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冒険者編③
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■視点変更
眞子は確信していた。
自分の教育の先生でもあり保護者的な存在でもあるラルク様の弟さんであるヴェルナス様と、“本当の聖女”であるサラちゃんは両想いだと。
身分差が変に邪魔しているだけで、眞子の世界に二人がいるとしたらさっさとくっついてしまっている筈。
サラちゃんはなんだか鈍そうなところがあるけど、ヴェルナス様は自分の気持ちに気付いているし、見たところ思ったことはちゃんと口に出して伝えていそうだ。とそのように考えている。
(んー、溺愛クールワンコ系って感じかな?)
眞子と同じ界隈に足を浸かっていなければ少し意味を考えてしまうかもしれないが、溺愛とクール系という言葉がヴェルナスに当てはまることが理解できれば、ワンコという言葉はわからなくても問題ない。
だがそのクールワンコも基本素直に行動と感情を示しているが、好意を伝えるという点に置いてはやはり身分の差の問題があるためか、口には出せていない様子だった。
眞子は初めてサラと顔を会わせたその日、何故二人が互いの気持ちを確かめ合えていないのかを知っている。
貴族と平民では結婚できないという意味が分からない謎のルール。
それに縛られ、気持ちが通じたとしても結局は他の人と結婚しなくてはならないという展開が待っているからこそ、今のままでは告白すらも出来ない。
ではどうするのか。
まずは身分差をどうにかしなければ始まらない。
そんなことはすぐに理解したが、眞子はサラの気持ちを確かめたかった。
自分が二人の様子を見て推測した通り、想い合っているのかを確かめたかったからこそ、眞子はサラに尋ねたのだ。
『ヴェルナス様のこと、好きだよね?』
好きな人はいる?でもよかったが、そう聞いてしまえばサラは誤魔化すだろう。
鈍感で、だけど素直そうなサラには直球で聞いたほうが話が早い。
絶対に顔に出るだろうと眞子はそう思った。
そして案の定、答えなくとも顔を真っ赤に染め上げたサラをみて予想的中と歓喜したのだ。
そして気持ちを伝えないのかと尋ねてみれば、やっぱり挙げられたのは身分の問題。
ここでもか、と眞子は思った。
だが話を聞き続ければ、それだけではないことを眞子は知る。
__父親?
__娘?
サラは何をいっているのか、と眞子は思った。
例え前世が親子だとしても、今世では違うだろう。
ヴェルナスのサラを見るあの優し気な目がサラはちゃんとみえているのか?
あれが父親が娘に向ける目じゃないって事くらい、眞子にもすぐにわかる程、好きだという感情が詰めこめられている。
第一、前世が親子なら今世で他人に生まれ変わった時は恋をしてはならないのか?
結婚してはならないのか?
前世が親子なら、兄妹なら、今世が血の繋がらない他人であっても近親相姦だからと交際を拒否るのか?
そうではないだろう。
前世の人生は前世で終わっている。
今世に生まれた以上、悔いの残らない人生を日々生きていかなければならない。
眞子は自身の意思とは関係なく勝手に転移させられ、やりたいこと、伝えたいこと、全てを諦めさせられた経験からそのように考えるようになった。
聖女ではなくても聖女として受けている教養を疎かにしない理由は、眞子がこの世界で生きていくからに他ならない。
衣食住を保証されている聖女としての身分を投げ捨てれば、お金の稼ぎ方もわからない眞子がこの世界で生きていくことなんて出来ないだろう。
そもそも魔力が皆無なのだから、世話をしてくれる人間がいなければこの魔道具で溢れかえっている世界では生きていくこと自体困難だ。
なにより、自分が本物だと知らない目の前にいる聖女本人が、偽物_と知らなくても_の聖女を助けたいと心から思ってくれていることに対し、感謝の気持ちを持っている。
そして証明するように眞子の代わりにパーティーにも参加し、危険な森にも入って一人囮になってくれた。
口だけではないサラの行動が、眞子には聖女を通り越して女神の様にも見えたのだ。
生きていくために、そして恩を返すためにも、眞子は今出来ることを後悔することなく頑張ろうと決めたのだ。
だからこそ、サラの代わりに聖女をやってみせると、そう考えているのだ。
話しが逸れたが、だからこそ眞子はサラにも後悔して欲しくなかった。
そんなことを強く思ってしまう程、納得できないサラの話。
そんな理由で好きな人を諦めたら絶対に後悔すると眞子は考えていた。
(っていうか、サラちゃんは冒険者なんでしょ!?国への貢献が認められれば貴族の爵位が貰えるって言っていたわ!)
