恋愛初心者の恋の行方

あおくん

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冒険者編①

14 王都③

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そうして用事が済み、お昼近くになっていたことに気付いた私は、レロサーナとエステルと約束していた場所へと向かう。
待ち合わせ場所はお金持ちが多く利用しているような高級そうなお店通りではなく、私がさっきまでいた公園やギルドの近くにある広場だ。
じゃあ朝食だって広場で食べればいいと思うかもしれないけれど、ここでは屋台が出店することが多くてのんびりとした時間が味わえない。
ほら、目の前で開店準備をせっせとしている人の前でゆっくり食べずらいと思わない?そんな感じだ。

広場に着くと今はもう昼近くという時間もあって、広場のあちこちに屋台が開かれ、人通りも多く賑わっている様子だ。
広場にある時計の近くでは待ち合わせをしている人が多いのか、かなりの人数が辺りを見渡しながら待っている。
その中にレロサーナとエステルはいないかと探すと、エステルが待っていた。
以前私に貸してくれたようなレースとフリルが着いた白いシャツに清楚な感じのスカートだ。

「サラ」

私に気付いたエステルが胸元まで上げた手を振る。

「エステル、久しぶりだね。レロサーナは?」

「レロサーナはまだよ。それよりサラ、貴方それが普段の服装なの?」

「そうだけど、どこか変?」

王都に来るまでの道中、雨風にも耐えられるように素材がしっかりとしたローブを羽織り、中には汚れが目立ちにくいくるぶしまであるワンピースを着ている私は、どこか変な部分があるのかとエステルの前で全身を確認する。
するとエステルは一つため息をつくと私の体へと指さした。

「私の中の冒険者のイメージは皆肌の露出が多いけれど、お洒落をしているわ。
なのにサラは全然よ。サラのクローゼットの中を見させてもらった時、成長しても問題ないようにシンプルな服を持ってきたとか言っていたけど、まさか家にあるクローゼットの中全てが同じような服だといわないわよね?」

「…え」

「その反応はもしかしてそうなのね!こうなったら洋服店に行くわよ!
サラに似合う洋服を私が選んであげるから」

なにやらエステルの気分を悪くさせてしまったのか、ぷんぷんしながらエステルは私に言った。

「でもレロサーナを待たなきゃ。それにお昼ご飯を食べるところだって予約しているんでしょ?店の人に悪いわ」

「レロサーナなら私の意見に賛同してくれる筈…ってサラ、肩に乗せているのはもしかして霊獣?」

そう言ったエステルは体を小さくさせて肩に乗せているフロンに気付き、目を輝かせる。
そして小さく「かわいい」と呟いた。

「うん。最近契約したの。名前はフロンっていうのよ」

フロンの頭を撫でながら紹介すると、フロンも『よろしく』と告げる。
契約した私には言葉として伝わっているけど、きっとエステルには契約する前の私と同じようににゃあにゃあ鳴いているように聞こえるだろう。
まぁそれでもかわいいのは変わらないんだけどね。

「ご挨拶ありがとう。私はエステル・シメオネよ。よろしくね。
……それにしても羨ましいわ。私はまだ霊獣と出会えてすらいないから」

「冒険者の方が出会いが多いからね。そこの差はしょうがないかも」

エステルは以前私に教えた通り、学園を卒業してから家業が行っているポーション制作に関わるお仕事に着いた。
実際に家を継ぐことは別の人かもしれないが、それでも店を経営する為に色々と学んでいるとエステルからの手紙で知っている。
だからこそ、外に出ることが少ないエステルは霊獣との出会いもないのだろう。

「あ、そうだ」

思い出した私は早速使い始めた亜空間鞄からハンカチを取り出した。
学園最後の日、エステルから借りたハンカチだ。
しっかりと洗濯をして、皺が残らない様にアイロンもかけておいたハンカチをエステルに手渡す。

「覚えていたのね」

「当たり前よ。これを返すために、私何度も二人の日程を確認していたでしょ?」

学園を卒業してから半年以上たって、やっと三人が再会したのは私が放置してきたことが理由ではないことだけは言っておこう。
仕方がないとはいえ、騎士団に入団したばかりのレロサーナと、ポーション稼業についたエステルが様々なことを学ぶために時間をとられ、すぐに再会してハンカチとドレスを返す予定がここまでずれ込んでしまったのだ。

「じゃあ今度はなにを貸そうかしら?」

「ちょっとまって、私まだドレス返してないからね?」

「ふふふ。そうだったわ。まだ返してもらう物が残っていたわ」

「…もう。それに貸してもらわなくても私だって二人に会いたいんだから、わざわざ理由作りをしなくても大丈夫だよ」

「そう?」

「そう!」

そんなやり取りをしていると、レロサーナが私とは違うお洒落なデザインのワンピース姿で現れた。
スタイルがいいレロサーナがワンピースを着ていると大人の女性の雰囲気がだだ洩れていて、同じ女性ではあるが思わず目の行き場に困ってしまうような気がしてくる。
だけど妖艶な雰囲気だけではなく、流石貴族といった感じに上品でしかも優雅な足取りで私達の方に向かって歩いていたレロサーナはとても綺麗だ。

レロサーナとエステルが並べばタイプは違うけど、でも絶対に男たちの視線を釘付けにするだろう。

(そんな中にちんちくりんの私が並ぶんだよね…)

なんだがかなり気が滅入ってしまうが、自慢の友達をもったということで気にしないでおこう。
そんなことを考えていると、つかつかと途端に早足になったレロサーナが表情を怖くさせていることに気付く。

「サラ!アナタ学園を卒業しても全然あか抜けていないじゃない!
エステル!食事の前にサラの洋服を買いに行くわよ!」

「え?」

「わかっているわ。私もそうしようと思っていたところなの」

「え?え?」

ガシッと両腕を二人に固定されて私は飲食店が並ぶ通りではなく、洋服店が多く並ぶ通りに連れていかれた。
あれもこれもと洋服を選ぶ二人に試着をするように促され、洋服店を出るころにはすっきりとした二人とげっそりとした私がいたことだろう。
それでも私がアラさんに忠告された言葉を伝えたことで、露出控えめな服装を選んでくれた二人に感謝をした。





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