1番近くて、1番遠い……僕は義姉に恋をする

桜乃

文字の大きさ
133 / 298
蜂蜜を……

3

しおりを挟む

 僕が今日の出来事を頭の中で整理していると、扉を叩く音が聞こえた。

「ミカエル、いる?」

 ノックの音と一緒に聞こえた義姉さまの声に、今日一日の疲れが吹っ飛びそうなほどの嬉しい気持ちを抑えながら「どうぞ」と返事をする。

「ふふっ、ただいま」
「おかえり」

 義姉さまは嬉しそうに部屋に入ると、ちょこんと僕の前の椅子に座り、大事そうに持っていた黄金色こがねいろの小瓶を机の上に置いた。

「はい。これ、今日、試食してきた蜂蜜。ミカエルの分ももらってきたの」

 僕はその小瓶を手に取り、まじまじと見る。
 
 色、艶、ともに極上。

 窓辺に立ち、光に当てるときらきらと光る金色の輝きに、うっとりするほどの美しさを感じる。

 この蜂蜜は文句のつけようのない良い品だけど、トーマスの言っていた通り、売る相手を選ぶな。だからといって、わざわざ、こちらから価値を下げるのはもったいない。

「綺麗だね。不純物も入ってないし。後で僕もいただくよ」
「早く食べてみてね。私、パンケーキ作ろうか?」

 義姉さまは素晴らしい蜂蜜と出会ったワクワクが止まらないらしく、今すぐ調理場に行ってしまいそうなほどの勢いで身を乗り出した。
 我が家にも菓子職人はいるのだから、頼めばいいものを自ら作りにいくという発想が義姉さまらしくて、僕は苦笑する。

「うん、その時はお願い」

 瓶を開け、顔を近づけると、美しい花を思わせる豊かな香りが鼻腔びこうをくすぐる。
 
 ふぅん……深みもあり、上品な甘い香り。
 義姉さまが興奮するのもわかるかも。
 ハルダミティアル王国にしか咲かないメラルの花の蜂蜜だと資料に書いてあったな。
 
「早速、新商品を考えなきゃ」
「トーマスからも報告受けたよ。蜂蜜の価値を更に高めた売り方をしたいんだけど、なにかいい案ある?」

 義姉さまは「うーん……」とちょっと考え、ボソリと言葉を発した。

「数量限定……かな」
「数量限定?」
「そう、数量限定予約制。予約しないとどんなにお金を出しても買えないの」
「へぇ……面白いね」

 お金を出しても買えないお菓子……たしかに話題になりそうだ。

「ふふ、よく使われてる手法だったけどね……前世では」
「え? ゼンセ?」
「ううん、なんでもないわ。これから、いろいろ案を考えていかなきゃね! あ、そういえばね、今度、一緒にハルダミティアル王国に行きませんかって誘われたのよ、バード様に」
「そうなんだ。それで?」

 義姉さまの口から旅行の話が出て、僕はニコニコと笑いかけながら、次の言葉を促す。

「せっかく、誘ってくださったんだもん、行きましょうよ! ミカエルの仕事も調整してね。楽しみね!」

 弾んだ声で話す義姉さまを見つめながら、僕はこっそりほくそ笑んでしまう。

 ほらね? 大丈夫だったでしょ?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

処理中です...