異世界転移物語

月夜

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理系の分析

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「ええと、健太がこの世界に来た日を一日目とすると、再転移して村からこっちに移動したのは何日目になるんだっけ?」

「それまで三十二人来てたから、三十三日目のことになる。再転移した日から数えると、初日含めて今日が八日目になるよ」

「すると、合わせて……今日はちょうど四十日目になるのか」

「ああ、そうなるな。5月20日に転移してるから、僕の感覚では今は6月末か7月頭ってことになるんだが、実際のところ今がいつかは分からない」

「俺の中では5月20日なんだけどな」

 そう言って和也は小さく笑った。

「まあ、それにしちゃ、ちと暑いがな。沖縄にいた俺でさえ、暑く感じるから今は夏なんだろうな、きっと」

 それに頷いて同意を示した僕は、ちょっと姿勢を正して、真面目な口調で言った。

「なあ和也、理系のお前から見て、この現象、どう解釈する?」

「うん? 俺たちが転移した現象か? そうだな。理系もクソもねえな。今の科学常識を遥かに超えてるぜ。色々とな。だいたい人間みたいな大きな物が転移するって、今の科学技術では不可能だよ、そもそも」

「やっぱりそう見るか。文系の僕でもさっぱり分からないことだらけだ」

 和也は僕の冗談にニヤリと笑みを見せた。

「お前を含めた他の連中による壮大なドッキリだって言われたほうが、よっぽど驚かないかもしれん」

「そうだと僕も嬉しいんだが」

「お前の話聞いててなあ、気になった点がいくつかある」

「ほう。聞かせてくれ」

 さすが和也だ。何も考えていないように見えて、ちゃんと分析しながら聞いていたようだ。

「一つはな、人間関係によるトラブルがほとんど見られないことだ。今は人数少ないけど、これだけ多くの人間が1か所で不自由な暮らしをしていれば、大きなトラブルの一つや二つあって当然だ。それまでお互いほとんど知らなかった赤の他人同士だろ。ほら、避難所なんかに近い状況だ」

「なるほど。やっぱりそこに目をつけたか」

「まあ、たまたま気が合う仲間に恵まれたってことかもしれないがな。とりあえず日本人ばかりのようだし」

「二つ目は、人間の転移とともに必要な備品が一緒に転移されること。それがあまりにタイミングが良すぎる点だ」

「うん」

「サバイバル生活と言いつつ、実質、前の世界の非常食などの恩恵をかなり受けている。こっちの物資だけなら生き延びられなかったかもしれないよ」

「三つ目は、森に動物や鳥が一切いないこと。日本の森がどんな状態かは知らないが、まあ熊とか猿とか出会わなくても不思議というほどではないだろう。ただ、猪だのイタチだのタヌキだの、小動物の類が居なさそうなのはちょっと変だと思う。それに鳥がいないのはどう見てもおかしい。植物の受粉とかは、鳥が種子喰ってばらまくことが期待出来ないから、やはり風まかせか虫による媒介ということになるのかな?」
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