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邂逅 ―カイコウ―
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しおりを挟む応接室に戻り、3人でお茶を飲み始めた。
2人で話がしたいな……
クラリスが来てから、ミカエルのソワソワが止まらない。早くこの状況を終わらせたいみたいだ。僕はクスリと笑う。
「そうだ、ミカエル。アルフォント家の図書室の本を借りたいのだけど」
アルフォント家の蔵書は王宮に匹敵すると言われている。適当に題名をあげても所有をしているはず。
10冊以上の題名を伝えると、ミカエルは一瞬眉根を寄せ、不愉快そうな目をしたが、すぐにニコリと笑顔を向けた。
「今度、シトリン家に届けるよ」
「あら? せっかく我が家まで来ていただいたのだから、今日お貸しすれば?」
クラリスに屈託なく言われ、ゔっと口ごもるミカエル。
「でも、義姉さまとジェスターは初対面だし……」
「大丈夫よ。気を使ってくれてありがとう、ミカエル」
まぁ、たぶん、ミカエルは気を使ったわけではないが。
しばらく黙り込み、少し考え込むも、観念したようにミカエルは小さく息を吐いた。
「……わかった……すぐ、帰ってくるからね! すぐ!!」
スクッと立ち上がり、僕に言い放つと嫌そうに……本当に嫌そうに部屋から出ていくミカエルに苦笑してしまう。
やっと2人っきりになり、紅茶を飲んでいたクラリスに僕は微笑んだ。
ああ、彼女が目の前にいるなんて夢のようだ。
「あの……僕のこと、覚えてますか?」
「えっ?」
クラリスは紅茶を飲む手をを止め、きょとんとする。
無理もない。町の住人になりきる服装や髪型だったし、眼鏡も外していたから。
僕は眼鏡を取り、にっこり笑った。
「ハンカチ、ありがとうございました」
……
……
……
「あっ!!」
沈黙の後、彼女はぱぁぁと頬に紅葉を散らす。
覚えていてくれた!
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