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役目
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「そうだな……これから何が起こるか分からないしな」とスカウトさん。
「向こうじゃ個人情報とかいって、秘密にしたいこともあったかも知れないけど、ここだとみんなで協力しあって生きていくしかないもんね」
桂坂さんも全面的に同意してくれた。「私も賛成」「いいんじゃないですか」と料子さん、釣りキチさんも賛成してくれた。
「じゃ、その役目は健太に頼んでいいか?」
真っ直ぐ俺を見たスカウトさんが言った。俺も素直に答えざるを得ない。
「はい。僕で良ければ。言い出しっぺですから、責任持ってやらせてもらいます!」
そう硬くなるな、とスカウトさんにたしなめられた。みんなにバレバレになるほど、肩に力が入っていたらしい。
本当はパソコンがあれば、データ整理は楽なんだが、とにかくそろそろ記録しておかないと、後になればなるほど事務作業が大変になる。古代人とは違って、僕たちには共通の文字があるので、それを活かさない手はない。
「俺たちもデータ採取に全面的に協力しよう」
スカウトさんはみんなに声をかけた。
俺たちはその夜は、話し合った通り、二軒の家を使って寝た。夜はあまり明かりが使えないので、事務は明日になってからで、今日は早く眠ることにした。農家さんも落ち着いたみたいで、近くでスヤスヤと眠る寝息が聞こえる。僕もいつしか眠りに吸い込まれた……。
翌朝になって僕が目を覚ました頃には、農家さんはピンピンしていた。いつも通り、農作業を始めそうな勢いだったので、慌てて「今朝は少し様子をみたほうが」と忠告したのだけれど、逆に「わけえもんがそげなことじゃあかんべ!」と叱られた。
「すっかり元気になりましたね」
僕たちのやりとりを眺めていた料子さんが笑いながら言った。
「今朝、体温測ったんですけど、問題はないですね。一時的な腹痛だったんでしょう。たぶんもう大丈夫です」
隣でナースさんもうなずく。
「ほら、健太。看護士さんもこう言っとる。わしは不死身じゃ。健太も早う支度しろ。畑行くぞ!」
微笑ましいと言わんばかりに僕たちを眺めていた釣りキチさんも最後には笑い出した。まったく元気過ぎるのも困ったもんだ。僕は戸惑いながらも、農家さんに付き従って畑へと行った。
午前中は、このまま畑仕事だ。昼の間や夕食前に、昨日話題に出た名簿作りを進めていく予定である。それに午後一番は、桂坂さんと二人で、新入りを迎えにいかなくてはならない。
畑の作業には相変わらず慣れないままだが、初日に比べると体力的にも少し余裕が出てきた。草ぼうぼうの荒地が、適した農地に変わっていく様子を体感出来るのは気持ちいい。
「向こうじゃ個人情報とかいって、秘密にしたいこともあったかも知れないけど、ここだとみんなで協力しあって生きていくしかないもんね」
桂坂さんも全面的に同意してくれた。「私も賛成」「いいんじゃないですか」と料子さん、釣りキチさんも賛成してくれた。
「じゃ、その役目は健太に頼んでいいか?」
真っ直ぐ俺を見たスカウトさんが言った。俺も素直に答えざるを得ない。
「はい。僕で良ければ。言い出しっぺですから、責任持ってやらせてもらいます!」
そう硬くなるな、とスカウトさんにたしなめられた。みんなにバレバレになるほど、肩に力が入っていたらしい。
本当はパソコンがあれば、データ整理は楽なんだが、とにかくそろそろ記録しておかないと、後になればなるほど事務作業が大変になる。古代人とは違って、僕たちには共通の文字があるので、それを活かさない手はない。
「俺たちもデータ採取に全面的に協力しよう」
スカウトさんはみんなに声をかけた。
俺たちはその夜は、話し合った通り、二軒の家を使って寝た。夜はあまり明かりが使えないので、事務は明日になってからで、今日は早く眠ることにした。農家さんも落ち着いたみたいで、近くでスヤスヤと眠る寝息が聞こえる。僕もいつしか眠りに吸い込まれた……。
翌朝になって僕が目を覚ました頃には、農家さんはピンピンしていた。いつも通り、農作業を始めそうな勢いだったので、慌てて「今朝は少し様子をみたほうが」と忠告したのだけれど、逆に「わけえもんがそげなことじゃあかんべ!」と叱られた。
「すっかり元気になりましたね」
僕たちのやりとりを眺めていた料子さんが笑いながら言った。
「今朝、体温測ったんですけど、問題はないですね。一時的な腹痛だったんでしょう。たぶんもう大丈夫です」
隣でナースさんもうなずく。
「ほら、健太。看護士さんもこう言っとる。わしは不死身じゃ。健太も早う支度しろ。畑行くぞ!」
微笑ましいと言わんばかりに僕たちを眺めていた釣りキチさんも最後には笑い出した。まったく元気過ぎるのも困ったもんだ。僕は戸惑いながらも、農家さんに付き従って畑へと行った。
午前中は、このまま畑仕事だ。昼の間や夕食前に、昨日話題に出た名簿作りを進めていく予定である。それに午後一番は、桂坂さんと二人で、新入りを迎えにいかなくてはならない。
畑の作業には相変わらず慣れないままだが、初日に比べると体力的にも少し余裕が出てきた。草ぼうぼうの荒地が、適した農地に変わっていく様子を体感出来るのは気持ちいい。
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