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学園編~五学年~
17 合同授業の話
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◆
再び転移された私は学園の正面入り口前まで戻っていた。
既に魔法研究室の人はいなくなっていたが、それでも先生とレルリラがいたから私はホッと安堵する。
転移された先で一人、しかも鬱蒼とした森の中というのは楽しいものではなかったからだ。
「腕を上げたな」
先生は私の方へは目を向けずにそう言った。
といっても、先生は目を瞑っていたので、私の方に顔を向けていても変な感じはするが。
それでもその言葉は私に向けられていたということは分かった。
「…見てたんですか?」
「ああ。探知魔法でサラがどんな動きをしているのか確認してたからな。
支援魔法だけじゃなくて、属性魔法の同時発動、そして無詠唱魔法ももう問題ないな」
探知魔法でそんなことまでわかるのか、と私は驚きつつ頷いた。
これが経験の差か。
「…ここでみんなの様子を見てるんですか?教室にはいかないんです?」
「お前を転移させたところ、今までの授業で使ったことが無い場所だっただろ?
あそこはな、特別な生徒の為の場所なんだ」
「特別?」
先生の言葉に私は首を傾げる。
まぁ確かに初めてのような場所だった気がする。
「ああ、お前やレルリラみたいに属性魔法を無詠唱魔法を使いつつ、一人で魔物を討伐できるような実力のある生徒が使う場所だ。
流石に初めて放り込むし、魔法研究室でどれぐらい成長したのか、その確認の為だったから魔物のレベルや数にも制限させてもらったけどな」
「じゃあ他の皆は別のところなんですか?」
「ああ」
先生は頷いて肯定した。
だけど、私の質問にこれ以上答えない様子の先生に私は眉間に皺を寄せたが、目を瞑っている先生がみているわけでもないので、再び質問する。
「…私とレルリラだけあそこに転移されたっていうのはわかりましたけど、なんで教室に戻らないでここにいるんですか?」
「疲れたからだ」
「……え?」
「疲れたからだ」
どうやら聞き間違いじゃなかったらしい。
私は先生の言葉の意味を知るためにもっと深く追求した。
「特別な場所だって言っただろ?あそこは学園の敷地内で一番遠いんだ。先生は疲れた」
「………」
その後も一人二人と戻ってきて、全員が揃う頃には空が赤く色づき始めていた。
ずっと待っているだけだと時間を持て余すからと、レルリラと一緒に魔力コントロールを鍛えていたけど、流石にお腹すいた。
「さて、最初に魔法研究室での活動ご苦労様。皆の成長を確認するために説明もなく転移させてしまったが、それでも戸惑うことなくしっかりと実力を証明してくれたことを嬉しく思う」
学園の正面玄関入り口で私たちは先生の話を聞く。
いつもは教室の中で話す印象を持っていたが、教室に戻ろうとは思えないほどに疲れているのだろうか。
それでも先生は疲れている様子も欠片も見せずに話し続けた。
「授業で習得させたいと思っていたこと、そして先生が持っていた目標は全て教え終えた。
ここからは卒業試験に向けて、お前たちの実力をもっと磨いてほしいと思っている」
「あの、具体的にはどうするのですか?」
「以前行った騎士科との合同授業だな」
「前のように騎士科とチームを組んで、ですか?」
「いや、今回は騎士科の授業に参加しつつ、騎士科の生徒との対戦だ」
ポンポンあがる質問に対し、先生は次々に答えていく。
すると一人の質問で空気が変わった。
「Bクラスとは行わないのですか?」
「やらん!!!!」
急に声を荒げる先生に、私達は驚く。
そんな私たちの様子に気付いた先生はこほんと咳払いをして気持ちを切り替えた。
「…先生はお前たち一人一人が最高の生徒だと、そう思っているんだ」
突然語り始めた先生に、私達は少し照れくさげに口端をにまにまさせたり、隠したりと様々な反応をとる。
そして誰一人先生の話を邪魔しようとはしなかった。
「だからこそ、先生はお前たちには勝ち上がってほしいんだ」
“勝ち上がる”という先生の言葉に私は前に皆と勉強会を開いた時の事を思い出す。
五年最後の卒業試験では“対戦試合”が毎年行われていると聞いた。
ということは、私達はBクラスと勝負をするということだろう。
「なのにBクラスと合同授業してしまったら、お前たちがどれぐらいの実力なのかわかってしまうだろう!?敵の戦力を知るのも大切だが、こっちの情報を教えるような真似はダメだ!!」
「…先生、騎士科の生徒とは合同授業やってもいいんですか?」
私はBクラスに対抗意識を持っている_といっても先生はBクラスの先生にだが_先生に質問した。
卒業試験に他のクラスと対戦するということは分かったが、なら何故騎士科との合同授業は許可するのかが不思議だったのだ。
だけど先生の答えは意外なものだった。
「やらんぞ。そもそも騎士科は魔法科と同じ卒業試験の内容はしないんだ」
はっきりと告げた先生に私は目を瞬いた。
目標の方向性が魔法科と騎士科では違うけど、でも卒業試験の内容まで違うとは思わなかったからだ。
でもそれも当然かもしれない。
方向性が違うのなら、その結果を確認する方法にも違いが出てくるのは当然だからだ。
「じゃあ、明日から騎士科との合同授業を始めるから、今日はもうゆっくり休め。
ちなみにお前らもやる騎士科の授業内容は魔物とは戦わないが、それでもかなりのハードコースだ。
だから明日は制服じゃなくて動きやすい服装で来ることをお勧めするぞ」
じゃあな、とさっさと学園へと戻っていく先生の後姿を、私達は戸惑った表情を見送り、そしてそのまま寮へと向かったのだった。
再び転移された私は学園の正面入り口前まで戻っていた。
既に魔法研究室の人はいなくなっていたが、それでも先生とレルリラがいたから私はホッと安堵する。
転移された先で一人、しかも鬱蒼とした森の中というのは楽しいものではなかったからだ。
「腕を上げたな」
先生は私の方へは目を向けずにそう言った。
といっても、先生は目を瞑っていたので、私の方に顔を向けていても変な感じはするが。
それでもその言葉は私に向けられていたということは分かった。
「…見てたんですか?」
「ああ。探知魔法でサラがどんな動きをしているのか確認してたからな。
支援魔法だけじゃなくて、属性魔法の同時発動、そして無詠唱魔法ももう問題ないな」
探知魔法でそんなことまでわかるのか、と私は驚きつつ頷いた。
これが経験の差か。
「…ここでみんなの様子を見てるんですか?教室にはいかないんです?」
「お前を転移させたところ、今までの授業で使ったことが無い場所だっただろ?
