異世界転移物語

月夜

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騒動翌朝

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   翌朝目覚めると、釣りキチさんはすっかり元気になったみたいで、もう朝から早速、家の外で釣り道具の手入れに精を出していた。

「おはようございます」

「おはよう。昨日は迷惑かけちまったな」

「いえいえ。運んだのはスカウトさんですし、見つけたのは自転車君で、僕は何も」

    言いながら本当に僕は何もしてないんだな、とあらためて気づいた。

「どうも疲れが溜まってたみたいだ」

「そりゃそうですよ。ここに来てから毎日釣りですもん。僕たちもあんまり見てあげられなくてすみません」

「いやいや、謝ることなんてないよ。むしろ、僕は毎日釣りが出来るなんて夢のような日々だと思ってたんだ。だからちょっと張り切り過ぎちゃったのかもしれない」

「まあ、楽しいことはつい夢中になっちゃいますよね。その気持ち分かります」

「お、釣りキチ君、もう体の方は大丈夫なのかい?」

    スカウトさんが僕たちに気づいて近づいてきた。

「ええ。昨日は本当にありがとうございました」

「一時はどうなることかと思ったが、たいしたことなくて良かったよ。ああいうことが起こるのを想定してなかった俺の責任だ。すまん」

    そう言って、スカウトさんは深々と頭を下げた。

「いえ、僕が無理し過ぎたせいです。気にしないでください」

   お互いに謝りあってる様子はなんか逆に笑ってしまう滑稽さがあった。昨日の心配がすべて吹き飛んだ瞬間だ。

「昨日、みんなで話したんだが、釣りキチ君は今日も湖に行くつもりなのかい?」

   スカウトさんは謝り終えると話題を変えた。

「ええ、そのつもりですけど」

「あまり無理しなくていいぞ。それと今日行くのなら、保育士さんと一緒に行ってくれ」

「保育士さんですか?」

    すぐに聞き返す。釣りキチさんは全然想像してなかったようだ。

「やはり釣りキチ君を一人で湖に行かせるのはよくないというところでは、みんなが一致していて、誰が適任か考えたんだ」

   スカウトさんは一拍置く。

「結論を言えば保育士さんが行くことになった。家での役割などを考慮した結果だ。それに特に困ることはないよな?」

「はい。それは特に問題ないですが……」

    歯切れが悪いのは、昨日までマイペースで釣りに専念できたのが、これから難しくなることへの未練だろうか。

「もちろんあくまで暫定的な組み合わせだ。これから人が増えてくれば、また釣りの得意な人物が来るかもしれないし、もっと適任者がいるかもしれない。そこも柔軟に考えていく必要がある」

   釣りキチさんは、スカウトさんの言葉を聞き漏らすまいと一生懸命聞いている風だった。
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