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冒険者編①
21 方針変更
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そして私はお母さんが働くお店へと向かうと休業という札がかけられているにも関わらず、ガヤガヤと声が聞こえてくる扉を開ける。
扉が開けられたことでホール部分にいた人たちは私がいる入り口に目を向けた。
みんな一斉に顔を向けるから居心地が悪い気持ちになるが、それでもなにごともないように振舞う。
「サラ!?あなたもう王都から戻ってきたの?」
ホールにはお母さんもいた。
いつもなら料理が並べられているテーブル席にはお客さんが座っているのだが、今はこれから使うのかたくさんの野菜の具材が並べられている。
お母さんは芋の皮を剥いていたようで、手を止めると私に駆け寄った。
「うん、それより手伝いに来たよ」
「手伝いって…そりゃあ助かるけど、無理して帰ってきたんじゃないの?体調は平気?」
そういって私の顔色を確認するお母さんはとても心配そうだけど、私はわけがわからず首をかしげる。
あまり気にしてなかったけどまだ全然日付経ってない感じ?
私が王都まで行くのに宿に泊まった分も合わせて一週間も経たないくらい。そしてお酒に潰れてレルリラに運ばれて帰ったらしいから、多く見積もっても更に一週間が経った計算でいたのだけど、お母さんに凄く心配されていることを考えるとレルリラは一体何日かけて帰ってきたのだろうと疑問に思う。
とりあえず心配するお母さんに私が元気なところを見てもらい、安心させてあげてからそのままお手伝いとして参加した。
マーオ町は土地の面積は広くても、町の人口的な事を考えると土地の面積に比べて人が少ない方だから、私の事を知っている人は多く、手伝う私に「ありがとうね、サラちゃん」と声をかけられる。
私はお母さんの隣にたって、同じように野菜の皮を剥いていった。ようは下準備係りである。
実際に火を使って料理をする人は厨房に入り、熱い空間の中頑張っていた。
私は小声で肩に乗るフロンに語りかける。
「ねぇフロン、私ってレルリラに送ってもらったんだよね?」
『そうだよ』
「レルリラは何日かけてこの町まで移動したの?」
『一日だよ』
「い!?」
私はあっけらかんと告げるフロンに絶句した。
言葉が出なかったのだ。
全力を出しても一日二日しか短縮できないあの距離を、なにをどう頑張ればたった一日で移動できるのだろうかと。
だけどフロンによってすぐに答えがわかる。
『レルリラはね、転移魔法陣を使っていたよ』
「転移魔法って言っても限度があるじゃない」
『騎士団だけが使える魔法陣っていってた!それを何回か使って移動して、サラを一日で届けたんだよ』
フロンの言葉に私はそういうことかと納得する。
魔法研究所で私が使ったのは施設内を行き来する魔方陣だったけど、国全体の安全を守る騎士団なら各地に魔方陣を設置し、簡単に行き来しやすいようにしているだろうと思ったのだ。
そしてレルリラはそれを利用したと。
(何日も抱えられてきたのかと思った……)
よかったようなよくないような、自分の気持ちがはっきりわからなかったけど、それでもレルリラに何日も跨いで迷惑をかけたわけではなかったことに対して私は安堵する。
(会ったらちゃんとお礼言わないと…)
そんなことを考えながら、私は手を動かしたのだった。
□
私はお母さんと共に出来た料理をギルドに運ぶことになった。
お父さんとわかれてからそれなりに時間が経っていたから、流石に人もあまり残っていないのではないかと思ったが、ギルドの裏側にやってくると意外と多くの人が残っている。
ちなみに運ぶ先はギルドの中ではなく、ギルドの裏手にある広い原っぱだ。
子供の時はよくここで追いかけっこをしたりして遊んだものだ。
お店から折りたたむことができる長いテーブルも一緒に運んできているので、テーブルを設置して料理を並べていく。
そして遠巻きに興味津々に眺めている冒険者の人たちに促すと、嬉しそうに手を伸ばしていった。
「サラも食べていいわよ。朝ごはんだって食べてないでしょ?」
お母さんの言葉にそういえばそうだったことを思い出す。
もっといえばレロサーナたちとお昼ご飯として食べたお肉以降何も口にしてないのだった。
だからか急に私のお腹は空腹だと訴える。
お母さんはくすくすと笑い、一つ料理を口に含むとお店の方に戻っていった。
『どれも美味しそうだね』
「そうだね」
私はそんなお母さんを見送りつつ、朝ごはんとお昼ごはんとして、串に刺さっているウィンナーに手を伸ばしパクリと食べた。
皮がパリッと破れ、中から肉の脂が輝く。
なんともジューシーな味に頬が緩みそうになりながら食べていた。
その時だった。
ギルドの中から一人の男性が出てくる。
五年と半年、いや私がオーレ学園に入学するためおじさんの話を聞きにいかなくなったからもっと経っているだろう。
だけどおじさん、もといギルドマスターの姿は私の記憶の中の姿と変わっていなかった。
魔力が多い人は長生きだと聞いたことがあるが、ギルド長を見ると本当のことなのだなと感じる。
私は料理を口に含みながら、拡声魔法を使って何かを話そうとするギルドマスターを注目した。
【……あー、まずは魔物討伐に参戦してくれた者、治癒魔法などサポートしてくれた者、そして今目の前で無償で料理を提供してくれた者たちに感謝を申し上げる】
ギルドマスターの言葉に冒険者の人たちは咀嚼を続けながらも、フォークやスプーンなどといった食器を置き手のひらを合わせるように拍手した。
中には持ちながら拍手する人もいる。
よっぽどお腹を空かせていたのね。手を止めても口の動きを止める者は誰もいなかった。
そしてここからが私を驚愕させたのだった。
扉が開けられたことでホール部分にいた人たちは私がいる入り口に目を向けた。
みんな一斉に顔を向けるから居心地が悪い気持ちになるが、それでもなにごともないように振舞う。
「サラ!?あなたもう王都から戻ってきたの?」
ホールにはお母さんもいた。
いつもなら料理が並べられているテーブル席にはお客さんが座っているのだが、今はこれから使うのかたくさんの野菜の具材が並べられている。
お母さんは芋の皮を剥いていたようで、手を止めると私に駆け寄った。
「うん、それより手伝いに来たよ」
「手伝いって…そりゃあ助かるけど、無理して帰ってきたんじゃないの?体調は平気?」
そういって私の顔色を確認するお母さんはとても心配そうだけど、私はわけがわからず首をかしげる。
あまり気にしてなかったけどまだ全然日付経ってない感じ?
