異世界転移物語

方策の検討

　確かに金田さんの論は適切だと感じる。昨日今日来たメンバーや、あまり全体観では見れなさそうな安食さんでは、少々荷が重いだろう。場合によっては善蔵さんたちと今後のことを詰めてくる必要があるかもしれないからだ。

「わたしはそれでいいと思うわ」

　料子さんが真っ先に賛成した。

「健太君はずっと私たちのリーダーだったし、金田さんがついているなら安心だもの」

　こういう時の料子さんの存在は大きい。明るくて料理が得意な以外は特技があるわけでなく、特別頭が冴えているわけでもないが、なぜだか適切なタイミングで助言をして、グループの方向性を決める助けとなることが多い。これで随分助かっている気がする。

「でも、実際のところ、これからどうするんです？　向こうの家は手狭で善蔵さん夫婦ぐらいしか暮らせないでしょ。一時的な宿泊はテント張るとしても、一緒に行動するのならば、いずれこっちに合流してもらう感じになるんですかね？」

　海原君が珍しく、長めの発言をした。今後のことがあまり思い描けないのだろう。実は僕もあまりはっきりとした未来像は描けていなかった。ぼんやりとした形としては、現状維持の暮らし方のまま双方で協力し合う形がベストだと考えてはいるが、金田さんにはまだ何か優れた代案があるのだろうか。

「うん。とりあえずこっちは栗原君が食材を持ってきてくれたおかげで、急場はしのげそうなのでその点はあまり心配はしていない。宿泊に関しては海原君の言った通りなんだが、いずれにしろ善蔵さん夫妻には一度こちらに来てもらって、俺たちの様子をこの目で見てもらう必要があると思う」

　金田さんは理路整然に答えた。なるほど。まずはそこからか。

「でも、二人は簡単にこっちに来ますかね？　その間、向こうの家を開けることになるでしょ。いないうちに誰かに占拠されたりとか、そんな風に心配したりしないでしょうか」

「そうだなあ。健太君の話を聞いた限りでは、奥さんの緑さんのほうはこちらに興味津々のようだが、善蔵さんはちょいと堅物かもしれないな。長く住んでいる家だから、そういうこともあるかもしれない」

　海原君の再度の指摘に、金田さんは渋々それを認めた。

「僕らが代わりにあの家を守るってのはどうです？」

　僕の思いつきは、しかしあっさり金子さんに否定された。

「俺らがそれだけ信用されていればな……。おそらくまだそこまで信頼は得られていないんじゃないかな」

　三人で考えこんでしまうと、料子さんが手を叩いて鼓舞するように言った。