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求婚を…… ~クラリス視点~
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しおりを挟む私は机に置いてあった商品企画の書類の上で、頬杖をついていた。
仕事、やる気にならないなぁ。
あの夜会のミカエルとオリアーナ様のキスが頭から離れず、ぜんぜん集中できない。
あの日。
天兄に泣きじゃくる私を雪兄が迎えに来てくれた。
「そんな顔じゃ夜会に戻れないだろ? 一旦、僕の執務室においで。なんなら僕がアルフォント家に送ってあげるから」
「……でも」
ミカエルが心配しちゃう……よね。
でも、ミカエルとどんな顔して会えばいい?
「ミカエルには言っておくよ」
気持ちを察してくれたのか、雪兄はふわりと私の頭に手を乗せ、微笑んだ。鼻をすすり、コクンと頷くと天兄がおかしそうに笑う。
「公爵令嬢なのに鼻が真っ赤だぞ!」
「う、うるさいなぁ」
天兄のいつもの茶々が大泣きしてしまった私の羞恥心を少し和らげる。
本当にお兄ちゃん達は私の扱いを良く知ってるんだから。
私は涙を指で拭いながら、少しだけ笑った。
執務室に着くと、雪兄は魔法でお湯を沸かし、いつものミルクティーを手際良く淹れてくれる。
ティーポットから注がれる紅茶の湯気をぼんやり眺めた。ミルクティーを一口飲み、胸に広がるじんわりとした温かさに私の涙腺は再び緩んでしまう。
「美咲、大丈夫だから」
何を思って雪兄が、大丈夫だと言ったのかはわからない。でも、その言葉は私を落ち着かせてくれた。
大丈夫、大丈夫。
ミカエルの隣にいるのは私じゃない。
でも、ちゃんと私は笑顔でいられるよね。
「雪兄……ありがと……」
私がポツリとつぶやくと「泣き虫なのはいつもの事だろ」と雪兄が笑う。
もしかして、天兄も雪兄も私が泣いた理由を知ってるのかな……
「あのね……もう大丈夫」
「そうか。なにかあったら言うんだぞ。美咲が決めたのなら、僕も兄さんも反対はしない……邪魔はするが」
「邪魔はするんだっ」
私は思わずぷっと吹き出した。
やっぱり、お兄ちゃん達にはお見通しだったんだなぁ。
「当たり前だろ。かわいい妹なんだから」
ふっと笑った雪兄は右手の人差し指を私の顔の前で振る。泣き腫らしたパンパンの顔は、瞬く間に元に戻った。
「あ、ありがとう……」
「あんな顔で僕の執務室から出て行かれたら、変な噂が立つ」
いつも通りの抑揚がない口調に戻った雪兄に、近寄りがたいと言われているあのザラ様が令嬢を泣かせたと、王宮中の噂になっているところを想像しては、私はお腹を抱えて笑ってしまった。
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