聖女は王子様との婚姻が待っているだけに、サラが聖女であることを公開することは出来ないと眞子も考えている。
眞子自身もアルヴァルトと婚姻はしたくないと考えているのだ。
別にアルヴァルトが悪いわけではない。
顔も悪くなければ性格も悪くない。王子だから金にも困らないだろうし、何不自由ない生活を送れるだろう。
だけどある意味不自由になることは明白だ。
聖女から王妃として、立場が変われば今ある自由だってもっとなくなるだろう。
好きな人と結婚することが王妃に繋がるのならばまだ良い。まだ耐えられる。
だけどそうではないのだ。
眞子はアルヴァルトに恋心なんて持っていないのだから。
だからアルヴァルトと結婚なんてしたくないと考えていた。
これ_王子との結婚_もどうにかしなくてはならない案件だが、今はサラのことだ。
(爵位を貰えれば解決するよ!とかそんな話をしても、今度は公爵家という高位な身分が邪魔するよね……?)
成果があればが前提だが、と出発前に眞子はアルフォンスから教えてもらったことがある。
瘴気の魔物の対応にサラも参加していることから、冒険者のサラはSランクへと昇格し、爵位を承ることが出来る。
前置きとして伝えられた言葉があるが、それでも聖女はサラで、瘴気の魔物がサラに対して何らかの接触をしてくることは予想していたことから、なにかしら成果は出せるだろうと考えていたのだ。
だからヴェルナスとサラの関係にヤキモキしている眞子はアルヴァルトに「身分の問題がなくなればうまくいくから、変に口を出さないように」と忠告されていた。
実際には瘴気の魔物と思われる魔物には出会うことが出来なかったが、それでも瘴気の魔物に対応する何かしらの対策法をヴェルナスが持っているという。
だからこそ魔法研究所に向かって確かめようとしているのだ。
これでサラの昇級は確実。
そして爵位だって間違いなく貰える。
だから問題ない。
そう考えられるのだが、このまま意味が分からない前世親子の考えがサラにあり続けた場合、変なすれ違いが生れるだろうと眞子は考えていた。
だから眞子は眞子の考えをサラに伝えた。
眞子にもサラにも考え方がある。
そしてそれは人それぞれ違うということを伝えた結果、サラはヴェルナスの気持ちを決めつけることはしないと、ちゃんと話しあうことを約束してくれた。
頷いてくれたサラに眞子は目を輝かせた。
そして心の中で叫んだのだ。
(ラルク様!私やりました!!!)
ヴェルナスの兄ということもありラルクも弟の恋模様をそわそわしながらも見守っていた。
恋愛結婚で結ばれた両親を持つラルクだが、祖父の思惑で父親と母親は一時期離れてしまっていた。
今でもまだ母親は戻ってきてはいないが、それでも定期的に父親が会いに行っていることを知っている。
そんな両親をみて安堵したことは記憶に新しいが、幼いヴェルナスが祖父の仕出かしたことに巻き込まれ、心に傷を作る結果となってしまった事、兄として何もできなかったことが悔やまれた。
そんな時にヴェルナスを癒してくれた女性と、その女性に恋をした弟を応援したいと思っていたラルクは、眞子と共に下手に手を出してはいけないとわかっていながらも、気になっていたのだ。
後で眞子から事情を聞けば、ラルクの心も少しは晴れるだろうと眞子は考える。
何故なら、貴族と平民という身分差の問題に追加された、前世が絡む問題で余計に拗れようとしていたサラとヴェルナスの関係が、やっと明るくなったからだ。
勿論実際に爵位を貰えるまでは本当の意味で明るくなってはいないが、それでも問題が解決しそうな展開に眞子は心躍らせる。
(本当は、爵位の話をサラちゃんにしてあげたいんだけど……)
でもまだ決定事項ではない事は言わないほうがいい。
もし話が流れてしまったら、ぬか喜びさせてしまった分サラのショックは大きいだろうと考えられたからだ。
眞子は少し冷たくなったサラの手を握ってにこりと微笑む。
むずむずといってしまいたい口を必死で抑えながら、「早く片付いでくれたらいいね」とだけ呟いた。
■視点変更終わり
眞子は確信していた。
自分の教育の先生でもあり保護者的な存在でもあるラルク様の弟さんであるヴェルナス様と、“本当の聖女”であるサラちゃんは両想いだと。
身分差が変に邪魔しているだけで、眞子の世界に二人がいるとしたらさっさとくっついてしまっている筈。
サラちゃんはなんだか鈍そうなところがあるけど、ヴェルナス様は自分の気持ちに気付いているし、見たところ思ったことはちゃんと口に出して伝えていそうだ。とそのように考えている。
(んー、溺愛クールワンコ系って感じかな?)
