「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん

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㉗夢を見ました

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■(視点変更 ⇒メアリー)


夢を見ました。
とても幸せで、美しい夢を。





夢の中で私は一人いました。
白いワンピースをきて、白い空間に一人ぼっちでいました。
誰もいない、何の音もしない、何も見えない、ただただ白だけが広がる世界に私は一人でいました。

ですが、白い世界に二人の男女が現れました。

男女はシルエットだけでどのような容姿をしているのかわかりません。
ですが、お互いに手を取り合い、唯一確認できた口元は笑みを浮かべていて、とても幸せそうに見えました。

私はそのお二方をじっと見つめていました。

するとおもむろに男性が両腕を前に向かって伸ばしました。
私は不思議に思いながら眺めていると、どこからとりだしたのか男性の手に剣が現れたのです。
そして素振りをする男性を、女性はじっと眺めていました。

暫くすると男性は汗をかいたのか、素振りを中断し女性の隣へと戻ります。
女性は立ち上がり、剣のように突然現れた布を男性に手渡しました。
笑みを見せる男性に、女性は頬を赤らませます。

そんな二人の間に、今度は一人の赤ん坊が現れました。
女性の腕の中で静かに眠る赤ん坊を、男性は覗き込みます。

愛おしい。

そんな感情が伝わってくるようでした。

私は羨ましいと、そう感じていました。
そして三人の様子を一人で眺めているのが辛くもありました。

いつの間にか私の目からは涙が流れ、頬を伝っていました。

手で顔を覆い私は涙を流しました。
なぜ私は一人なのか、一人でいるのは辛いと、心が叫んでいました。

シクシク泣いていると、ふと近くに人の気配を感じます。

私は止まらない涙を流しながら顔をあげました。

やはりシルエットだけで、確認できるのは口元だけの不思議な三人が私の目の前にいました。
恐怖はありませんでした。
それよりも、私を迎えに来てくれたのかと、そう私は期待していたのです。

女性は男性に赤ん坊を預けると、私に手を伸ばしました。
私は躊躇うことなくその手を掴みました。

『********。**********』

手を掴んだ私に女性はいいました。
私は女性の言葉を聞いて、後ろを振り返りました。
流れていた涙は止まり、そしてやっと笑えたのです。

一人だと思い込んでいた私は、本当は一人ではなかったことに気付けたのです。






目を覚ますとここ一月で“見慣れた”天井が視界に入りました。

「あれ…私…」

いつもより怠さが消えている体を起こし、辺りを見渡します。

「確か、ミレーナ様に叩かれ、倒れて……気を失ったはず……。いつ、部屋へと戻ってきたの…?」

ひとまず“仕事”をしなければとベッドから降り、ハンガーラックに掛けていたメイド服に着替える為に場所を移動しようとすると、トントントンとノック音が聞こえてきました。
私は着替えるのをやめ、扉までいき、自ら開けます。

「目を覚ましたんですな」

そういって微笑むのは、白衣をきたおじいさんでした。
といっても見覚えがない人物に、私は首を傾げつつも名を名乗ります。

「初めまして、私はメアリー・デルオと申します」
「……これはご丁寧にありがとうございます。
私はデルオ公爵家の主治医、イルガーと申します。
この度は奥様の診察の為に伺わせていただきました」
「まぁ、デルオ公爵家の主治医ということはアルベルト様のご実家の…、わざわざお越しいただきありがとうございます」
「いえいえ、構いませんよ。
アルベルト様も家を出ていますが、公爵家の一員であることは変わりません。そしてそれはアルベルト様の奥様であるメアリー様も同様です」

物腰柔らかそうにそういわれ、私はほっと胸を撫で下ろしました。
白衣を着て、片手に鞄を持っていることから、清潔にしなければいけないようなお仕事をしている方というあたりをつけていましたが、それでもデルオ公爵家の主治医であることは考えもしなかったからです。
そして部屋の前に立つ、シェフのコニー・レンズにも声を掛けて、私は部屋にイルガー先生を通しました。
私がレンズの名前を知っていたのは、彼が毎食夜遅くまで待ってくれていた人でもあるからです。
私が"仕事"をしていた中、一番顔を合わせて話をしていたからこそ、名前を間違えて覚えていないか、唯一尋ねさせていただきました。

「…あの、私の診察とは…」
「ああ、はい。といっても既に済んでいますので、結果からお伝えしましょう。
まず奥様の体の状態ですが___」

そうしてイルガー先生から説明を受け、私はとても驚きました。

なんとなく体が熱っぽい、だるさを感じていると思っていましたが、それがまさか新しい命を宿していることが原因であると思ってもいなかったからです。

そして妊娠しているということよりも驚いたのは、私が少しの間とはいえ、全ての記憶を失っていたという事。
その状態でアルベルト様にお会いし、傷つけたというのですから、心臓が止まるほどに驚きました。



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