1番近くて、1番遠い……僕は義姉に恋をする

桜乃

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雷の夜に……

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 目の前が真っ暗になった。

 足元がガラガラと崩れ落ちる錯覚に陥り、目眩で義姉さまの姿がグニャリと歪む。

「なんでっ!!!」

 僕は悲痛に満ちた声を部屋に響かせた。

「だって……アルベルト様と結婚した方がミカエルにとっても……」
「僕の為に!?」
「アルフォント家の跡継ぎのミカエルの役に立つもん! 私、お姉ちゃんだもん!」

 自分に言い聞かせるかのように泣きそうな声で叫ぶ義姉さまに、僕の胸は張り裂けそうになる。

「だから? 僕のお姉ちゃんだからアルベルトと結婚するの? アルフォント家は……僕は王家の力なんていらない。そのために子供の頃から頑張ってきた」

 悔しい。
 僕が何の為に頑張ってきたと思うの……全ては義姉さまの為なのに!

「わかってるよっ! ミカエルが頑張ってきた事は! でも、私がアルベルト様と結婚したら、少しは楽になるじゃない!」
「楽になんかならなくていい! 僕の為に好きでもないアルベルトと結婚なんて……」

 下唇を固く噛み締めた。

 悔しくて悔しくて堪らない。義姉さまが僕の手の届かない女性ひとになってしまう。

「……アルベルト様はいい人よ……きっと、好きに」
「知ってるよっ!! アルベルトがいい奴なのは、僕が1番知ってるよ!」

 僕は声の限り叫ぶ。

 知ってるよ……アルベルトあいつがいい奴なのは……

 心のどこかで、もし僕の恋が叶わぬのなら、義姉さまにはアルベルトかジェスターと一緒になって欲しいと思っていた。あの2人なら、僕の大切な大切な女性を託すに相応しいから。

 でも、それは、義姉さまが2人のどちらかに恋した場合だ。

 好きでもないのにアルフォント家……ひいては僕の為にアルベルトと結婚するなんて、許せない。そんなの、絶対に許せない。

 僕はアルベルトに義姉さまを渡さない。

「怒んないでよ! じゃあ、私、どうしたらいい!? どうしたらミカエルの役に立てるの? 姉として役に立てるの!?」
「僕の……僕の役に立たなくてもいいよ! 僕の姉を辞めていいよっ!!」

 思わず口から出てしまった言葉にハッとして、義姉さまを見る。姉である事を否定されたと思ったのか、悲しげに顔を曇らせていた。

 違う、そうじゃない! そうじゃないんだよっ!

「ちがっ」
「ごめんなさい……部屋に……戻るね」

 僕の声を遮る義姉さまの小さな声は明らかに涙声で……


 思考が止まった僕の頭の中で、パリンッと音を立てて何かが割れる。


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