なので、魔法使用時は大鎌を顕現させる必要があった。

 悪ガキどもに教育が必要だなと思いながら、腕の中にいる子猫に目をやる。

 想像より小さかった子猫は震えながらオレンジの目を釣り上げ、シャーシャーと威嚇をしていた。バタバタ前足を動かし、僕の手の甲を小さな爪で引っ掻く。僕の手に3本の傷ができ、ジワッと血が滲み出した。

 怖くて仕方なかったんだろう。人間にいきなり捕まえられ、乱暴に扱われたんだ。

「大丈夫だよ。もう怖くはない」

 できるだけ優しい口調で話しかけたが、子猫の威嚇と震えは止まらず、僕は小さく溜息をつく。

 人間に比べ、動物は勘が鋭い。僕の魂を刈る力を本能で感じ取り、警戒しているのだろう。生き物の根源は魂。その魂を刈る化け物に恐怖を抱くのはごく自然な反応だ。

 早く化け物ぼくの手の中から解放してあげたいのだが、ここに放してまた悪ガキどもに捕まる心配もあり、ほっとけない。誰かしっかりした人に預けられたらいいのだが……どうしたもんかと僕が思い悩んでいると背後に人の気配がした。

「すみません」

 警戒しつつ振り返ると、ブラウンの長い髪を一つにまとめた僕と同じ年齢くらいの女の子が立っている。服装からして、たぶん町の住人……が、何かひっかかる少女だった。
しおりを挟む

処理中です...