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僧侶は部屋の調度品を倒しながら、壁に激突してうめいた。
対して比奈は状況が理解できず、涙で濡れる目を瞬かせる。
「比奈!」
「れい、めい、さま?」
比奈を助けたのは、黎明だった。彼は彼女の乱れた着物を見て、全身に怒気をまとわせる。しかし、すぐに比奈を抱き起こし、自分の羽織を脱いで、乱れた部分を覆うようにかけた。
「う、うぅぅぅ」
「部屋の中では分が悪いな。外に出るぞ」
黎明は比奈を抱き上げて、庭に出る。そして草陰にそっと、彼女を下ろした。
「ごめんな。やっぱり、夜は来るべきだった。そうすれば、比奈に怖い思いをさせずにすんだ。遅くなって、ごめん」
黎明は悲痛な顔で、比奈の涙をぬぐう。だが比奈は呆然と、彼の頭を見ていた。
「比奈?」
あまりにも比奈の視線が微動だにしないので、黎明は彼女の視線を追うように、頭に手をやる。すると、鬼の角に触れた。
「あ、やべ。今日は薬、飲んでなかった」
そこでようやく、黎明は鬼の姿であることを、思い出した。
「おのれぇぇ。その娘は、わたしの獲物だぞぉぉ」
「ヒッ」
部屋の中から僧侶の不気味が声が響き、比奈は思わず黎明にしがみついた。
黎明は彼女を抱きしめながら、敵を睨みつける。彼の怒りに呼応するかのように、金色の瞳がきらりと輝く。
「よごぜぇ。ぞのむずめを、よごぜえぇぇ!!」
「化けの皮が剥がれたか」
僧侶の肌は赤黒く染まり、口が耳元まで大きく裂けていた。身体も一回り以上、大きくなり、獣のような雄叫びをあげる。
「れ、黎明様っ」
「大丈夫だ、比奈」
怯える比奈を、黎明は抱きしめる腕に力をこめ、そっと彼女の頬に手を添える。
「おまえのことは、俺が絶対に守るから。ヤツにはもう指一本、触れさせねぇし、近づけさせもしねぇ。だから俺を信じて、ここにいてくれ」
黎明の強い意思を感じ、比奈は彼の手に触れて、こくりと頷く。
「……信じております。黎明様ならば、絶対に大丈夫だと」
比奈から信頼を寄せた瞳を向けられ、場違いと思いながらも、黎明は頬を赤く染めた。
(可愛い……。いやいやいや。俺はこんな時に、なにを考えてんだ!)
ごほんっと咳払いをして、気持ちを切り替えて頷く。
黎明は比奈のそっと放し、敵と対峙する。
「童子切、手を貸してくれよ」
黎明がそう言って、刀を抜いた。すると童子切は主人の思いに答えるよう、鈍色に光る。
「があぁぁぁぁ!!」
僧侶であった化物は叫びながら、鋭い爪で黎明を切り裂こうと、飛びかかる。
「鬼である俺と真っ向から殺り合って、勝てると思ってんのか? 格が知れる」
黎明はそう呟くと、一気に距離を詰める。
敵の爪を弾き、がら空きになった腹に拳を叩き込む。
「ぐがあぁぁ!」
僧侶は悲鳴を上げて吹っ飛ぶが、空中で体勢を立て直し、四つん這いで地面に着地。
「ふん。正面からぶつかってくるだけはあるな。咄嗟の判断力は良し」
黎明は敵の動きに、称賛を送る。彼の口許は、戦いが楽しいというように、口角が上がっていた。
「がああぁぁぁ!!」
再び化物は黎明に飛び掛かる。
「だが、動きが単調過ぎる。そんなんじゃ、俺に触れることすら叶わねぇよ」
黎明の視界の隅に、比奈が祈るように手を組んでいるのが見えた。
(比奈のためにも、とっとと片付けるか)
黎明は腰を落とし、重心を下げ、得意の抜刀の構えを取る。
「これでしまいだ!」
黎明と敵が交差した。
どさっ
音を立てて地面に倒れたのは、化物のほうだった。
「所詮はこの程度か。たわいのない」
黎明は左手に鬼火を灯すと、死体に向けて投げた。死体は瞬く間に、灰すら残さず焼き尽くされる。
