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学園編 18歳
120 親友たちから活をいれられましょう
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クリスと仲直りをし身の回りの恋愛ごともひと段落がついたエリーナは、上機嫌で学校に行った。鼻歌を歌いそうなほどご機嫌であり、学食のプリンも三つ食べた。なぜかプリンを手に取った瞬間、学食全体が騒めいた気がしたが……。
そして放課後はニコニコ顔で待ち受けていた二人にサロンに連れていかれ、麗しい笑みを浮かべたベロニカに「報告があるでしょ?」と話を向けられた。ある程度予想していたエリーナは、満面の笑みで「はい」と頷く。二人のおかげでクリスに向き合うことができたのだ。エリーナだって話したいと思っていた。
嬉しさに顔をにやけさせながら、照れたようにエリーナは昨日の出来事を話していく。
「あの後、ラウル先生のところに行って断りましたわ。それで、屋敷に帰ってからクリスに会って、謝ったの」
「そう、それで?」
ベロニカは満足そうに頷き、リズは早く続きを聞きたそうに体をエリーナに向けて目を輝かせていた。
「それで、クリスにローゼンディアナ家を継いでほしいって伝えたわ」
二人は待ちに待った展開に前のめりになり、頷いて続きを促す。
「それでどうなったんですか?」
リズのテンションもうなぎのぼりだ。
「クリスは正式に継ぐように手続きをするって……だから、しばらくは結婚とか考えないで一緒にいられるんです」
ここに来て、二人は「ん?」と首を傾げた。どうも思っていた流れと違う気がする。
「それで?」
「え、それだけですよ」
ベロニカのなけなしの望みをかけた問いかけに、エリーナは目を瞬かせて何の気負いもなく答えた。二人の目が吊り上がる。
(あれ……二人の顔が怖いわ)
みるみるうちに怒りが滲む微笑みを浮かべた二人を見て、エリーナは何かを間違えたらしいと気づくが遅い。背中にぞわぞわと寒気が走り、背筋が伸びた。
「エリーナ。貴女、告白はしなかったの?」
地をはうような低い声で、ベロニカはゆっくりと問いかけた。
「え、告白なんてできませんよ!」
「エリーナ様の意気地なし! なんでしてないんですか! むしろさっきの流れは告白してゴールインでしょ!」
「え、え? 何言ってるの?」
二人から責められエリーナは目を白黒させる。ベロニカが深々とため息をついてからお茶をすすった。
「もうすぐローストチキンになりそうだったのに、ひよこに逆戻りかしら」
その顔は諦めており、それを見たリズも「ですよね」とため息をついた。エリーナは何とも居たたまれない気持ちになる。
「な、何よ……」
声が震えて小さくなった。しかもローストチキンは嫌だ。
「エリーナ。逆に聞くけど、なんで告白しないの?」
ベロニカは切り替えて、今度はそう尋ねた。リズも話を聞こうと、じっと視線をエリーナに向ける。二人から視線を受けたエリーナは少し表情を翳らせ、伏し目がちに答えた。
「その……断られるのが怖くて」
「それだけじゃないでしょ。何にひっかかってるの?」
ベロニカにピシャリと指摘され、エリーナは言葉を詰まらせた。リズにちらりと視線を向けて、助けを求めるがさすがにリズもわからない。だが本当のことをベロニカに言う事もできず、エリーナは少し考えてから口を開いた。
「この先、今のままずっといられるとは限らないじゃないですか。いつか、急に終わってしまうかもしれないと思うと、怖くて……」
もしエリーナが想いを伝えて、クリスと恋人になれたとしてもその日々がいつか終わるのであれば、幸せを失う辛さを味わうのであれば、最初から手に入れたくないのだ。
抽象的な言い方に怪訝な表情をするベロニカに対し、ゲームの終わりを指していると分かったリズは不安げに顔を曇らす。
