恋愛初心者の恋の行方

あおくん

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学園編~五学年~

5 魔法研究室

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私達は全くの揺れを感じることもなく、それこそあっという間と表現してもいいくらい短時間で魔法研究室に到着した。

魔法研究室は王都の外れに位置しているようで、学園のように森の中に作られた建物という印象だった。
大きなドーム状の建物がいくつも存在していて、私達は「ようこそ」と歓迎の意味ととれる看板がある建物の中へと案内された。

中に入ってみるとびっくり。
さすが魔法研究室といえるような感想が思い浮かんだ。
ドーム状の建物だった筈なのに中はまるで空の下のような光景が広がっていたのだ。
しかもお店に見せかけた様な建物もずらりと並んでいる。
まるで王都の街並みのような光景だ。
天井をじっくりと観察すれば切れ目があり室内だと分かるが、パッと見青空の下と勘違いをしてしまうだろう。

「ここは僕たちにとって住居スペースなんだ」

「住居スペース?」

「そうだよ。魔法研究室に基本お客はいないからね。
定期的に尋ねてくるのは魔道具を量産する業者の人たちだけ。
それ以外の来客は基本的にないから、本来は応接室なんて不要だと思うんだけど、流石に作らないわけにはいかないでしょ?
だからそれを作るのと合わせて、僕たちが生活上で必要となる日用品等を販売する為の空間として設けているんだ。
でもただ店を構えるにはさみしいから、王都の街並みを表現してみたんだ」

だから見慣れた街並みだったのねと私は納得する。

「ちなみに魔力測定の装置は別の建物にあるんだけど、皆にも半年の間ここで生活してもらうから、最初にココを案内することにしたんだ。
ココはね、簡単便利にいけるようにあらかじめ刻んだ魔法陣が至る場所にあるから、是非活用してね。
あと要注意なのは、一応外部の人が来て営業しているから、営業時間が設けられているってことは覚えておいて。
まぁといっても明け方以外は大体が営業してるからそんなに気にする必要はないよ」

にこりと人好きそうな笑顔を浮かべるヘルムートさんはそういうと、腕を上げ真っ直ぐを指差した。
私達は釣られるようにヘルムートさんの指先に視線を向けると、テーブルと椅子がないガゼボのような建物がみえる。

「あそこから魔力測定器のある試験室に行くことができるんだ」

楽だろ?と笑みを浮かべるヘルムートさんに私は同意した。
先生が授業の時間を少しでも多く確保するために、毎回私たちを転移させているけど、魔法研究室には私たち生徒だけで来ているのだ。
自分たちの足で移動するのは全然問題ないけど、外から見た魔法研究室はかなりの規模。迷ったらどうしようという気持ちでいっぱいだったから安心した。

そして私達は魔法陣で魔力測定の魔導具がある試験室まで移動する。







辿り着いた先はまるで運動場のような場所だった。
高い天井に、白いタイルが全面にはめられ強度がありそうだ。
そして唯一の入口に「ちょっと待っててね!」とヘルムートさんが走って向かう。
私達はその場で大人しく待った。

「……なんだか雰囲気学園みたい…」

もちろん色はこんなに真っ白ではないけど。
それでも同じような素材に居心地悪さは感じないから、むしろ安心感すらある。

そんな私の独り言を拾ったのはレルリラだ。

「試験室っていってたからな」

「ん?どういうこと?」

「まだ未完成品の魔導具をテストするんだ。なにがあってもいいよう、防御の魔法だけじゃなく、衝撃を受けても問題ないような素材で建物を作らないといけないだろ。
学園も同じように生徒が魔法暴走を起こしても二次災害が起こらないよう特別な素材で作られてるんだ」

「…へぇ、そうなんだ」

そんなことを教えてもらってると魔導具を見つけたヘルムートさんが戻って来る。
入口の近くには先に到着していたのか、ヘルムートさんと一緒に学園まで来ていた人たちもいた。
みんなそれぞれ手に魔道具とそれを設置するための折りたたみテーブルを抱え、一つ一つ設置していっている。

ヘルムートさんは私たちの近くまで駆け寄ると手招きした。

「誰でもいいよ!名前を名乗って魔力を測定していって!」

その言葉に私たちはヘルムートさんたちが設置し終えた四つの魔道具のもとに向かいながら適当に列を作る。
私は後ろの方に並んでいたから、わくわくする胸のままちらちらと前の様子を気にすると、隣の列の後ろの方、つまり私の横に並んでいたレルリラが話しかける。

「どうした?」

「どうしたもなにも、自分の魔力量がどれくらいかがわかるんだよ?」

こんなドキドキすることないわ、と興奮を交えながら答えるとレルリラはそう思っていないのか首を傾げた。
普通になんだこいつと私は思った。
瞬時に興奮していた胸のドキドキが静まり返るほどに。

現段階では人の魔力量を数値化するような魔道具は存在しない。
発売されてないだけかもしれないけれど。

私達は魔力量の大体の量は感じ取れるのだが、それは詳細には分からない。
例えば同じ大きさのりんごを2つ手渡されて「どっちが重い?」といわれても、はっきりとした答えが出せないのと一緒だ。
りんごだと重い軽い、魔力で言えば多い少ないはわかるけど、多いと多いで比べるとどちらがより多いかはわからないのだ。

だからこそ魔力量の計測ができる魔道具があること自体が素晴らしい発明だし、それを自分が試せることが嬉しいと感じるのだ。

もっと欲を言えば学園入学時の魔力値がわかれば、この五年間どれだけ魔力量を増やせることができたのかが実感できるけど、それは欲張り過ぎだよね。

そんなこんなで気持ちがわからないレルリラを放ってそわそわしていると、あっという間に自分の番になる。

「サラ・ハールです!よろしくお願いします!」

名前を名乗り「どうぞ」という言葉で魔道具に手を伸ばすと、小さな声が聞こえて思わず振り返って声の主を見た。

「……あの、どうかしました?」

そこには少し挙動不審気味なヘムルートさんがいて、不思議そうに見る私に気づくと苦笑を浮かべる。

「あ、いや、君によく似た知り合いがいてね。とても似ていたから驚いたんだ」

「私に?」

「ああ。でも君はオーレ学園の学生だろ?その子はオーレ学園には通っていないし、第一髪の色が違う。
他人の空似だから気にしないで」

「……はぁ…わかりました」

なんだか煮えきらないような気分だけど、私は気持ちを切り替えて魔道具へと手を伸ばす。

ぐんぐんと増えていく数値は四桁目に入って動きを鈍くさせた。




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