恋愛初心者の恋の行方

あおくん

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学園編~四学年~

22.冒険者になっても安心②

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「これで今日のお昼と夜の食料はゲットだね!」

「だな!」

歯を輝かせる私とシェイリンについていけていないのか、おろおろとリノスが戸惑う様子を見せる。
ちなみにリノスに弱と指定したのは、威力の高い魔法を発動して近くにいた動物を逃がさない為だ。
動物は魔法の音に驚き逃げる習性がある。
だからリノスには最初から威力を指定したまでである。
ちなみにシェイリンに鳥と熊とどっちかを選択させたのは、ちょうど近くにいたからだ。
どっちを食料として確保するか。それを尋ねていた。

「え、コレを食べるんですの?!」

「え、そうだけど?」

「えええええええええええ!?」

驚愕するリノスに私は首をひねる。
目の前にいるのはアウルベアによく似た背格好の熊だ。
本当は討伐したついでにアウルベアをと思っているのだけど、エリア内にいる魔物は全て幻影魔法で作られている為、討伐してしまうと消えてしまう。
だから探知魔法で察知した動物っぽい気配に私はこれは逃がしてはいけないと思っただけ。

「貴族って毎日ステーキ食べているイメージだったけど、草食系だった?」

ちなみにこれは勿論イメージだ。
学園でも寮でも、食堂では肉だけではなく魚料理や麺料理、と沢山の種類の料理が出される。

「い、いいえ…毎日ではありませんが…ステーキは好んで食します」

「じゃあ大丈夫よ。肉だもの。しかも普通の動物のお肉って私食べたことないんだよね。
今まで魔物のお肉しか食べたことなかったから食べてみたかったの」

「で、ですが…」

渋るリノスに私は首を傾げる。

「今までは携帯食料があったけど、今回からはなくなったのはわかってるよね。
それは魔物と遭遇しないように隠れたりするためじゃないと思うの。
校外授業が出来なくなった以上、先生が言いたいのは一日ここで過ごすために討伐以外も行いなさいって事なんだと思う。
野営に備えて私達は調理授業やってきたよね。最初はお菓子作りだったけれど、今は違う。
食べられる野草を教えてもらったり、調味料変わりとなる木の実とか教えてもらった。
自分たちで調達して調理する。これが学園外で学ぶことが出来なくなった代わりの今回からの授業に隠れた裏メニューなんだと思うのよ。
……それに携帯食料は栄養面だけを考えているからあまり美味しくないのよね…」

味に関しては同じく思っているのか、リノスも何も言わない。

「し、しかし…捌けるのですか?」

リノスはちらりと目線を倒れた熊に向けながら私達に問う。

「「うん(ああ)」」

迷うことなく断言した私達にリノスの顔は引き攣った。
私は熊に近づき腹を裂くために魔法を使う。
内臓取らないとね。

「あ、俺がいくら男爵家だからって実家はそこまで落ちぶれてないからな」

「……そうなんですか?」

「当たり前だ!俺が捌けるようになったのは水属性を担当していたアラ先生の指導によるものだ!」

そうだろ!?と同意を求めるシェイリンに私は頷いた。

「そうよ。……本当アラ先生の授業は濃かった……色々と」

「ああ…まさか授業中に捌き方をマスターさせられるとは思わなかったからな」

「ええ……」

思い出すのはアラさんの真面目で真剣な眼差しだ。

『これからあなたたちは学園の外に出て、実際に騎士団の方と共に実戦を体験すると思うわ。
私は今ギルド職員として働いていますが、それ以前は冒険者として活動していたの。
この学園に通うあなたたちから冒険者を目指す人は限りなく少ないと思うけど、それでも人生の先輩として、そして先生として最後に教えておきたいことがあります』

真面目な表情、ふざけることのない口調。
何を教えてくれるのだろうと、私含めて生徒が前のめりになった。
そして続けられた言葉はこうだ。

『これからあなたたちには捌き方を教えます』

いつかの剣のようにぬるっと凍らされた動物やら魔物やらの死体をどこからか取り出したアラさんは、驚いて声を上げる生徒に構わず続ける。

『知っている方もいるかもしれないけど、魔物や動物を仕留めた際、血抜きを想像するかと思うわ。
だけどあなたたちは水属性。そんなことをする必要はないの。仕留めた最初にすることは内臓を取り出すこと、その次に冷やすこと。血液が腐敗する原因として、血液に入り込んだ微生物があげられるからよ。微生物は25度から35度ほどの環境下になると急激に増殖し、そして微生物の発する不快な臭いで血なまぐさい肉となってしまうと言われているわ。その為仕留めた後はスピーディーに作業しなくちゃいけない。
今日は食すことを前提としていないから、既に仕留めておいた動物…勿論捌き方を教えるわけだから内臓は取っているわ。
だから私が用意したモノで、これからあなたたちには実際に捌いてもらいます』

ここからは割愛させてもらおう。

平民の私でも、お肉はお店で売られている姿しか見たことが無い。
勿論たまにお父さんが生きのいい小動物系の魔物や動物を仕留めてきた―といって、庭で捌いていたこともあるが私自身はやったことがなかった。
手伝いといっても新しい水に取り換えたりと、そういうことだけ。
そんな私でも驚愕したのだから、他の皆はどれほど衝撃的だったか。

幻影魔法だけど、魔法を使って魔物を倒したことはある。
幻影とはいえ切り付ければ血も当然流れる。
お肉だって、生きてきた中で数え切らないほど食べてきた。
でも意識が足りなかった。
命をいただいているということが、こういうことなのかと、アラさんの最後の授業でわかった。

「……本当濃かったなぁ…」

「まぁ、そのお陰で腹空かせることなく食べ物にありつけられそうだが」

私もお陰で冒険者になっても、飢え死にならなそうで安心だ。
過去を思い出しながら私とシェイリンは皮をはいで、関節をばらし、見慣れた肉の姿にしていく。
そしてリノスの魔法で火種を作ってもらい、適当に野草や木の実を細かく刻んで味付け。
お嬢様には悪いが、今日ばかりはテーブルマナーを忘れてもらって、しゃぶりついてもらった。

「…それで、話の続きなのですが……」

「ん?あ、秘策についてだね」

私とシェイリンが捌いている間しっかりと目を覆っていたリノスは見ることがなかった為、焼いたお肉を美味しそうに食しながら話をする。
討伐前に話していた内容を思い出した私は、結局秘策とやらを告げることはなかった。
伝えるのならば実際に見た方が彼女も安心するだろうと思ったからと、あとは授業に集中する為である。
食事中にも関わらず襲い掛かってくるクマやイノシシみたいな魔物を撃退し、与えられた課題である一日を過ごしてから学園へと戻ったのだった。





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