1番近くて、1番遠い……僕は義姉に恋をする

桜乃

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お見舞いに……

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 いつまでも現実逃避しているわけにもいかないので、視線を戻し、きょとんとしている義姉さまをまじまじ見るが、婚約に対しての感情が全く読み取れず、僕は肩をすくめた。

「そうだ。ジェスターが義姉さまのお見舞いに来たいって。どうする?」

 1番気になっている婚約の事を、はっきり義姉さまの口から聞くには勇気と覚悟が少し足らず、とりあえず、ジェスターの件を伝え、自分の不安を誤魔化ごまかしてしまう。

「そうなの? お見舞いなんて大袈裟……」

 義姉さまはボソリとつぶやくと考え込んだ。

 そうだよね。いくら友人と言えど、昨日、落馬したわけだし、今日はのんびりすごし……
 
「でも、ぜひ、来ていただいて」
「うん、だよね、断る…………えっ?」

 てっきり断ると思っていた僕は、思わず義姉さまを2度見する。

 今、断る流れだったよね?

「うん、来ていただいて。暇だし。大人しくっていっても、お茶くらい飲むのは大丈夫でしょ? ミカエルも一緒にお茶会しましょ」
「う……ん、でもさ……」

 ……そんな寛いでる姿……ジェスターに見せるの?

 胸中で嫉妬心がムクムクと湧いてきて、僕は言葉を濁してしまった。
 
「えっ……ダメ……かな?」

 義姉さまが上目遣いでおずおずと聞く姿が、なんだかかわいく見える。
 僕は小さく微笑んだ。

「ダメじゃないよ。僕も一緒にお茶するしね。でも、少しきちんとした格好に着替えた方がいいかな。義姉さまは公爵家の令嬢なんだしさ」

 そんな寛いでる姿を見せるのは、僕だけにしてくれる?

 なんて本音は口には出せないけど。
 もっともらしい理由をつけて(といっても正論だし)、着替えるように勧める。

「わかったわ! ミカエル、大好き!」

 よっぽど今まで暇だったのか、義姉さまは、ぱぁと花が咲いたような満面の笑みで返事をした。

「じゃあ、ジェスターには連絡しておくよ。セリナ、急で申し訳ないけど、義姉さまの身支度とお茶会の準備お願いね。大変だったら、僕の部屋付きのメイドを手伝いに出すから」

 僕はパッと目を逸らし、そばに控えていた義姉さま付き侍女のセリナに準備を頼み、義姉さまには早口で念を押す。
 
「義姉さま、くれぐれも無理しちゃダメだからね。じゃあ、後でね」

 ジェスターに返事を書いてくると言いながら、顔を見られないよう、さっさと義姉さまの部屋を出る。

 自室に向かいながら、左手で口を隠し、頭の中で同じ言葉が繰り返された。


 ミカエル、大好きって……


 わかってる。わかってる。わかってる。
 その言葉に特別な意味はない。
 わかってるってば!
 わかってるけど……
 
 頭では冷静に考えつつも、僕は口元が緩むのを、どうしても、どうしても止めることができなかった。

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