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冒険者編②
15 視点変更 レロサーナからみたサラのこと
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◆視点変更
私、レロサーナ・クティナナはクティナナ男爵の代表として、この国の国王陛下であるヴァイス・レン・キュオーレ国王の誕生パーティーに参加していた。
本来であれば騎士団所属として警備に当たる筈だったのだが、父や兄たちの都合がつかず、私が出席することとなったのだ。
そして現在、私は親戚のエスコートを受けながら衝撃的な場面を目撃することとなる。
(え、サラ??!)
初めて拝見した聖女様は、私がそう思う程にサラに瓜二つだった。
サラ・ハール。
私のオーレ学園の同級生で、今でも親交のある友人だ。
髪色が違うだけで、容姿も背丈も全く一緒。
凹凸の少ないまるで子供がそのまま大人になったような体型までも、なにもかも一緒だった。
でも聖女様が立つあの場所にサラがいる訳がない。
なぜならサラは平民で、そして冒険者だからだ。
貴族という身分のない彼女が、このパーティーに参加できるわけがないのである。
だからあれは、あの方はサラではなくて、聖女様なのだ。
そう思うべきなのにあれは私の友人だと、確信めいた勘が強く働く。
その理由の一つにあるのは、王女様をエスコートしているヴェルナス・レルリラ様の存在である。
サラによく似ている聖女様をエスコートしているこの国の第一王子であり、王太子でもあるアルヴァルト・エレク・キュオーレ殿下を不躾ながらも、嫉妬が籠もった眼差しを向けるレルリラ様の態度が私にそう思わせていたのだ。
合っているかどうかはわからないが、これで私の考えが正しいのならば本当にわかりやすい。
勿論レルリラ様の表情筋が機能していないということは同じクラスメイトだった私達にとっては当たり前のことだから、あの無表情は気にくわない時の無表情なのではないかとなんとなくわかる程度だ。
だけどそもそもレルリラ様が感情を出すときは、サラが関わっている時というのが常識だ。
勿論同級生の中の常識であってこの国の常識ではないから、会場内に私以外のクラスメイトがいないのならば私しか気づかなかっただろう。
ちなみに私のもう一人の友人であるエステル・シメオネは兄が参加するとか何とかで、エステル本人は参加しないと先日聞いている。
だからこそ、私はあれは聖女様ではなくて友人のサラなのだと知ることが出来たのだ。
そしてもう一つ。
サラがレルリラ様を見たあの反応だ。
遂に、やっと、初めて恋心に気付きましたというあの反応。
勿論あの方が本当に聖女様で、レルリラ様にひっそりと恋をしている可能性は少なくない。
だけど、少なくとも悲しい表情はしない筈なのだ。
まだ教養を学ばれていると噂されている聖女様は国王陛下と並ぶほどに身分が高く位置付けられているからこそ、想い人を見かけたらぽっと頬を染めるくらいの反応を見せるだろう。
しかもレルリラ家なら後ろ盾に適している家門だから、婚姻に対して反対意見がなければ簡単に許しを得ることもできる。
だから先程のように、王女様をエスコートしているレルリラ様の姿を見て、愕然とし、辛く、悲しそうな表情は浮かべない筈なのだ。
友人がやっと恋に気付いてくれて嬉しい気持ちと、身分差に心を痛める姿をみて、今すぐ駆け寄って慰めてあげたい気持ちを私はぐっと答える。
サラが聖女様のフリをしているというのなら、隣で顔色を変えずにエスコートをしているアルヴァルト殿下も、サラが聖女様のフリをする事情に関係しているに違いない。
私の友人は素直で、嘘をつく時はわかりやすいのだ。
この国で国王陛下と皇后陛下を除けば次に偉い人物の隣で、平然と出来るわけがない。
だからサラはアルヴァルト殿下に頼まれて、聖女様のフリをしているのだと推測した。
そして、だからこそ、私は悲しみを堪える友人に駆け寄ったりはしない。
私はサラから顔を背けた。
