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エピローグ
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あれから3ヶ月が経った。
僕と義姉さまは世間的には義姉弟のまま。
僕達は久しぶりの休みを利用して、あの湖畔の別宅に来ていた。
時は夕刻。暦上は春とはいえ、まだ冬が去りきっていない季節である今の時期は、日が沈むのも早い。
「湖、見に行きましょ」
「寒くない?」
「大丈夫よ」
「ダメ。風邪引くでしょ。これ羽織って」
僕は薄手のショールをフワッと義姉さまに被せる。
「ありがと」
義姉さまはショールを片手でキュッと握り、ふふっと穏やかな笑みをむけた。
湖のそばに並んで腰をおろしたが、沈黙したまま時間がすぎていく。だんだん辺りが暗くなり、僕は黙ってランプに火を灯した。
ちらりちらりと輝きだした星は空が暗闇に包まれた瞬間、一斉に煌めきだす。湖面に輝く星たちは、あの時と変わらず美しい。
「綺麗ね……」
「……うん」
ポツリとつぶやいた義姉さまに返事をしながら、1人で湖面を見つめていたあの日の光景を思い出す。
手が届くのに、触れたら崩れてしまう湖面の星。
僕は……触れて…………
隣に座っていた義姉さまが少し前のめりになり、ぼんやりしていた僕の顔を笑いながら覗き込んだ。
「なに考えてるの?」
「大した事じゃないよ」
僕の目を見て、クスッと笑う義姉さまの近さに戸惑った僕は、思わずプイッと顔を逸らす。
「あ、あのさ……僕にはいいけど……あんまり他の男の顔……覗き込まないでよね…………僕が……嫉妬する」
火が出るんじゃないかと思うほど顔を熱くしながら、しどろもどろ話すと義姉さまはかぁぁっと赤くなり、スクッと立ち上がった。
「あ、うん。わ、わかったわ……あのね、いい事、思いついたのっ」
僕の返事も待たずにタタタッと湖に走っていく予測不能な行動に苦笑しながら、ランプを片手にあとをついていく。
「どうしたの?」
しゃがんでヘヘッと笑い、義姉さまは湖の水を両手で掬った。
「ほら! 見て! 星を捕まえたわ」
自分の手の中の湖水に映った星を自慢げに僕に見せた。
星が1つキラリと光る。
僕は目を見開き、次の瞬間、無邪気に笑う義姉さまを強く強く抱きしめていた。
ああ……湖面の星は手に入れられた!
僕の手を引き、あの屋敷から連れ出してくれた時から、太陽のように笑ってくれた時から、僕は義姉さまだけを求めていた。
「痛いよ……ミカエル……」
小さな小さなつぶやきに、少しだけ力を緩め、義姉さまの耳元に口を寄せる。
「結婚しよう…………クラリス」
耳まで紅潮させ、うつむいたまま、小さくコクンと頷く目の前の愛する人がたまらなく愛おしい。下を向いたままの頬にそっと触れ、おでこにキスをした。
真っ赤な顔を恥ずかしそうにゆっくり上げ、僕を見つめるブルーの瞳。
唇を重ね、僕は目を閉じた。
泣きそうになる。
出会ったあの日に恋した義姉が、義弟の腕の中にいる奇跡に。
《fin》
僕と義姉さまは世間的には義姉弟のまま。
僕達は久しぶりの休みを利用して、あの湖畔の別宅に来ていた。
時は夕刻。暦上は春とはいえ、まだ冬が去りきっていない季節である今の時期は、日が沈むのも早い。
「湖、見に行きましょ」
「寒くない?」
「大丈夫よ」
「ダメ。風邪引くでしょ。これ羽織って」
僕は薄手のショールをフワッと義姉さまに被せる。
「ありがと」
義姉さまはショールを片手でキュッと握り、ふふっと穏やかな笑みをむけた。
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ちらりちらりと輝きだした星は空が暗闇に包まれた瞬間、一斉に煌めきだす。湖面に輝く星たちは、あの時と変わらず美しい。
「綺麗ね……」
「……うん」
ポツリとつぶやいた義姉さまに返事をしながら、1人で湖面を見つめていたあの日の光景を思い出す。
手が届くのに、触れたら崩れてしまう湖面の星。
僕は……触れて…………
隣に座っていた義姉さまが少し前のめりになり、ぼんやりしていた僕の顔を笑いながら覗き込んだ。
「なに考えてるの?」
「大した事じゃないよ」
僕の目を見て、クスッと笑う義姉さまの近さに戸惑った僕は、思わずプイッと顔を逸らす。
「あ、あのさ……僕にはいいけど……あんまり他の男の顔……覗き込まないでよね…………僕が……嫉妬する」
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「あ、うん。わ、わかったわ……あのね、いい事、思いついたのっ」
僕の返事も待たずにタタタッと湖に走っていく予測不能な行動に苦笑しながら、ランプを片手にあとをついていく。
「どうしたの?」
しゃがんでヘヘッと笑い、義姉さまは湖の水を両手で掬った。
「ほら! 見て! 星を捕まえたわ」
自分の手の中の湖水に映った星を自慢げに僕に見せた。
星が1つキラリと光る。
僕は目を見開き、次の瞬間、無邪気に笑う義姉さまを強く強く抱きしめていた。
ああ……湖面の星は手に入れられた!
僕の手を引き、あの屋敷から連れ出してくれた時から、太陽のように笑ってくれた時から、僕は義姉さまだけを求めていた。
「痛いよ……ミカエル……」
小さな小さなつぶやきに、少しだけ力を緩め、義姉さまの耳元に口を寄せる。
「結婚しよう…………クラリス」
耳まで紅潮させ、うつむいたまま、小さくコクンと頷く目の前の愛する人がたまらなく愛おしい。下を向いたままの頬にそっと触れ、おでこにキスをした。
真っ赤な顔を恥ずかしそうにゆっくり上げ、僕を見つめるブルーの瞳。
唇を重ね、僕は目を閉じた。
泣きそうになる。
出会ったあの日に恋した義姉が、義弟の腕の中にいる奇跡に。
《fin》
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