1番近くて、1番遠い……僕は義姉に恋をする

桜乃

文字の大きさ
259 / 298
求婚を…… ~クラリス視点~

しおりを挟む

 私は机に置いてあった商品企画の書類の上で、頬杖をついていた。

 仕事、やる気にならないなぁ。

 あの夜会のミカエルとオリアーナ様のキスが頭から離れず、ぜんぜん集中できない。

 あの日。

 天兄に泣きじゃくる私を雪兄が迎えに来てくれた。

「そんな顔じゃ夜会に戻れないだろ? 一旦、僕の執務室においで。なんなら僕がアルフォント家に送ってあげるから」
「……でも」

 ミカエルが心配しちゃう……よね。
 でも、ミカエルとどんな顔して会えばいい?

「ミカエルには言っておくよ」

 気持ちを察してくれたのか、雪兄はふわりと私の頭に手を乗せ、微笑んだ。鼻をすすり、コクンと頷くと天兄がおかしそうに笑う。

「公爵令嬢なのに鼻が真っ赤だぞ!」
「う、うるさいなぁ」

 天兄のいつもの茶々ちゃちゃが大泣きしてしまった私の羞恥心を少し和らげる。

 本当にお兄ちゃん達は私の扱いを良く知ってるんだから。

 私は涙を指で拭いながら、少しだけ笑った。


 執務室に着くと、雪兄は魔法でお湯を沸かし、いつものミルクティーを手際良く淹れてくれる。

 ティーポットから注がれる紅茶の湯気をぼんやり眺めた。ミルクティーを一口飲み、胸に広がるじんわりとした温かさに私の涙腺は再び緩んでしまう。

「美咲、大丈夫だから」

 何を思って雪兄が、大丈夫だと言ったのかはわからない。でも、その言葉は私を落ち着かせてくれた。

 大丈夫、大丈夫。
 ミカエルの隣にいるのは私じゃない。
 でも、ちゃんと私は笑顔でいられるよね。

「雪兄……ありがと……」

 私がポツリとつぶやくと「泣き虫なのはいつもの事だろ」と雪兄が笑う。

 もしかして、天兄も雪兄も私が泣いた理由を知ってるのかな……

「あのね……もう大丈夫」
「そうか。なにかあったら言うんだぞ。美咲が決めたのなら、僕も兄さんも反対はしない……邪魔はするが」
「邪魔はするんだっ」

 私は思わずぷっと吹き出した。

 やっぱり、お兄ちゃん達にはお見通しだったんだなぁ。

「当たり前だろ。かわいい妹なんだから」

 ふっと笑った雪兄は右手の人差し指を私の顔の前で振る。泣き腫らしたパンパンの顔は、瞬く間に元に戻った。

「あ、ありがとう……」
「あんな顔で僕の執務室から出て行かれたら、変な噂が立つ」

 いつも通りの抑揚がない口調に戻った雪兄に、近寄りがたいと言われているザラ様が令嬢を泣かせたと、王宮中の噂になっているところを想像しては、私はお腹を抱えて笑ってしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

処理中です...