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マリアの美しさは噂で聞いていたが、実際に目にすると噂は嘘だったのだと気づく。
なぜなら彼女は噂以上の美しさを持っていたからだ。
「ブルーノさん。少しお酒でも飲みながら話しませんか? 妹のこと」
僕は彼女の誘いに軽々と乗ってしまった。
彼女の美しさにあてられたのか、それとも酒の香りに惑わされたのか。
はっきりとは言えなかったが、僕はサラと婚約していることなど忘れて、彼女に夢中になった。
マリアと男女の仲になったことは秘密だった。
しかし彼女が家を出ていってしまったのはショックだった。
もう一度彼女に会いたい、あの柔らかな肌に触れたい……その思いで、頻繁に家に行った。
サラは自分に会いに来てくれていると思っていたようだが、生憎、僕の心の中はマリアでいっぱいだった。
そんな折、マリアから手紙が突然届いた。
そこには僕の子供を妊娠したという趣旨の文章が書かれていて、今は実家に帰ったと書いてあった。
僕は居ても立っても居られなくなり、家を飛び出し、彼女の家に向かった。
確かに彼女は妊娠していて、それを見た瞬間、サラのことなどは完全に頭から消えた。
その後、僕はサラと婚約破棄をして、マリアと婚約をした。
彼女の両親はマリアの方を溺愛していたので、非難を飛ばしてくることもなく、むしろ歓迎といった様子だった。
僕は愛する人と結ばれ、幸せになった……はずだった。
マリアと婚約して少しして、僕は本当に彼女のお腹の子が自分の子なのか気になり出した。
マリアは毎日のように僕に愛を囁いてくれるが、僕がいない時間を見計らってどこかに出かけているのを知っていたから。
使用人からその話を聞いた時は大して気にしていなかったが、次第に気になりはじめ、仕事の間中もそのことばかり考えてしまう。
このままではいけないと思った僕は、秘かに彼女のことを調べることにした。
仕事だと嘘をついて家を出て、裏口からこっそり家の中に戻る。
使用人たちの協力も得ながら、マリアが家を出て行くまで、家の中に身を潜めていた。
彼女が玄関を出て行くと、僕は裏口から家を出て、こっそりと彼女の後をつける。
赤ん坊を宿した体で彼女は馬車に乗り込み、どこかへ出かけていく。
僕はもう一台の馬車に乗り込み、彼女の後を追った。
……しばらくすると、マリアが乗った馬車が教会の前で止まった。
街でも一番大きな教会で、毎日たくさんの人でにぎわっている。
少し離れた所に僕は馬車を停めると、マリアが馬車から降りたのを見計らって、自分も馬車を降りた。
行先が教会であると知って、僕は少しだけほっとしていた。
きっと無事に出産できることを祈りにきたのだ。
だが念のため、最後まで後はつけてみよう。
マリアは教会の中に入ると、空いて椅子を見つけて座った。
僕も彼女に見つからないようにその後ろに腰かける。
自分が悪いことをしているみたいでドキドキしたが、その内声をかけて驚かそうと思っていた。
きっと彼女は呆れた顔で笑うだろう。
さて、声をかけようかなと口を開いた時、マリアの隣に男性が座った。
マリアは彼を見ると頬を赤らめ、腕にしがみついた。
「ケビン……やっと来てくれた……私の最愛の人……」
「俺もだよマリア。愛してる」
「ふふっ、私たちの子も順調に成長しているし、産まれるのが楽しみね」
「そうだな」
僕は唖然とした。
そして全てを悟った。
彼女は僕の子など妊娠していなかったのだ。
なぜなら彼女は噂以上の美しさを持っていたからだ。
「ブルーノさん。少しお酒でも飲みながら話しませんか? 妹のこと」
僕は彼女の誘いに軽々と乗ってしまった。
彼女の美しさにあてられたのか、それとも酒の香りに惑わされたのか。
はっきりとは言えなかったが、僕はサラと婚約していることなど忘れて、彼女に夢中になった。
マリアと男女の仲になったことは秘密だった。
しかし彼女が家を出ていってしまったのはショックだった。
もう一度彼女に会いたい、あの柔らかな肌に触れたい……その思いで、頻繁に家に行った。
サラは自分に会いに来てくれていると思っていたようだが、生憎、僕の心の中はマリアでいっぱいだった。
そんな折、マリアから手紙が突然届いた。
そこには僕の子供を妊娠したという趣旨の文章が書かれていて、今は実家に帰ったと書いてあった。
僕は居ても立っても居られなくなり、家を飛び出し、彼女の家に向かった。
確かに彼女は妊娠していて、それを見た瞬間、サラのことなどは完全に頭から消えた。
その後、僕はサラと婚約破棄をして、マリアと婚約をした。
彼女の両親はマリアの方を溺愛していたので、非難を飛ばしてくることもなく、むしろ歓迎といった様子だった。
僕は愛する人と結ばれ、幸せになった……はずだった。
マリアと婚約して少しして、僕は本当に彼女のお腹の子が自分の子なのか気になり出した。
マリアは毎日のように僕に愛を囁いてくれるが、僕がいない時間を見計らってどこかに出かけているのを知っていたから。
使用人からその話を聞いた時は大して気にしていなかったが、次第に気になりはじめ、仕事の間中もそのことばかり考えてしまう。
このままではいけないと思った僕は、秘かに彼女のことを調べることにした。
仕事だと嘘をついて家を出て、裏口からこっそり家の中に戻る。
使用人たちの協力も得ながら、マリアが家を出て行くまで、家の中に身を潜めていた。
彼女が玄関を出て行くと、僕は裏口から家を出て、こっそりと彼女の後をつける。
赤ん坊を宿した体で彼女は馬車に乗り込み、どこかへ出かけていく。
僕はもう一台の馬車に乗り込み、彼女の後を追った。
……しばらくすると、マリアが乗った馬車が教会の前で止まった。
街でも一番大きな教会で、毎日たくさんの人でにぎわっている。
少し離れた所に僕は馬車を停めると、マリアが馬車から降りたのを見計らって、自分も馬車を降りた。
行先が教会であると知って、僕は少しだけほっとしていた。
きっと無事に出産できることを祈りにきたのだ。
だが念のため、最後まで後はつけてみよう。
マリアは教会の中に入ると、空いて椅子を見つけて座った。
僕も彼女に見つからないようにその後ろに腰かける。
自分が悪いことをしているみたいでドキドキしたが、その内声をかけて驚かそうと思っていた。
きっと彼女は呆れた顔で笑うだろう。
さて、声をかけようかなと口を開いた時、マリアの隣に男性が座った。
マリアは彼を見ると頬を赤らめ、腕にしがみついた。
「ケビン……やっと来てくれた……私の最愛の人……」
「俺もだよマリア。愛してる」
「ふふっ、私たちの子も順調に成長しているし、産まれるのが楽しみね」
「そうだな」
僕は唖然とした。
そして全てを悟った。
彼女は僕の子など妊娠していなかったのだ。
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