「つまり、未来が不安で踏み出せないってこと?」
「はい……」
エリーナが頷くと、ベロニカは馬鹿馬鹿しそうに鼻を鳴らした。そして目をかっと見開いて鋭いまなざしを向ける。
「エリーナ、いつもの威勢はどこに行ったの? そんな不確定なものを恐れるなんて、貴女らしくないわ!」
「でも、選んでそれを失ったら、辛いじゃないですか」
悪役令嬢としてイベントを中から眺め、決まった返答しかしないモブキャラたちと日常を過ごす。もうそんな日々には戻りたくない。恋愛の幸せを知ってしまったならなおさらだ。
エリーナが辛そうに眉根を寄せた時、リズに腕を掴まれた。驚いて顔をむけると、目を潤ませて見上げている。
「エリーナ様! 大丈夫ですよ。絶対終わったりはしませんよ。それに、もし終わったとしても、選択した後悔よりも選択しなかった後悔のほうが辛いはずです!」
「そうよ。そんなことでうじうじ悩んでいるなんて、情けない。悪役令嬢に憧れているのでしょ? 悪役令嬢なら、迷わず自分の意思を貫きなさい!」
二人の言葉がエリーナの胸に強く響く。魂を揺さぶられたような衝撃を受けて、エリーナはゆっくり二人の顔を交互に見た。
「ベロニカ様、リズ……」
二人の言葉に背中を押され、胸の内から勇気が湧き上がってくる。
「そうね……そうよ。私はプロの悪役令嬢だもの。自分の恋にまっすぐ、当たって砕けるのが悪役令嬢だわ!」
「いえ、当たって砕けちゃだめですよ」
意気込むエリーナにリズが冷静にツッコミを入れる。一瞬間があった後、三人は同時に笑い出した。迷っていた気持ちがすっと無くなり、不安はあるが前向きになれた。エリーナは二人の親友に感謝し、嬉しそうに微笑むのである。
そしてエリーナは気合を入れ二人に見送られて、ローゼンディアナ家に帰っていった。
残った二人はやれやれとお茶を飲んで一息入れる。そこでふと、リズが気づいたように口を開いた。
「あ、エリーナ様に卒業パーティーで侍女を務めること言いそびれました」
卒業パーティーには例年侍女科から成績優秀者が選ばれるのだ。リズは五番内に入っており、最近はパーティーに向けた特訓で忙しかった。
「まぁ、また今度言えばいいでしょ」
「そうですね」
二人はのんびりとお茶を飲んで、体を温めた。日が落ちるのが早くなり、薄暗くなった外は寒くなってきている。
気づけば卒業式まであと二週間となっていたのだった。
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「あの後、ラウル先生のところに行って断りましたわ。それで、屋敷に帰ってからクリスに会って、謝ったの」
「そう、それで?」
ベロニカは満足そうに頷き、リズは早く続きを聞きたそうに体をエリーナに向けて目を輝かせていた。
「それで、クリスにローゼンディアナ家を継いでほしいって伝えたわ」
二人は待ちに待った展開に前のめりになり、頷いて続きを促す。
「それでどうなったんですか?」
リズのテンションもうなぎのぼりだ。
「クリスは正式に継ぐように手続きをするって……だから、しばらくは結婚とか考えないで一緒にいられるんです」
ここに来て、二人は「ん?」と首を傾げた。どうも思っていた流れと違う気がする。
「それで?」
「え、それだけですよ」
ベロニカのなけなしの望みをかけた問いかけに、エリーナは目を瞬かせて何の気負いもなく答えた。二人の目が吊り上がる。
(あれ……二人の顔が怖いわ)
みるみるうちに怒りが滲む微笑みを浮かべた二人を見て、エリーナは何かを間違えたらしいと気づくが遅い。背中にぞわぞわと寒気が走り、背筋が伸びた。
「エリーナ。貴女、告白はしなかったの?」
地をはうような低い声で、ベロニカはゆっくりと問いかけた。
「え、告白なんてできませんよ!」
「エリーナ様の意気地なし! なんでしてないんですか! むしろさっきの流れは告白してゴールインでしょ!」
「え、え? 何言ってるの?」
二人から責められエリーナは目を白黒させる。ベロニカが深々とため息をついてからお茶をすすった。
「もうすぐローストチキンになりそうだったのに、ひよこに逆戻りかしら」
その顔は諦めており、それを見たリズも「ですよね」とため息をついた。エリーナは何とも居たたまれない気持ちになる。
「な、何よ……」
声が震えて小さくなった。しかもローストチキンは嫌だ。
「エリーナ。逆に聞くけど、なんで告白しないの?」
ベロニカは切り替えて、今度はそう尋ねた。リズも話を聞こうと、じっと視線をエリーナに向ける。二人から視線を受けたエリーナは少し表情を翳らせ、伏し目がちに答えた。
「その……断られるのが怖くて」
「それだけじゃないでしょ。何にひっかかってるの?」
ベロニカにピシャリと指摘され、エリーナは言葉を詰まらせた。リズにちらりと視線を向けて、助けを求めるがさすがにリズもわからない。だが本当のことをベロニカに言う事もできず、エリーナは少し考えてから口を開いた。
「この先、今のままずっといられるとは限らないじゃないですか。いつか、急に終わってしまうかもしれないと思うと、怖くて……」
もしエリーナが想いを伝えて、クリスと恋人になれたとしてもその日々がいつか終わるのであれば、幸せを失う辛さを味わうのであれば、最初から手に入れたくないのだ。
抽象的な言い方に怪訝な表情をするベロニカに対し、ゲームの終わりを指していると分かったリズは不安げに顔を曇らす。
「つまり、未来が不安で踏み出せないってこと?」
「はい……」
エリーナが頷くと、ベロニカは馬鹿馬鹿しそうに鼻を鳴らした。そして目をかっと見開いて鋭いまなざしを向ける。
「エリーナ、いつもの威勢はどこに行ったの? そんな不確定なものを恐れるなんて、貴女らしくないわ!」
「でも、選んでそれを失ったら、辛いじゃないですか」
悪役令嬢としてイベントを中から眺め、決まった返答しかしないモブキャラたちと日常を過ごす。もうそんな日々には戻りたくない。恋愛の幸せを知ってしまったならなおさらだ。
エリーナが辛そうに眉根を寄せた時、リズに腕を掴まれた。驚いて顔をむけると、目を潤ませて見上げている。
「エリーナ様! 大丈夫ですよ。絶対終わったりはしませんよ。それに、もし終わったとしても、選択した後悔よりも選択しなかった後悔のほうが辛いはずです!」
「そうよ。そんなことでうじうじ悩んでいるなんて、情けない。悪役令嬢に憧れているのでしょ? 悪役令嬢なら、迷わず自分の意思を貫きなさい!」
二人の言葉がエリーナの胸に強く響く。魂を揺さぶられたような衝撃を受けて、エリーナはゆっくり二人の顔を交互に見た。
「ベロニカ様、リズ……」
二人の言葉に背中を押され、胸の内から勇気が湧き上がってくる。
「そうね……そうよ。私はプロの悪役令嬢だもの。自分の恋にまっすぐ、当たって砕けるのが悪役令嬢だわ!」
「いえ、当たって砕けちゃだめですよ」
意気込むエリーナにリズが冷静にツッコミを入れる。一瞬間があった後、三人は同時に笑い出した。迷っていた気持ちがすっと無くなり、不安はあるが前向きになれた。エリーナは二人の親友に感謝し、嬉しそうに微笑むのである。
そしてエリーナは気合を入れ二人に見送られて、ローゼンディアナ家に帰っていった。
残った二人はやれやれとお茶を飲んで一息入れる。そこでふと、リズが気づいたように口を開いた。
「あ、エリーナ様に卒業パーティーで侍女を務めること言いそびれました」
卒業パーティーには例年侍女科から成績優秀者が選ばれるのだ。リズは五番内に入っており、最近はパーティーに向けた特訓で忙しかった。
「まぁ、また今度言えばいいでしょ」
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