これ以上サラの表情を見ていると、エスコートをしてくれている親戚の腕を握り潰してしまいそうだったから。
そもそも私の友人は鈍感すぎる。
他人に呼ばれ、姿が見えない人を気に掛ける時点で、特別ななにかを抱いているのではないか。
学園を卒業しても、共にいる約束を何故して、そして守ろうとするのか。
貴族と平民は結ばれることがない。
だからこそ、サラはレルリラ様と友達なのだといっていた。
でもそうではない。
サラが自覚してないだけで、私たちには互いに好意を持っているのだということがよくわかった。
騎士団ではなく冒険者になると決めたサラがずっと頑張っていたのは、貴族の爵位を得るほどの力をつけたいのではないかと私達は思っていた。
たとえ自覚してない状態でも、レルリラ様のそばに居続けるために爵位を目指しているのではないかと、そう思っていたのだ。
だからこそサラに好意を寄せた他の連中だって、二人の気持ちの本気を知り身を引いていたのだ。
サラの人気が高いのは友人である私が一番知っているから。
少なくとも、もっと、もっと早くに気付いてくれたら。
いや私たちの前で自覚してくれたのなら友人を応援して、そして大丈夫だと励ますことが出来たのに。
(全く、サラったら……なぁにが”へぇ~王様のパーティーに参加するんだね。頑張ってね!”よ!)
私は心の中で失恋と決めつけている友人を思い浮かべながら悪態をついた。
そして、身分差の問題なんて悩まなくてもいいのだと、次に会ったらサラにいってやろうと口をきゅっと結ぶ。
(だって冒険者は国への功績を認められたらSランクという称号と、貴族の爵位が与えられるのだから)
だけど意外とそういう情報には疎い友人に、私はもしかして…と考える。
一人だけの情報は疑いを持つだけかもしれない。
私はサラに会う前にエステルにも伝えておこうと心に決めた。
そして最後にもう一度サラの様子を確かめようと振り返った時、まだ姿を見せていなかった第二王子と向き合うアルヴァルト殿下とサラの姿。
そして瘴気の魔物を浄化する友人だと”思われる”人物の姿に、私は困惑して少し頭が痛くなるのを感じたのであった。
視点変更終わり
私、レロサーナ・クティナナはクティナナ男爵の代表として、この国の国王陛下であるヴァイス・レン・キュオーレ国王の誕生パーティーに参加していた。
本来であれば騎士団所属として警備に当たる筈だったのだが、父や兄たちの都合がつかず、私が出席することとなったのだ。
そして現在、私は親戚のエスコートを受けながら衝撃的な場面を目撃することとなる。
(え、サラ??!)
初めて拝見した聖女様は、私がそう思う程にサラに瓜二つだった。
サラ・ハール。
私のオーレ学園の同級生で、今でも親交のある友人だ。
髪色が違うだけで、容姿も背丈も全く一緒。
凹凸の少ないまるで子供がそのまま大人になったような体型までも、なにもかも一緒だった。
でも聖女様が立つあの場所にサラがいる訳がない。
なぜならサラは平民で、そして冒険者だからだ。
貴族という身分のない彼女が、このパーティーに参加できるわけがないのである。
だからあれは、あの方はサラではなくて、聖女様なのだ。
そう思うべきなのにあれは私の友人だと、確信めいた勘が強く働く。
その理由の一つにあるのは、王女様をエスコートしているヴェルナス・レルリラ様の存在である。
サラによく似ている聖女様をエスコートしているこの国の第一王子であり、王太子でもあるアルヴァルト・エレク・キュオーレ殿下を不躾ながらも、嫉妬が籠もった眼差しを向けるレルリラ様の態度が私にそう思わせていたのだ。
合っているかどうかはわからないが、これで私の考えが正しいのならば本当にわかりやすい。
勿論レルリラ様の表情筋が機能していないということは同じクラスメイトだった私達にとっては当たり前のことだから、あの無表情は気にくわない時の無表情なのではないかとなんとなくわかる程度だ。
だけどそもそもレルリラ様が感情を出すときは、サラが関わっている時というのが常識だ。