あそこはな、特別な生徒の為の場所なんだ」
「特別?」
先生の言葉に私は首を傾げる。
まぁ確かに初めてのような場所だった気がする。
「ああ、お前やレルリラみたいに属性魔法を無詠唱魔法を使いつつ、一人で魔物を討伐できるような実力のある生徒が使う場所だ。
流石に初めて放り込むし、魔法研究室でどれぐらい成長したのか、その確認の為だったから魔物のレベルや数にも制限させてもらったけどな」
「じゃあ他の皆は別のところなんですか?」
「ああ」
先生は頷いて肯定した。
だけど、私の質問にこれ以上答えない様子の先生に私は眉間に皺を寄せたが、目を瞑っている先生がみているわけでもないので、再び質問する。
「…私とレルリラだけあそこに転移されたっていうのはわかりましたけど、なんで教室に戻らないでここにいるんですか?」
「疲れたからだ」
「……え?」
「疲れたからだ」
どうやら聞き間違いじゃなかったらしい。
私は先生の言葉の意味を知るためにもっと深く追求した。
「特別な場所だって言っただろ?あそこは学園の敷地内で一番遠いんだ。先生は疲れた」
「………」
その後も一人二人と戻ってきて、全員が揃う頃には空が赤く色づき始めていた。
ずっと待っているだけだと時間を持て余すからと、レルリラと一緒に魔力コントロールを鍛えていたけど、流石にお腹すいた。
「さて、最初に魔法研究室での活動ご苦労様。皆の成長を確認するために説明もなく転移させてしまったが、それでも戸惑うことなくしっかりと実力を証明してくれたことを嬉しく思う」
学園の正面玄関入り口で私たちは先生の話を聞く。
いつもは教室の中で話す印象を持っていたが、教室に戻ろうとは思えないほどに疲れているのだろうか。
それでも先生は疲れている様子も欠片も見せずに話し続けた。
「授業で習得させたいと思っていたこと、そして先生が持っていた目標は全て教え終えた。
ここからは卒業試験に向けて、お前たちの実力をもっと磨いてほしいと思っている」
「あの、具体的にはどうするのですか?」
「以前行った騎士科との合同授業だな」
「前のように騎士科とチームを組んで、ですか?」
「いや、今回は騎士科の授業に参加しつつ、騎士科の生徒との対戦だ」
ポンポンあがる質問に対し、先生は次々に答えていく。
すると一人の質問で空気が変わった。
「Bクラスとは行わないのですか?」
「やらん!!!!」
急に声を荒げる先生に、私達は驚く。
そんな私たちの様子に気付いた先生はこほんと咳払いをして気持ちを切り替えた。
「…先生はお前たち一人一人が最高の生徒だと、そう思っているんだ」
突然語り始めた先生に、私達は少し照れくさげに口端をにまにまさせたり、隠したりと様々な反応をとる。
そして誰一人先生の話を邪魔しようとはしなかった。
「だからこそ、先生はお前たちには勝ち上がってほしいんだ」
“勝ち上がる”という先生の言葉に私は前に皆と勉強会を開いた時の事を思い出す。
五年最後の卒業試験では“対戦試合”が毎年行われていると聞いた。
ということは、私達はBクラスと勝負をするということだろう。
「なのにBクラスと合同授業してしまったら、お前たちがどれぐらいの実力なのかわかってしまうだろう!?敵の戦力を知るのも大切だが、こっちの情報を教えるような真似はダメだ!!」
「…先生、騎士科の生徒とは合同授業やってもいいんですか?」
私はBクラスに対抗意識を持っている_といっても先生はBクラスの先生にだが_先生に質問した。
卒業試験に他のクラスと対戦するということは分かったが、なら何故騎士科との合同授業は許可するのかが不思議だったのだ。
だけど先生の答えは意外なものだった。
「やらんぞ。そもそも騎士科は魔法科と同じ卒業試験の内容はしないんだ」
はっきりと告げた先生に私は目を瞬いた。
目標の方向性が魔法科と騎士科では違うけど、でも卒業試験の内容まで違うとは思わなかったからだ。
でもそれも当然かもしれない。
方向性が違うのなら、その結果を確認する方法にも違いが出てくるのは当然だからだ。
「じゃあ、明日から騎士科との合同授業を始めるから、今日はもうゆっくり休め。
ちなみにお前らもやる騎士科の授業内容は魔物とは戦わないが、それでもかなりのハードコースだ。
だから明日は制服じゃなくて動きやすい服装で来ることをお勧めするぞ」
じゃあな、とさっさと学園へと戻っていく先生の後姿を、私達は戸惑った表情を見送り、そしてそのまま寮へと向かったのだった。
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