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モンドは私の実家の向かいの家に住んでいた。
家族ぐるみで仲が良くて、私とモンドが一緒に遊ぶようになるのも必然だった。
モンドは穏やかな性格で、やんちゃな同世代の男の子と比べると幾分大人に見えた。
そんな彼と過ごす時間は楽しくて、いつも時はあっというまに過ぎていた。
「エミリア。大丈夫だからね」
夫の浮気現場を涙ながらに見つめる私の肩に、モンドの手が触れる。
彼の手は温かく、私を包み込んでくれるようだった。
もし彼と結婚していたら、この未来は変わっただろうか。
「ああ、ローラ! 好きだ! 愛している!」
「私もですダリア様! もっと私を愛して!」
二人の行為はどんどん過激になり、私たちにまで聞こえる声で愛を叫び始めた。
見ていてやはり辛い気持ちが大きかったが、自分でも気づかないくらい、心の隅では怒りがくすぶっていた。
何とか意識を保って二人の行為を見ていられるのも、事前にモンドが写真を見せてくれたからだろう。
「モンド……そろそろいいかしら?」
もう潮時だと思った。
これ以上二人の逢瀬を見ていてもただ怒りと悲しみが増えていくだけだし、素直なことを言うと気持ちが悪かった。
早くこの時間を終わらせて、すっきりとした気持ちになりたかった。
「ああ。君がよければいつでも」
モンドは緊張した声でそう言った。
いつも穏やかな彼だが、今回ばかりはそうでもいられないようだ。
唇が微かに震えていて、緊張がこちらまで伝わってくる。
「じゃあ行こう」
私はそう言うと、立ち上がった。
モンドも私に続き立ち上がる。
逢瀬の最中の二人は私たちには気づかない様子で、夢中でキスをしていた。
私たちが少しずつ近づいていくと、最初に気づいたのはダリアの方だった。
「え……な、なんでお前が!!!」
彼の言葉にローラも驚いたようにこちらに目を向けた。
そして私の顔を見て、さっと青ざめる。
どうやらダリアに私という妻がいることは承知の上だったみたいだ。
「エミリア……こ、これは違うんだ……お前が思っているようなことは何もないんだ……」
そんな嘘に騙されるほど、私は馬鹿ではない。
先ほどから二人の逢瀬はしっかりと目に焼き付けていたのだ。
全く動じない私を見て、ダリアは焦ったように言い訳を並べる。
「そ、そうだ……これは演劇の練習なんだよ! ここにいるローラと演劇をすることになってな! その練習をしていたんだよ! な、ローラ?」
「そ、その通りです! わ、私がヒロインで、ダリア様が主役!」
バレバレの嘘にため息をつくと、私は口を開く。
「では、その演技はいつ開催されるのですか? 詳しい詳細を教えて頂けますか?」
私の質問に真っ青になった二人だが、意を決したようにダリアが言った。
「実はまだ計画段階で、日にちや場所は決まっていないんだ……」
「なるほど……」
私は笑顔を浮かべる。
しかし次の瞬間には、全身全霊で顔を歪め、浮気した夫を睨みつける。
「そんな嘘が通じると本気で思っているのですか? 私たちは数分前からここであなたたちを見ていましたけれど、演劇でも何でもありませんよね? ただの逢瀬ですよね?」
私の言葉に、更に二人の顔が青くなる。
もう私の心の中からは悲しみは消えていた。
あるのは身を焼くような怒りだけだ。
私は息を吸い込むと、怒りを込めて宣言した。
「ダリア様。あなたとは離婚させて頂きます」
家族ぐるみで仲が良くて、私とモンドが一緒に遊ぶようになるのも必然だった。
モンドは穏やかな性格で、やんちゃな同世代の男の子と比べると幾分大人に見えた。
そんな彼と過ごす時間は楽しくて、いつも時はあっというまに過ぎていた。
「エミリア。大丈夫だからね」
夫の浮気現場を涙ながらに見つめる私の肩に、モンドの手が触れる。
彼の手は温かく、私を包み込んでくれるようだった。
もし彼と結婚していたら、この未来は変わっただろうか。
「ああ、ローラ! 好きだ! 愛している!」
「私もですダリア様! もっと私を愛して!」
二人の行為はどんどん過激になり、私たちにまで聞こえる声で愛を叫び始めた。
見ていてやはり辛い気持ちが大きかったが、自分でも気づかないくらい、心の隅では怒りがくすぶっていた。
何とか意識を保って二人の行為を見ていられるのも、事前にモンドが写真を見せてくれたからだろう。
「モンド……そろそろいいかしら?」
もう潮時だと思った。
これ以上二人の逢瀬を見ていてもただ怒りと悲しみが増えていくだけだし、素直なことを言うと気持ちが悪かった。
早くこの時間を終わらせて、すっきりとした気持ちになりたかった。
「ああ。君がよければいつでも」
モンドは緊張した声でそう言った。
いつも穏やかな彼だが、今回ばかりはそうでもいられないようだ。
唇が微かに震えていて、緊張がこちらまで伝わってくる。
「じゃあ行こう」
私はそう言うと、立ち上がった。
モンドも私に続き立ち上がる。
逢瀬の最中の二人は私たちには気づかない様子で、夢中でキスをしていた。
私たちが少しずつ近づいていくと、最初に気づいたのはダリアの方だった。
「え……な、なんでお前が!!!」
彼の言葉にローラも驚いたようにこちらに目を向けた。
そして私の顔を見て、さっと青ざめる。
どうやらダリアに私という妻がいることは承知の上だったみたいだ。
「エミリア……こ、これは違うんだ……お前が思っているようなことは何もないんだ……」
そんな嘘に騙されるほど、私は馬鹿ではない。
先ほどから二人の逢瀬はしっかりと目に焼き付けていたのだ。
全く動じない私を見て、ダリアは焦ったように言い訳を並べる。
「そ、そうだ……これは演劇の練習なんだよ! ここにいるローラと演劇をすることになってな! その練習をしていたんだよ! な、ローラ?」
「そ、その通りです! わ、私がヒロインで、ダリア様が主役!」
バレバレの嘘にため息をつくと、私は口を開く。
「では、その演技はいつ開催されるのですか? 詳しい詳細を教えて頂けますか?」
私の質問に真っ青になった二人だが、意を決したようにダリアが言った。
「実はまだ計画段階で、日にちや場所は決まっていないんだ……」
「なるほど……」
私は笑顔を浮かべる。
しかし次の瞬間には、全身全霊で顔を歪め、浮気した夫を睨みつける。
「そんな嘘が通じると本気で思っているのですか? 私たちは数分前からここであなたたちを見ていましたけれど、演劇でも何でもありませんよね? ただの逢瀬ですよね?」
私の言葉に、更に二人の顔が青くなる。
もう私の心の中からは悲しみは消えていた。
あるのは身を焼くような怒りだけだ。
私は息を吸い込むと、怒りを込めて宣言した。
「ダリア様。あなたとは離婚させて頂きます」
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