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学園編 18歳
104 南の国のお菓子を味わいましょう
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朝夕が涼しくなり、風に秋の匂いが乗り出した。葉の色が変わり、目を楽しませてくれる。クリスの見合いの日も迫り、エリーナはシチュエーションの研究に余念がない。そしてそれとは別に、学園でルドルフを見る機会が増えた。今も図書室に本を返しに行く途中、渡り廊下を歩いているとサロンの窓からルドルフの姿が目に入ったのだ。
しかも奥にはジークとラウルの姿もある。
(あら、あの三人が一緒だなんて珍しいわね)
ジークとラウルが一緒にいるのは何度か見ていたが、今日はルドルフも加わっている。遠目なので表情まではわからないが、きっと難しい話をしているのだろう。
エリーナはそんなことを思いながら本を返し、新しく見合い相手の撃退に参考になりそうな本を借りていく。これがここ最近のエリーナの日常だ。
そして屋敷へと帰ると、ルドルフからの招待状が来ていた。なんでも公爵夫人が南の国のお菓子を集めた茶会をするそうで、よかったら来ないかと誘われたのだ。
エリーナは招待状を持ってきたクリスに視線を移し、
「クリスはどうするの」
と問いかける。最近はよく一緒にお茶会に行っているからだ。
「ん~。今回はいいかな。仕事を片付けておきたいし、ココナッツミルク苦手なんだよね」
南の国のお菓子はココナッツミルクがよく使われる。だがクリスはココナッツミルク単体の味は苦手のようで、ココナッツプリンも作らせていたが自分は食べていなかった。
「そう……じゃぁ、行ってくるわね」
「うん。楽しんでおいで」
クリスはいつものように優しく微笑むが、エリーナはなぜがその笑みに寂しさを覚えた。
(子どもに戻ったみたい……一人で行くのが寂しいなんて)
そう胸の内で零し、エリーナは自室へと戻った。そして休日となり、馬車に揺られてバレンティア家へと向かったのだった。
お茶会はバレンティア家の庭園で行われた。十数人が参加しており、公爵夫人が厳選したお菓子とお茶を味わい、おしゃべりの花を咲かせる。エリーナは公爵夫人に挨拶をし、少し話をした後はルドルフと双子に捕まり東屋でおしゃべりをしていた。
「お姉様。この果物おいしいですわ」
と紅いドレスを着たローズが白い果実を渡してくる。双子は8歳になり、少し大人びて敬語を使うようになっていた。時々ベロニカの口調を彷彿とさせる。
「こっちもおいしいですわ」
と水色のドレスを着たリリーが黄色い果実を渡してくる。
両方受け取り味わったエリーナは、おいしいと笑みを浮かべていた。お付きの侍女が一つ一つ果物の名前を教えてくれるが、聞きなれない上に長いため一向に覚えられなかった。
「エリーナ。南の国の食べ物はどうだ? 口に合うか?」
「はい。優しい甘さでどれもおいしいですわ。この紅茶もまた違う味わいでおいしいです」
「そうか」
そうにこやかに話すルドルフは甘いものが苦手なため、果物を中心に食べていた。逆に南の国の辛い料理が好きで、香辛料が効いた料理をよく食べるらしい。
「なぁエリーナ嬢。卒業したら、南の国へ旅行に行かないか。もちろんクリス殿や、他の人も一緒に」
エリーナはその申し出に目を瞬かせる。外国に行ってみたいと思っていたため、なんとも魅力的な話だ。詳しく聞けば、何年かに一度南の国へは行っているそうで、公爵夫人の生家が持っている別荘に泊るらしい。そしてその機会に、公爵夫人は知り合いに声をかけて南の国を案内するのが恒例となっているそうだ。
「それは楽しそうですね。クリスにも聞いてみます」
その答えを聞いた双子が目を輝かせる。
「一緒に行きましょ~」
「とても暖かくていいところですわ~」
「そうだな。暖かいからか陽気で情熱的な人が多く、おもしろいところだ」
エリーナの中で南の国と言えば、お騒がせ王女と騎士のイメージしかない。確かにあの一途さは、情熱的だったのかもしれない。今思い出せば少し懐かしくなった。いつか機会があればまた会いたいものだ。
そして話を交えつつ、双子とともにお菓子を全種類制覇していると、じっと見つめてくるルドルフに気が付いた。エリーナが不思議に思ってスプーンを持ったまま小首を傾げると、ルドルフは眼鏡の奥の瞳を細める。
「幸せそうに食べるなと思って……エリーナ嬢。貴女は今幸せか?」
「え、はい。とても」
唐突に訊かれたので、反射的に答えてから目を瞬かせた。ルドルフは吟味するようにこちらを見ており、何か他の意味があったのかと頭を捻る。
「そうか、それならいい」
だが見守るような視線を向け微笑むルドルフは穏やかで、エリーナはさらに首を傾げた。
(ルドルフ様から腹黒さが消えたわ……)
逆にただにこやかなルドルフは怖いなと、エリーナは失礼なことを考えるのだった。そしてルドルフは席を立って他の令嬢たちに挨拶をしに行き、エリーナは双子とおしゃべりをする。双子は日々勉強と作法の修練をしており、つまらないと言いながらも頑張っているようだ。
「いつかベロニカお姉様みたいな強くて気高いレディになるの」とローズが胸を張って目標を口にする。
「私はエリーナお姉様みたいな優しくてひたむきなレディになるのよ」とリリーも負けじと胸を張る。
