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学園編~四学年~
16.鍛錬は一旦休み
しおりを挟むジリリリリリ、と部屋中に鳴り響く目覚ましで私は目を覚ます。
「……、…………」
バクバクと心臓の音が響くようだった。
嫌な夢でも見たかのように、不快な目覚めをした私は視界に入った自室の天井を見るなり安堵した。
どんな夢を見たのかは忘れてしまった。
でもとても嫌な夢。
鳴り続ける目覚ましを止めてゆっくりベッドから体を起こすと、寝間着越しに外気に触れた肌が寒さを覚える。
鏡を見ると額に前髪が張り付き、凄く寝汗をかいていたことがわかった。
「…すっごい嫌な夢だったのね」
こんな朝を迎えたことなんて生きてきて今まで一度もなかったために、覚えていない夢の内容が気になったが
「ヤッバ!」
迫る時間に私は慌てて寝間着を脱ぎ捨てる。
レルリラとの朝のトレーニングにはいつもコップ一杯の水を飲んでから向かっている為、支度に時間はかからない。
だけど今日は気になってしまうくらいの寝汗をかいているだけに、軽くでもシャワーを浴びた方がいいだろうと思った。
だからいつもより支度に時間がかかり、待ち合わせ迄の時間が迫っている。
そして急いでいるくせにシャワーを浴びるならと、いつもの流れで手に石鹸をとり全身を洗ってしまうのも仕方ないことだ。
(これからはもう少し早く目覚ましをセットしておこう!)
私は早々にシャワーを済ませ、濡れた状態でレルリラが待つ一階へと向かった。
この頃には夢のことなど忘れ、待ち呆けているだろうレルリラが怒っていないことを祈った。
□
「ごめん!レルリラお待たせ!」
やっぱりロビーで待っていたレルリラに私は駆け寄った。
といってもレルリラはいつも時間より前に待機している。
一体いつもどれほど前についているのかと前に聞いたことはあるが、毎回「そんなに待っていない」と平気な顔して答えている者だから追求したことはない。
だけど、今日はいつも以上に待たせてしまったことを自分でもわかっている為、ごめんと謝った。
「サラ、お前なんかあったのか?」
疑うレルリラの眼差しに私を咎めるつもりは含まれていないだろうが、それでも私は戸惑ってしまう。
「え、な、なんかって、…ああ髪?ちょっと夢見が悪かったみたいで汗かいちゃって、で、シャワー浴びてきたの。それで遅くなった。ごめん」
素直に理由を話すと、伸ばされるレルリラの手に私は逃げることなく目で追った。
以前の授業で短くなった私の髪の毛に触れたレルリラは「今日はトレーニングをしないでおこう」と告げる。
「え、なんで?どうしたの?」
「顔色が悪い」
「そう?鏡で見たけど特に変わらないと思ったけど?」
シャワーを浴びて血行がよくなったからそう感じたのかもしれないけど、自分で自分の顔をみて顔色が悪いと思わなかったのは本当だ。
まぁ、急いでいたからちゃんと見たかと聞かれたら素直に頷けないけど。
「シャワーを浴びなければ、と思うくらい汗をかいたんだろ。
お前に自覚がなくても、相当疲れている筈だ」
「でも、ただの寝汗よ?」
そう答えた私にレルリラは大きく息をはきだした。
そこまで大きなため息をつかなくても…。
そしてくるくると指先で私の髪を弄っていた手を止めて、私の頭に触れる。
ぶわっと温かい風が沸き起こり、濡れていた水分が一気に蒸発した。
思わず手で髪の毛を確かめると、綺麗に乾いている。
もっというと、いつもよりしっとりとしているように感じる。
え、なに、どうやったの?
火魔法の熱と風魔法を組み合わせた?
髪を一瞬で乾かす程度に微調整した?
え?凄すぎじゃない?
私も属性魔法で髪から水分抜けばいいとじゃんと思ってやったことあるけど、水分を抜きすぎたりで成功率は低いからそのまま来たのに。
「夢の中で何をしていたかは知らないが、汗をかくほどに脳がずっと指令を出していたということだろう。
脳が休めてない以上、お前が感じているよりも疲労が残っている筈だ。
それに今日から学園外での授業が始まる。トレーニングで疲労を積み重ねるよりも、少しでも体力を回復させた方がいい」
話を終わらせたレルリラは食堂に向かう。
どうやら本当に朝のトレーニングを行わないと決めたらしい。
なら私も朝食を食べる為にレルリラの後を追うことに決める。
いつも食事に時間をかけることはないから、今日はゆっくり味わおう。
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