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冒険者編③
15 恩賞式②
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その瞬間怒鳴る声が聞こえた。
「ありえません!!!」
王様よりも低い段の席に座っていた人物はツカツカと歩を進めアルヴァルト殿下の前に立ち塞がるように立つ。
その男は私も知っている人物だ。
第二王子であるエルフォンス殿下。
「大体何故今更になって聖女にしかできなかった浄化が他の者にもできるようになるんですか!?怪しい魔術でも使い、我々を騙そうとしているのではないでしょうか!?」
周りに訴えるかのように大きな声で話したエルフォンス殿下は、怒りで周りが見えていないようだった。
ざわざわと周りにいる貴族たちが口々にささやきあう。
またあの王子か
しょうがない。召喚しただけでなにも結果を残せなかったのだから
召喚だって王子がいなくてもできたことだったろう
あぁ、手柄を横取りしただけか
どうりで
あの王子がなにかできるとは思えないからな
出来るとしたら王太子の足を引っ張ることだけか
それも脅威ではないから可愛いものだな
だが式典の邪魔は流石にやりすぎだ
(なに、これ…どういうこと…?)
静かに見守っていた筈の貴族たちが、第二王子が乱入したことをきっかけに口々に話す言葉に私は絶句した。
王子だから甘やかされて来たんだなと、パーティーの時思っていた私は、蔑まれている第二王子をみて考えを改める。
周りに聞こえるように話す貴族たちをみて、このようなことは普通に行われてきたのだと思ったのだ。
だからこそこのような非難の中で育ってきたのなら、王子がアルヴァルト殿下に嫉妬するのは当然のことだと思う。
とはいえ、この現状を私にはどうしようもない。
第二王子の耳にだって届いているだろう話し声を、第二王子は気にする素振りもみせない。
「……既に調査は済んでいる。エルフォンス、そなたは調査報告書も読んでおらぬのか」
眉間に皺を寄せた王様がそう口にした。
周りからは何が面白いのかくすくすと小さく笑う声が聞こえてくる。
一見すると乱入した第二王子を王様は煩わしげに見ているようだが、どうもそうではなさそうだ。
困った様子は確かだが、どこか焦ったような、そして苦しそうな表情を浮かべている。
まるで周りにいいように言われている第二王子をなんとかしようとして、でもうまくできない不器用な人の表情みたいだ。
「勿論目を通しました!ですが腑に落ちなかったのです!何故我々の魔法を妨げるような結界を聖女様が張ったのか!我が国を救った聖女様が国を滅ぼすような行動に出たことが理解できなかったのです!それが解決できるまで恩賞式は行うべきではありません!」
第二王子は叫ぶ。
その言葉に同調するものや、非難するものと様々だったが多かったのは非難する言葉だった。
そんな中で第二王子は訴え続けていた。
「第一!今代聖女の力が不安定だというのも本当なのでしょうか!?なら何故陛下の誕生祭ではあれほど見事な力を見せることができたのでしょう!?」
第二王子は私たちを振り返る。
正しく言えば私を見るために振り返ったのだろう、ギッと睨む目つきは私を捕らえた。
「出発時に参加していなかった一介の冒険者が、タイミングよく調査に加わること自体不自然です!聖女に瓜二つなのもそうだ!事実を隠し全て都合のいいように騙し、丸め込もうとしているのではないですか!?」
王子が叫んだ後ザワザワとざわめいていた貴族たちが口を閉ざしたことで、場は静寂に包まれた。
「……話してもよろしいですか」
「………こうなった以上、仕方あるまい……」
アルヴァルト殿下に王様はそう答えた。
そして腰を上げてこの場に居る者たちに告げる。
「これより話す内容には箝口令を敷く。破った者全てを罪人として捕らえ、身分の剥奪を行うこと、しかと胸に刻むがいい!」
王様はそう言い放った後司会進行役の男性に視線を送った。
男性は頷くと謁見室にいた私達全てを覆う大きさの魔方陣を描く。
魔法陣の内容は全てを確認できたわけではないからはっきりとはいえないけど、通達という文字が刻み込まれていることから、外で誰かに漏らした瞬間通報がいくという仕掛けなのだろう。
っていうか、あの人司会進行役じゃなくて王様の側近的な立場だったのか。
学園で保管している本などにもこんな凄い魔方陣は記されていないから、あの人が作った魔方陣なのだと思った私は、王様の側近はやっぱり次元が違うなと尊敬の眼差しを男性に向ける。
魔法陣が消えた後、アルヴァルト殿下は口を開いた。
少しどよめいていた貴族たちはこれからどのような話がされるのかと、固唾を飲んで見守る。
「…エルフォンス、お前の言う通りだ。公にした内容には事実とは異なる内容が含まれていた」
アルヴァルト殿下の言葉に第二王子含め周りの貴族たちが驚愕する。
そしてレルリラとレルリラのお兄さんを除く特務隊の騎士たちも驚きの表情を浮かべていた。
当たり前だ。騎士たちを除いて話していたのだから。
「やはり…!我々を騙そうとしたのですね!!?」
「言葉を慎め、エルフォンス。これは私だけの意思ではなく、陛下もお認めになった事だ」
「なッ…!」
「ありえません!!!」
王様よりも低い段の席に座っていた人物はツカツカと歩を進めアルヴァルト殿下の前に立ち塞がるように立つ。
その男は私も知っている人物だ。
第二王子であるエルフォンス殿下。
「大体何故今更になって聖女にしかできなかった浄化が他の者にもできるようになるんですか!?怪しい魔術でも使い、我々を騙そうとしているのではないでしょうか!?」
周りに訴えるかのように大きな声で話したエルフォンス殿下は、怒りで周りが見えていないようだった。
ざわざわと周りにいる貴族たちが口々にささやきあう。
またあの王子か
しょうがない。召喚しただけでなにも結果を残せなかったのだから
召喚だって王子がいなくてもできたことだったろう
あぁ、手柄を横取りしただけか
どうりで
あの王子がなにかできるとは思えないからな
出来るとしたら王太子の足を引っ張ることだけか
それも脅威ではないから可愛いものだな
だが式典の邪魔は流石にやりすぎだ
(なに、これ…どういうこと…?)
