47 / 319
グッドタイミング
しおりを挟む
「ちきしょう。俺たちにはどうしてやることも出来ねえ。このまま様子を見るしかないのか」
「しばらく安静にするのが最善でしょうかね」
桂坂さんも医学の知識はなさそうだから、皆対応に困っている状況だ。
思わぬトラブルに見舞われたためバタバタしていたせいで、僕は時間のことをすっかり忘れていた。時計を見たときにはもう1時までわずかだった。
「もう時間ですけど、どうしましょう?」
僕はスカウトさんに指示を仰いだ。
「ここにいたって何も出来ねえ。農家さんのことは俺と料子さんでみてるから、健太と優子ちゃんは予定通り行ってくれ」
「分かりました。桂坂さん、ちょっと急ぐよ!」
僕は桂坂さんを促して急いで家を出た。
「ごめん。先に行くよ」
出現時間に遅れるのはよくない。下手するとどこかに移動して会えなくなるおそれもあるからだ。僕は桂坂さんを置いてでも走って行ったほうがいいと判断した。久しぶりに森の中を全力で駆けた。
例の場所までたどり着いたときには、すでに次なる来訪者が姿を見せていた。ただまだ白い靄の残骸らしきものもあり、それは到着したばかりというのを物語っていた。
新しき人は、驚いたことに白い服を着ていた。ナース服だ! ケースも抱えている。
「あの……」
僕は急いで駆け寄ると、なるべくびっくりさせないようやんわりと声を掛けた。
「あっ」
僕の声を聞いて振り返った彼女は驚いた声をあげた。
「あなたは……」
「僕は怪しいものじゃありません。田所健太っていいます。ちょっと驚いたと思いますが、冷静に聞いてください」
僕は手短に状況を説明した。彼女は大人しく聞いてくれた。こんな訳の分からない場所に放り出されて、とりあえず、話を聞かなければと思ったのだろう。
そうこうしているうちに、桂坂さんが追いついてきた。新しい彼女は、桂坂さんの姿を見て、少しほっとした表情を見せた。やはり、同性の存在は安心するのだろう。
桂坂さんからもあらためて説明を受け、彼女はようやく今の事実を理解したようだ。
「私は深沢亜希っていいます。看護士やってます」
「ナースさんですよね。そしたら丁度いい。僕たちと一緒にいますぐ来てもらえませんか」
僕のいきなりの発言に、亜希さんは警戒する様子を見せた。森の中の白衣の天使というのは、ややシュールな光景ではあるが、これが紛れもない現実だからおそろしい。
「ちょっといったところに家があって、そこに仲間がいるんですが、さっき急病人が出ちゃって。あなたに診て欲しいんです」
「しばらく安静にするのが最善でしょうかね」
桂坂さんも医学の知識はなさそうだから、皆対応に困っている状況だ。
思わぬトラブルに見舞われたためバタバタしていたせいで、僕は時間のことをすっかり忘れていた。時計を見たときにはもう1時までわずかだった。
「もう時間ですけど、どうしましょう?」
僕はスカウトさんに指示を仰いだ。
「ここにいたって何も出来ねえ。農家さんのことは俺と料子さんでみてるから、健太と優子ちゃんは予定通り行ってくれ」
「分かりました。桂坂さん、ちょっと急ぐよ!」
僕は桂坂さんを促して急いで家を出た。
「ごめん。先に行くよ」
出現時間に遅れるのはよくない。下手するとどこかに移動して会えなくなるおそれもあるからだ。僕は桂坂さんを置いてでも走って行ったほうがいいと判断した。久しぶりに森の中を全力で駆けた。
例の場所までたどり着いたときには、すでに次なる来訪者が姿を見せていた。ただまだ白い靄の残骸らしきものもあり、それは到着したばかりというのを物語っていた。
新しき人は、驚いたことに白い服を着ていた。ナース服だ! ケースも抱えている。
「あの……」
僕は急いで駆け寄ると、なるべくびっくりさせないようやんわりと声を掛けた。
「あっ」
僕の声を聞いて振り返った彼女は驚いた声をあげた。
「あなたは……」
「僕は怪しいものじゃありません。田所健太っていいます。ちょっと驚いたと思いますが、冷静に聞いてください」
僕は手短に状況を説明した。彼女は大人しく聞いてくれた。こんな訳の分からない場所に放り出されて、とりあえず、話を聞かなければと思ったのだろう。
そうこうしているうちに、桂坂さんが追いついてきた。新しい彼女は、桂坂さんの姿を見て、少しほっとした表情を見せた。やはり、同性の存在は安心するのだろう。
桂坂さんからもあらためて説明を受け、彼女はようやく今の事実を理解したようだ。
「私は深沢亜希っていいます。看護士やってます」
「ナースさんですよね。そしたら丁度いい。僕たちと一緒にいますぐ来てもらえませんか」
僕のいきなりの発言に、亜希さんは警戒する様子を見せた。森の中の白衣の天使というのは、ややシュールな光景ではあるが、これが紛れもない現実だからおそろしい。
「ちょっといったところに家があって、そこに仲間がいるんですが、さっき急病人が出ちゃって。あなたに診て欲しいんです」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる