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ナースさん
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桂坂さんがそう説明すると、亜希さんは「まあ」と驚いて、僕たちについてくることを二つ返事で了承した。こんな場面でも、職業人としての責務を忘れないあたり、きっと献身的に働く真面目な看護士なんだろう。僕らは小走り気味に走り出した。でもナース姿なので無闇に走ってくるわけにもいかず、亜希さんのスピードに合わせる形ではあったものの、僕たち三人は何とか家にたどり着いた。
「料子さん、農家さんの様子はどうですか!」
僕は家に駆け込むなり、農家さんの容態を尋ねた。
「あ、健太君。農家さんはさっきと変わらないわ。あれから吐いてはいないけど、お腹の痛みは続いてるみたい」
料子さんがそう報告してくれたのと同時に、亜希さんも桂坂さんと一緒に入ってきた。
「あ!」
料子さんがナース姿を見て、驚きの声を上げる。
「あ、あなた、ナースさんなの?」
「は、はい」
「ちょうどいいわ! お願い、この人を診て欲しいの」
亜希さんは、一目で事情を悟ったようだ。一応、腹が痛くなったというのは桂坂さんが道すがら伝えているはずだ。
「はい。あまり医療道具とか揃ってないのでどこまで診れるか分かりませんが、やってみます」
「お願いするわ」
亜希さんは、持っていたケースから聴診器や体温計などを取り出すと、診察を始めた。ナースなので器具の扱いには長けているが、普段は診察などやらないだろうからやや慣れてない手つきに見える。
「ナースさん、どうですか……」
僕は恐る恐るナースさんに伺いを立てた。僕は亜希さんのことを自然にナースさんと呼ぶようになっていた。そのせいか、後で他の人もナースさんと呼ぶようになるのだが。
「そうねえ。何か悪いもの食べてあたったのかもしれないし、体調崩しただけかも知れないし、よく分からない。でも熱もないし、心拍や呼吸も正常だから、そう心配しなくてもいいと思います。あの……何か持病とかあります?」
これは農家さんへの直接の質問だ。農家さんは痛みで苦しんではいるが、話せないわけではない。
「いや、わしは健康だべ。医者んとこ行っても、血圧も正常やし、いつも元気ですね、って言われとるがな」
農家さんはやっぱり丈夫だ。年齢的にもまだ老け込む歳でもないのだろう。
「それじや、薬飲んで寝ててください。それで良くならなければまた診ます」
「薬があるんですか?」
桂坂さんが訊いた。
「ええ、簡単な胃腸薬ぐらいならあるわ」
「へええ、そりゃいいですね」
僕は素直に喜んだ。最低限の薬でもあれば、安心感が全然違う。
「料子さん、農家さんの様子はどうですか!」
僕は家に駆け込むなり、農家さんの容態を尋ねた。
「あ、健太君。農家さんはさっきと変わらないわ。あれから吐いてはいないけど、お腹の痛みは続いてるみたい」
料子さんがそう報告してくれたのと同時に、亜希さんも桂坂さんと一緒に入ってきた。
「あ!」
料子さんがナース姿を見て、驚きの声を上げる。
「あ、あなた、ナースさんなの?」
「は、はい」
「ちょうどいいわ! お願い、この人を診て欲しいの」
亜希さんは、一目で事情を悟ったようだ。一応、腹が痛くなったというのは桂坂さんが道すがら伝えているはずだ。
「はい。あまり医療道具とか揃ってないのでどこまで診れるか分かりませんが、やってみます」
「お願いするわ」
亜希さんは、持っていたケースから聴診器や体温計などを取り出すと、診察を始めた。ナースなので器具の扱いには長けているが、普段は診察などやらないだろうからやや慣れてない手つきに見える。
「ナースさん、どうですか……」
僕は恐る恐るナースさんに伺いを立てた。僕は亜希さんのことを自然にナースさんと呼ぶようになっていた。そのせいか、後で他の人もナースさんと呼ぶようになるのだが。
「そうねえ。何か悪いもの食べてあたったのかもしれないし、体調崩しただけかも知れないし、よく分からない。でも熱もないし、心拍や呼吸も正常だから、そう心配しなくてもいいと思います。あの……何か持病とかあります?」
これは農家さんへの直接の質問だ。農家さんは痛みで苦しんではいるが、話せないわけではない。
「いや、わしは健康だべ。医者んとこ行っても、血圧も正常やし、いつも元気ですね、って言われとるがな」
農家さんはやっぱり丈夫だ。年齢的にもまだ老け込む歳でもないのだろう。
「それじや、薬飲んで寝ててください。それで良くならなければまた診ます」
「薬があるんですか?」
桂坂さんが訊いた。
「ええ、簡単な胃腸薬ぐらいならあるわ」
「へええ、そりゃいいですね」
僕は素直に喜んだ。最低限の薬でもあれば、安心感が全然違う。
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