勿論同級生の中の常識であってこの国の常識ではないから、会場内に私以外のクラスメイトがいないのならば私しか気づかなかっただろう。
ちなみに私のもう一人の友人であるエステル・シメオネは兄が参加するとか何とかで、エステル本人は参加しないと先日聞いている。
だからこそ、私はあれは聖女様ではなくて友人のサラなのだと知ることが出来たのだ。
そしてもう一つ。
サラがレルリラ様を見たあの反応だ。
遂に、やっと、初めて恋心に気付きましたというあの反応。
勿論あの方が本当に聖女様で、レルリラ様にひっそりと恋をしている可能性は少なくない。
だけど、少なくとも悲しい表情はしない筈なのだ。
まだ教養を学ばれていると噂されている聖女様は国王陛下と並ぶほどに身分が高く位置付けられているからこそ、想い人を見かけたらぽっと頬を染めるくらいの反応を見せるだろう。
しかもレルリラ家なら後ろ盾に適している家門だから、婚姻に対して反対意見がなければ簡単に許しを得ることもできる。
だから先程のように、王女様をエスコートしているレルリラ様の姿を見て、愕然とし、辛く、悲しそうな表情は浮かべない筈なのだ。
友人がやっと恋に気付いてくれて嬉しい気持ちと、身分差に心を痛める姿をみて、今すぐ駆け寄って慰めてあげたい気持ちを私はぐっと答える。
サラが聖女様のフリをしているというのなら、隣で顔色を変えずにエスコートをしているアルヴァルト殿下も、サラが聖女様のフリをする事情に関係しているに違いない。
私の友人は素直で、嘘をつく時はわかりやすいのだ。
この国で国王陛下と皇后陛下を除けば次に偉い人物の隣で、平然と出来るわけがない。
だからサラはアルヴァルト殿下に頼まれて、聖女様のフリをしているのだと推測した。
そして、だからこそ、私は悲しみを堪える友人に駆け寄ったりはしない。
私はサラから顔を背けた。
これ以上サラの表情を見ていると、エスコートをしてくれている親戚の腕を握り潰してしまいそうだったから。
そもそも私の友人は鈍感すぎる。
他人に呼ばれ、姿が見えない人を気に掛ける時点で、特別ななにかを抱いているのではないか。
学園を卒業しても、共にいる約束を何故して、そして守ろうとするのか。
貴族と平民は結ばれることがない。
だからこそ、サラはレルリラ様と友達なのだといっていた。
でもそうではない。
サラが自覚してないだけで、私たちには互いに好意を持っているのだということがよくわかった。
騎士団ではなく冒険者になると決めたサラがずっと頑張っていたのは、貴族の爵位を得るほどの力をつけたいのではないかと私達は思っていた。
たとえ自覚してない状態でも、レルリラ様のそばに居続けるために爵位を目指しているのではないかと、そう思っていたのだ。
だからこそサラに好意を寄せた他の連中だって、二人の気持ちの本気を知り身を引いていたのだ。
サラの人気が高いのは友人である私が一番知っているから。
少なくとも、もっと、もっと早くに気付いてくれたら。
いや私たちの前で自覚してくれたのなら友人を応援して、そして大丈夫だと励ますことが出来たのに。
(全く、サラったら……なぁにが”へぇ~王様のパーティーに参加するんだね。頑張ってね!”よ!)
私は心の中で失恋と決めつけている友人を思い浮かべながら悪態をついた。
そして、身分差の問題なんて悩まなくてもいいのだと、次に会ったらサラにいってやろうと口をきゅっと結ぶ。
(だって冒険者は国への功績を認められたらSランクという称号と、貴族の爵位が与えられるのだから)
だけど意外とそういう情報には疎い友人に、私はもしかして…と考える。
一人だけの情報は疑いを持つだけかもしれない。
私はサラに会う前にエステルにも伝えておこうと心に決めた。
そして最後にもう一度サラの様子を確かめようと振り返った時、まだ姿を見せていなかった第二王子と向き合うアルヴァルト殿下とサラの姿。
そして瘴気の魔物を浄化する友人だと”思われる”人物の姿に、私は困惑して少し頭が痛くなるのを感じたのであった。
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