静かに見守っていた筈の貴族たちが、第二王子が乱入したことをきっかけに口々に話す言葉に私は絶句した。
王子だから甘やかされて来たんだなと、パーティーの時思っていた私は、蔑まれている第二王子をみて考えを改める。
周りに聞こえるように話す貴族たちをみて、このようなことは普通に行われてきたのだと思ったのだ。
だからこそこのような非難の中で育ってきたのなら、王子がアルヴァルト殿下に嫉妬するのは当然のことだと思う。
とはいえ、この現状を私にはどうしようもない。
第二王子の耳にだって届いているだろう話し声を、第二王子は気にする素振りもみせない。
「……既に調査は済んでいる。エルフォンス、そなたは調査報告書も読んでおらぬのか」
眉間に皺を寄せた王様がそう口にした。
周りからは何が面白いのかくすくすと小さく笑う声が聞こえてくる。
一見すると乱入した第二王子を王様は煩わしげに見ているようだが、どうもそうではなさそうだ。
困った様子は確かだが、どこか焦ったような、そして苦しそうな表情を浮かべている。
まるで周りにいいように言われている第二王子をなんとかしようとして、でもうまくできない不器用な人の表情みたいだ。
「勿論目を通しました!ですが腑に落ちなかったのです!何故我々の魔法を妨げるような結界を聖女様が張ったのか!我が国を救った聖女様が国を滅ぼすような行動に出たことが理解できなかったのです!それが解決できるまで恩賞式は行うべきではありません!」
第二王子は叫ぶ。
その言葉に同調するものや、非難するものと様々だったが多かったのは非難する言葉だった。
そんな中で第二王子は訴え続けていた。
「第一!今代聖女の力が不安定だというのも本当なのでしょうか!?なら何故陛下の誕生祭ではあれほど見事な力を見せることができたのでしょう!?」
第二王子は私たちを振り返る。
正しく言えば私を見るために振り返ったのだろう、ギッと睨む目つきは私を捕らえた。
「出発時に参加していなかった一介の冒険者が、タイミングよく調査に加わること自体不自然です!聖女に瓜二つなのもそうだ!事実を隠し全て都合のいいように騙し、丸め込もうとしているのではないですか!?」
王子が叫んだ後ザワザワとざわめいていた貴族たちが口を閉ざしたことで、場は静寂に包まれた。
「……話してもよろしいですか」
「………こうなった以上、仕方あるまい……」
アルヴァルト殿下に王様はそう答えた。
そして腰を上げてこの場に居る者たちに告げる。
「これより話す内容には箝口令を敷く。破った者全てを罪人として捕らえ、身分の剥奪を行うこと、しかと胸に刻むがいい!」
王様はそう言い放った後司会進行役の男性に視線を送った。
男性は頷くと謁見室にいた私達全てを覆う大きさの魔方陣を描く。
魔法陣の内容は全てを確認できたわけではないからはっきりとはいえないけど、通達という文字が刻み込まれていることから、外で誰かに漏らした瞬間通報がいくという仕掛けなのだろう。
っていうか、あの人司会進行役じゃなくて王様の側近的な立場だったのか。
学園で保管している本などにもこんな凄い魔方陣は記されていないから、あの人が作った魔方陣なのだと思った私は、王様の側近はやっぱり次元が違うなと尊敬の眼差しを男性に向ける。
魔法陣が消えた後、アルヴァルト殿下は口を開いた。
少しどよめいていた貴族たちはこれからどのような話がされるのかと、固唾を飲んで見守る。
「…エルフォンス、お前の言う通りだ。公にした内容には事実とは異なる内容が含まれていた」
アルヴァルト殿下の言葉に第二王子含め周りの貴族たちが驚愕する。
そしてレルリラとレルリラのお兄さんを除く特務隊の騎士たちも驚きの表情を浮かべていた。
当たり前だ。騎士たちを除いて話していたのだから。
「やはり…!我々を騙そうとしたのですね!!?」
「言葉を慎め、エルフォンス。これは私だけの意思ではなく、陛下もお認めになった事だ」
「なッ…!」
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