眞子と同じ界隈に足を浸かっていなければ少し意味を考えてしまうかもしれないが、溺愛とクール系という言葉がヴェルナスに当てはまることが理解できれば、ワンコという言葉はわからなくても問題ない。
だがそのクールワンコも基本素直に行動と感情を示しているが、好意を伝えるという点に置いてはやはり身分の差の問題があるためか、口には出せていない様子だった。
眞子は初めてサラと顔を会わせたその日、何故二人が互いの気持ちを確かめ合えていないのかを知っている。
貴族と平民では結婚できないという意味が分からない謎のルール。
それに縛られ、気持ちが通じたとしても結局は他の人と結婚しなくてはならないという展開が待っているからこそ、今のままでは告白すらも出来ない。
ではどうするのか。
まずは身分差をどうにかしなければ始まらない。
そんなことはすぐに理解したが、眞子はサラの気持ちを確かめたかった。
自分が二人の様子を見て推測した通り、想い合っているのかを確かめたかったからこそ、眞子はサラに尋ねたのだ。
『ヴェルナス様のこと、好きだよね?』
好きな人はいる?でもよかったが、そう聞いてしまえばサラは誤魔化すだろう。
鈍感で、だけど素直そうなサラには直球で聞いたほうが話が早い。
絶対に顔に出るだろうと眞子はそう思った。
そして案の定、答えなくとも顔を真っ赤に染め上げたサラをみて予想的中と歓喜したのだ。
そして気持ちを伝えないのかと尋ねてみれば、やっぱり挙げられたのは身分の問題。
ここでもか、と眞子は思った。
だが話を聞き続ければ、それだけではないことを眞子は知る。
__父親?
__娘?
サラは何をいっているのか、と眞子は思った。
例え前世が親子だとしても、今世では違うだろう。
ヴェルナスのサラを見るあの優し気な目がサラはちゃんとみえているのか?
あれが父親が娘に向ける目じゃないって事くらい、眞子にもすぐにわかる程、好きだという感情が詰めこめられている。
第一、前世が親子なら今世で他人に生まれ変わった時は恋をしてはならないのか?
結婚してはならないのか?
前世が親子なら、兄妹なら、今世が血の繋がらない他人であっても近親相姦だからと交際を拒否るのか?
そうではないだろう。
前世の人生は前世で終わっている。
今世に生まれた以上、悔いの残らない人生を日々生きていかなければならない。
眞子は自身の意思とは関係なく勝手に転移させられ、やりたいこと、伝えたいこと、全てを諦めさせられた経験からそのように考えるようになった。
聖女ではなくても聖女として受けている教養を疎かにしない理由は、眞子がこの世界で生きていくからに他ならない。
衣食住を保証されている聖女としての身分を投げ捨てれば、お金の稼ぎ方もわからない眞子がこの世界で生きていくことなんて出来ないだろう。
そもそも魔力が皆無なのだから、世話をしてくれる人間がいなければこの魔道具で溢れかえっている世界では生きていくこと自体困難だ。
なにより、自分が本物だと知らない目の前にいる聖女本人が、偽物_と知らなくても_の聖女を助けたいと心から思ってくれていることに対し、感謝の気持ちを持っている。
そして証明するように眞子の代わりにパーティーにも参加し、危険な森にも入って一人囮になってくれた。
口だけではないサラの行動が、眞子には聖女を通り越して女神の様にも見えたのだ。
生きていくために、そして恩を返すためにも、眞子は今出来ることを後悔することなく頑張ろうと決めたのだ。
だからこそ、サラの代わりに聖女をやってみせると、そう考えているのだ。
話しが逸れたが、だからこそ眞子はサラにも後悔して欲しくなかった。
そんなことを強く思ってしまう程、納得できないサラの話。
そんな理由で好きな人を諦めたら絶対に後悔すると眞子は考えていた。
(っていうか、サラちゃんは冒険者なんでしょ!?国への貢献が認められれば貴族の爵位が貰えるって言っていたわ!)