私が王都まで行くのに宿に泊まった分も合わせて一週間も経たないくらい。そしてお酒に潰れてレルリラに運ばれて帰ったらしいから、多く見積もっても更に一週間が経った計算でいたのだけど、お母さんに凄く心配されていることを考えるとレルリラは一体何日かけて帰ってきたのだろうと疑問に思う。
とりあえず心配するお母さんに私が元気なところを見てもらい、安心させてあげてからそのままお手伝いとして参加した。
マーオ町は土地の面積は広くても、町の人口的な事を考えると土地の面積に比べて人が少ない方だから、私の事を知っている人は多く、手伝う私に「ありがとうね、サラちゃん」と声をかけられる。
私はお母さんの隣にたって、同じように野菜の皮を剥いていった。ようは下準備係りである。
実際に火を使って料理をする人は厨房に入り、熱い空間の中頑張っていた。
私は小声で肩に乗るフロンに語りかける。
「ねぇフロン、私ってレルリラに送ってもらったんだよね?」
『そうだよ』
「レルリラは何日かけてこの町まで移動したの?」
『一日だよ』
「い!?」
私はあっけらかんと告げるフロンに絶句した。
言葉が出なかったのだ。
全力を出しても一日二日しか短縮できないあの距離を、なにをどう頑張ればたった一日で移動できるのだろうかと。
だけどフロンによってすぐに答えがわかる。
『レルリラはね、転移魔法陣を使っていたよ』
「転移魔法って言っても限度があるじゃない」
『騎士団だけが使える魔法陣っていってた!それを何回か使って移動して、サラを一日で届けたんだよ』
フロンの言葉に私はそういうことかと納得する。
魔法研究所で私が使ったのは施設内を行き来する魔方陣だったけど、国全体の安全を守る騎士団なら各地に魔方陣を設置し、簡単に行き来しやすいようにしているだろうと思ったのだ。
そしてレルリラはそれを利用したと。
(何日も抱えられてきたのかと思った……)
よかったようなよくないような、自分の気持ちがはっきりわからなかったけど、それでもレルリラに何日も跨いで迷惑をかけたわけではなかったことに対して私は安堵する。
(会ったらちゃんとお礼言わないと…)
そんなことを考えながら、私は手を動かしたのだった。
□
私はお母さんと共に出来た料理をギルドに運ぶことになった。
お父さんとわかれてからそれなりに時間が経っていたから、流石に人もあまり残っていないのではないかと思ったが、ギルドの裏側にやってくると意外と多くの人が残っている。
ちなみに運ぶ先はギルドの中ではなく、ギルドの裏手にある広い原っぱだ。
子供の時はよくここで追いかけっこをしたりして遊んだものだ。
お店から折りたたむことができる長いテーブルも一緒に運んできているので、テーブルを設置して料理を並べていく。
そして遠巻きに興味津々に眺めている冒険者の人たちに促すと、嬉しそうに手を伸ばしていった。
「サラも食べていいわよ。朝ごはんだって食べてないでしょ?」
お母さんの言葉にそういえばそうだったことを思い出す。
もっといえばレロサーナたちとお昼ご飯として食べたお肉以降何も口にしてないのだった。
だからか急に私のお腹は空腹だと訴える。
お母さんはくすくすと笑い、一つ料理を口に含むとお店の方に戻っていった。
『どれも美味しそうだね』
「そうだね」
私はそんなお母さんを見送りつつ、朝ごはんとお昼ごはんとして、串に刺さっているウィンナーに手を伸ばしパクリと食べた。
皮がパリッと破れ、中から肉の脂が輝く。
なんともジューシーな味に頬が緩みそうになりながら食べていた。
その時だった。
ギルドの中から一人の男性が出てくる。
五年と半年、いや私がオーレ学園に入学するためおじさんの話を聞きにいかなくなったからもっと経っているだろう。
だけどおじさん、もといギルドマスターの姿は私の記憶の中の姿と変わっていなかった。
魔力が多い人は長生きだと聞いたことがあるが、ギルド長を見ると本当のことなのだなと感じる。
私は料理を口に含みながら、拡声魔法を使って何かを話そうとするギルドマスターを注目した。
【……あー、まずは魔物討伐に参戦してくれた者、治癒魔法などサポートしてくれた者、そして今目の前で無償で料理を提供してくれた者たちに感謝を申し上げる】
ギルドマスターの言葉に冒険者の人たちは咀嚼を続けながらも、フォークやスプーンなどといった食器を置き手のひらを合わせるように拍手した。
中には持ちながら拍手する人もいる。
よっぽどお腹を空かせていたのね。手を止めても口の動きを止める者は誰もいなかった。
そしてここからが私を驚愕させたのだった。
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