対して比奈は状況が理解できず、涙で濡れる目を瞬かせる。
「比奈!」
「れい、めい、さま?」
比奈を助けたのは、黎明だった。彼は彼女の乱れた着物を見て、全身に怒気をまとわせる。しかし、すぐに比奈を抱き起こし、自分の羽織を脱いで、乱れた部分を覆うようにかけた。
「う、うぅぅぅ」
「部屋の中では分が悪いな。外に出るぞ」
黎明は比奈を抱き上げて、庭に出る。そして草陰にそっと、彼女を下ろした。
「ごめんな。やっぱり、夜は来るべきだった。そうすれば、比奈に怖い思いをさせずにすんだ。遅くなって、ごめん」
黎明は悲痛な顔で、比奈の涙をぬぐう。だが比奈は呆然と、彼の頭を見ていた。
「比奈?」
あまりにも比奈の視線が微動だにしないので、黎明は彼女の視線を追うように、頭に手をやる。すると、鬼の角に触れた。
「あ、やべ。今日は薬、飲んでなかった」
そこでようやく、黎明は鬼の姿であることを、思い出した。
「おのれぇぇ。その娘は、わたしの獲物だぞぉぉ」
「ヒッ」
部屋の中から僧侶の不気味が声が響き、比奈は思わず黎明にしがみついた。
黎明は彼女を抱きしめながら、敵を睨みつける。彼の怒りに呼応するかのように、金色の瞳がきらりと輝く。
「よごぜぇ。ぞのむずめを、よごぜえぇぇ!!」
「化けの皮が剥がれたか」
僧侶の肌は赤黒く染まり、口が耳元まで大きく裂けていた。身体も一回り以上、大きくなり、獣のような雄叫びをあげる。
「れ、黎明様っ」
「大丈夫だ、比奈」
怯える比奈を、黎明は抱きしめる腕に力をこめ、そっと彼女の頬に手を添える。
「おまえのことは、俺が絶対に守るから。ヤツにはもう指一本、触れさせねぇし、近づけさせもしねぇ。だから俺を信じて、ここにいてくれ」
黎明の強い意思を感じ、比奈は彼の手に触れて、こくりと頷く。
「……信じております。黎明様ならば、絶対に大丈夫だと」
比奈から信頼を寄せた瞳を向けられ、場違いと思いながらも、黎明は頬を赤く染めた。
(可愛い……。いやいやいや。俺はこんな時に、なにを考えてんだ!)
ごほんっと咳払いをして、気持ちを切り替えて頷く。
黎明は比奈のそっと放し、敵と対峙する。
「童子切、手を貸してくれよ」
黎明がそう言って、刀を抜いた。すると童子切は主人の思いに答えるよう、鈍色に光る。
「があぁぁぁぁ!!」
僧侶であった化物は叫びながら、鋭い爪で黎明を切り裂こうと、飛びかかる。
「鬼である俺と真っ向から殺り合って、勝てると思ってんのか? 格が知れる」
黎明はそう呟くと、一気に距離を詰める。
敵の爪を弾き、がら空きになった腹に拳を叩き込む。
「ぐがあぁぁ!」
僧侶は悲鳴を上げて吹っ飛ぶが、空中で体勢を立て直し、四つん這いで地面に着地。
「ふん。正面からぶつかってくるだけはあるな。咄嗟の判断力は良し」
黎明は敵の動きに、称賛を送る。彼の口許は、戦いが楽しいというように、口角が上がっていた。
「がああぁぁぁ!!」
再び化物は黎明に飛び掛かる。
「だが、動きが単調過ぎる。そんなんじゃ、俺に触れることすら叶わねぇよ」
黎明の視界の隅に、比奈が祈るように手を組んでいるのが見えた。
(比奈のためにも、とっとと片付けるか)
黎明は腰を落とし、重心を下げ、得意の抜刀の構えを取る。
「これでしまいだ!」
黎明と敵が交差した。
どさっ
音を立てて地面に倒れたのは、化物のほうだった。
「所詮はこの程度か。たわいのない」
黎明は左手に鬼火を灯すと、死体に向けて投げた。死体は瞬く間に、灰すら残さず焼き尽くされる。
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