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男爵が……
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しおりを挟む「先程、示談が成立した。と言いましたよね? では、これですべて解決では?」
「いや、そうもいかない。示談には多額のお金が必要だ。元々、借金のあったシーメス家に払えるわけもなく……領地を手放すそうだ」
「……没落……するんですね」
領地を手放すことを貴族の間では没落と言う。
所領の土地から得た収入の一部を国庫に納める責が果たせなくなり、没落貴族の烙印を押されてしまうからだ。
没落した貴族は中途半端な立場になってしまう。
貴族の数に入れられず、庶民になるのはプライドが許さず。
領地だけに頼らなくてもいいいよう、他の事業も展開し、別の収入源を確保していれば、やり直せる事もあるのだけど……シーメス家はその対策もしていなかったらしい。
「では、被害者のドラッキド子爵に領地を渡すと?」
「いや、ドラッキド子爵は領地を断った」
「……領地だけでは示談金は足りない? たしかにシーメス家の領地はさほど大きくはないですけど……」
「これがシーメス家の領地の内情だ……全て、調べ終わったら、ミカエルに伝えようと思ってたんだが」
「お気遣いありがとうございます」
どことなく言い辛そうな様子の義父さまから調査書を受け取り、目を見張ってしまった。
なんだ、この領地内情は……領民達の生活水準が酷すぎる……
こんな土地じゃドラッキド子爵もいらないと言うだろう。
いや、それどころか、売るのだって困難。
いくらお金があっても、負債になり得る領地にお金を出すなんて馬鹿げている。
「こ……れは……酷すぎですね」
「畑も荒れ果て作物が採れないらしい」
「そう……ですか」
さい……あく、だな。
「示談金を支払うなんて、シーメス男爵には到底無理だと踏んだドラッキド子爵は妥協案を出してきた」
妥協案と聞いて、少しホッとする。
妥協と言うからには、男爵がギリギリ対応できる内容だろう。
縁は切ったとはいえ、僕がシーメス男爵の息子である事は社交界でも有名な話。アルフォント家には迷惑かけたくない。
シーメス家だけで丸く収めて欲しい。
「妥協案を出してもらえて、良かったですね。その妥協案とはなんですか?」
僕の質問に義父さまは少し間を置き、僕の目をじっと見ながら口を開く。
「爵位返上だ」
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