二人はお互いをライバル視して切磋琢磨しているようで、見ていて微笑ましい。エリーナは将来を楽しみに思いながら、双子の話に相槌を打つ。そうして時間を過ごせばあっと言う間に、茶会は終わったのだった。
しかも奥にはジークとラウルの姿もある。
(あら、あの三人が一緒だなんて珍しいわね)
ジークとラウルが一緒にいるのは何度か見ていたが、今日はルドルフも加わっている。遠目なので表情まではわからないが、きっと難しい話をしているのだろう。
エリーナはそんなことを思いながら本を返し、新しく見合い相手の撃退に参考になりそうな本を借りていく。これがここ最近のエリーナの日常だ。
そして屋敷へと帰ると、ルドルフからの招待状が来ていた。なんでも公爵夫人が南の国のお菓子を集めた茶会をするそうで、よかったら来ないかと誘われたのだ。
エリーナは招待状を持ってきたクリスに視線を移し、
「クリスはどうするの」
と問いかける。最近はよく一緒にお茶会に行っているからだ。
「ん~。今回はいいかな。仕事を片付けておきたいし、ココナッツミルク苦手なんだよね」
南の国のお菓子はココナッツミルクがよく使われる。だがクリスはココナッツミルク単体の味は苦手のようで、ココナッツプリンも作らせていたが自分は食べていなかった。
「そう……じゃぁ、行ってくるわね」
「うん。楽しんでおいで」
クリスはいつものように優しく微笑むが、エリーナはなぜがその笑みに寂しさを覚えた。
(子どもに戻ったみたい……一人で行くのが寂しいなんて)
そう胸の内で零し、エリーナは自室へと戻った。そして休日となり、馬車に揺られてバレンティア家へと向かったのだった。
お茶会はバレンティア家の庭園で行われた。十数人が参加しており、公爵夫人が厳選したお菓子とお茶を味わい、おしゃべりの花を咲かせる。エリーナは公爵夫人に挨拶をし、少し話をした後はルドルフと双子に捕まり東屋でおしゃべりをしていた。
「お姉様。この果物おいしいですわ」
と紅いドレスを着たローズが白い果実を渡してくる。双子は8歳になり、少し大人びて敬語を使うようになっていた。時々ベロニカの口調を彷彿とさせる。
「こっちもおいしいですわ」
と水色のドレスを着たリリーが黄色い果実を渡してくる。
両方受け取り味わったエリーナは、おいしいと笑みを浮かべていた。お付きの侍女が一つ一つ果物の名前を教えてくれるが、聞きなれない上に長いため一向に覚えられなかった。
「エリーナ。南の国の食べ物はどうだ? 口に合うか?」
「はい。優しい甘さでどれもおいしいですわ。この紅茶もまた違う味わいでおいしいです」
「そうか」
そうにこやかに話すルドルフは甘いものが苦手なため、果物を中心に食べていた。逆に南の国の辛い料理が好きで、香辛料が効いた料理をよく食べるらしい。
「なぁエリーナ嬢。卒業したら、南の国へ旅行に行かないか。もちろんクリス殿や、他の人も一緒に」
エリーナはその申し出に目を瞬かせる。外国に行ってみたいと思っていたため、なんとも魅力的な話だ。詳しく聞けば、何年かに一度南の国へは行っているそうで、公爵夫人の生家が持っている別荘に泊るらしい。そしてその機会に、公爵夫人は知り合いに声をかけて南の国を案内するのが恒例となっているそうだ。
「それは楽しそうですね。クリスにも聞いてみます」
その答えを聞いた双子が目を輝かせる。
「一緒に行きましょ~」
「とても暖かくていいところですわ~」
「そうだな。暖かいからか陽気で情熱的な人が多く、おもしろいところだ」
エリーナの中で南の国と言えば、お騒がせ王女と騎士のイメージしかない。確かにあの一途さは、情熱的だったのかもしれない。今思い出せば少し懐かしくなった。いつか機会があればまた会いたいものだ。
そして話を交えつつ、双子とともにお菓子を全種類制覇していると、じっと見つめてくるルドルフに気が付いた。エリーナが不思議に思ってスプーンを持ったまま小首を傾げると、ルドルフは眼鏡の奥の瞳を細める。
「幸せそうに食べるなと思って……エリーナ嬢。貴女は今幸せか?」
「え、はい。とても」
唐突に訊かれたので、反射的に答えてから目を瞬かせた。ルドルフは吟味するようにこちらを見ており、何か他の意味があったのかと頭を捻る。
「そうか、それならいい」
だが見守るような視線を向け微笑むルドルフは穏やかで、エリーナはさらに首を傾げた。
(ルドルフ様から腹黒さが消えたわ……)
逆にただにこやかなルドルフは怖いなと、エリーナは失礼なことを考えるのだった。そしてルドルフは席を立って他の令嬢たちに挨拶をしに行き、エリーナは双子とおしゃべりをする。双子は日々勉強と作法の修練をしており、つまらないと言いながらも頑張っているようだ。
「いつかベロニカお姉様みたいな強くて気高いレディになるの」とローズが胸を張って目標を口にする。
「私はエリーナお姉様みたいな優しくてひたむきなレディになるのよ」とリリーも負けじと胸を張る。
二人はお互いをライバル視して切磋琢磨しているようで、見ていて微笑ましい。エリーナは将来を楽しみに思いながら、双子の話に相槌を打つ。そうして時間を過ごせばあっと言う間に、茶会は終わったのだった。
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