聖女は王子様との婚姻が待っているだけに、サラが聖女であることを公開することは出来ないと眞子も考えている。
眞子自身もアルヴァルトと婚姻はしたくないと考えているのだ。
別にアルヴァルトが悪いわけではない。
顔も悪くなければ性格も悪くない。王子だから金にも困らないだろうし、何不自由ない生活を送れるだろう。
だけどある意味不自由になることは明白だ。
聖女から王妃として、立場が変われば今ある自由だってもっとなくなるだろう。
好きな人と結婚することが王妃に繋がるのならばまだ良い。まだ耐えられる。
だけどそうではないのだ。
眞子はアルヴァルトに恋心なんて持っていないのだから。
だからアルヴァルトと結婚なんてしたくないと考えていた。
これ_王子との結婚_もどうにかしなくてはならない案件だが、今はサラのことだ。
(爵位を貰えれば解決するよ!とかそんな話をしても、今度は公爵家という高位な身分が邪魔するよね……?)
成果があればが前提だが、と出発前に眞子はアルフォンスから教えてもらったことがある。
瘴気の魔物の対応にサラも参加していることから、冒険者のサラはSランクへと昇格し、爵位を承ることが出来る。
前置きとして伝えられた言葉があるが、それでも聖女はサラで、瘴気の魔物がサラに対して何らかの接触をしてくることは予想していたことから、なにかしら成果は出せるだろうと考えていたのだ。
だからヴェルナスとサラの関係にヤキモキしている眞子はアルヴァルトに「身分の問題がなくなればうまくいくから、変に口を出さないように」と忠告されていた。
実際には瘴気の魔物と思われる魔物には出会うことが出来なかったが、それでも瘴気の魔物に対応する何かしらの対策法をヴェルナスが持っているという。
だからこそ魔法研究所に向かって確かめようとしているのだ。
これでサラの昇級は確実。
そして爵位だって間違いなく貰える。
だから問題ない。
そう考えられるのだが、このまま意味が分からない前世親子の考えがサラにあり続けた場合、変なすれ違いが生れるだろうと眞子は考えていた。
だから眞子は眞子の考えをサラに伝えた。
眞子にもサラにも考え方がある。
そしてそれは人それぞれ違うということを伝えた結果、サラはヴェルナスの気持ちを決めつけることはしないと、ちゃんと話しあうことを約束してくれた。
頷いてくれたサラに眞子は目を輝かせた。
そして心の中で叫んだのだ。
(ラルク様!私やりました!!!)
ヴェルナスの兄ということもありラルクも弟の恋模様をそわそわしながらも見守っていた。
恋愛結婚で結ばれた両親を持つラルクだが、祖父の思惑で父親と母親は一時期離れてしまっていた。
今でもまだ母親は戻ってきてはいないが、それでも定期的に父親が会いに行っていることを知っている。
そんな両親をみて安堵したことは記憶に新しいが、幼いヴェルナスが祖父の仕出かしたことに巻き込まれ、心に傷を作る結果となってしまった事、兄として何もできなかったことが悔やまれた。
そんな時にヴェルナスを癒してくれた女性と、その女性に恋をした弟を応援したいと思っていたラルクは、眞子と共に下手に手を出してはいけないとわかっていながらも、気になっていたのだ。
後で眞子から事情を聞けば、ラルクの心も少しは晴れるだろうと眞子は考える。
何故なら、貴族と平民という身分差の問題に追加された、前世が絡む問題で余計に拗れようとしていたサラとヴェルナスの関係が、やっと明るくなったからだ。
勿論実際に爵位を貰えるまでは本当の意味で明るくなってはいないが、それでも問題が解決しそうな展開に眞子は心躍らせる。
(本当は、爵位の話をサラちゃんにしてあげたいんだけど……)
でもまだ決定事項ではない事は言わないほうがいい。
もし話が流れてしまったら、ぬか喜びさせてしまった分サラのショックは大きいだろうと考えられたからだ。
眞子は少し冷たくなったサラの手を握ってにこりと微笑む。
むずむずといってしまいたい口を必死で抑えながら、「早く片付いでくれたらいいね」とだけ呟いた。
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