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アスタリア王国編
161 恋人の友人に秘密を明かそうか
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衝撃から少しずつ立ち直ったクリスは、気になる言葉があったことに気づく。まずはそこからだ。
「転生者って何?」
そういえば、クリスがここへ来る前に乙女ゲームの管理者がその言葉を呟いていた。リズは混乱した表情だが、ひとまずその問いには答えた。
「えっと、こことは違う世界で生きていて、死んでからこっちでリズとして生まれ変わったんです」
「……違う世界っていうと、プレイヤーがいる世界?」
クリスは疲れてきたのか、少し投げやりな表情で問いかける。なんだか取り繕うのが馬鹿らしくなってきたのだ。確かに、自分の隠し事が吹き飛ぶ衝撃的な事実だった。
「え、プレイヤーを知っているということは、クリスさんも転生……いえ、ゲームのキャラなんですね」
日本語が通じないのは確認済みだった。それに先ほどの反応は、エリーナと同じだったのだ。
「ってことは、エリーナのことも知っているのか」
クリスの中で瞬時に全てが繋がった。どうりで他のキャラと違って親しみを感じるわけだ。この世界とは異質の、プレイヤー側なんだから。
それに対してリズは信じられないと大口を開けつつ頷く。お互いこんな近くに似た境遇のものがいるとは思わなかった。
「はい。数多くの乙女ゲームで悪役令嬢を演じられたプロだと……。クリス様は、攻略キャラのプロですか?」
「……いや、モブの中にいた。プロでもない」
そしてリズがプレイヤー側だと知って気が抜けたクリスは、ポツポツと今までのことをかいつまんで話した。気づけばモブの中を転々とし、十回目でエリーナに出会い、二十九回目で彼女の解放を願い、一緒にこの世界に来たこと。そしてクリスとして目覚めてから、裏でエリーナのために暗躍したこと。それを聞いたリズは開いた口が塞がらず、ただただ驚きに腰を抜かしていた。そして思う。
「愛が、重いですね」
正直な感想だった。それを受け、クリスは不安げに眉尻を下げる。
「やっぱり、エリーナも引くよね……隠し通そうかな」
「あ、いえ……エリーナ様はどうかわかりません。すみません。つい……」
と謝ってから、リズはふと冷静になって考えてみる。
(待って、つまり二人は同じゲームキャラの中の人だったわけで……これ、どちらかが正直に話せば速攻解決するんじゃ?)
なんだか真剣に悩んでいるエリーナが可哀想になってきたリズだ。そこで、クリスを押すことにする。
「クリス様。打ち明けましょう。絶対大丈夫です。クリス様が話せばエリーナ様も話してくださいます!」
「え……でもリズ引いたよね」
クリスは真顔だ。引いてしまったことは事実なので、リズは申し訳ありませんと頭を下げる。クリスの想いは尊敬に値し、賞賛するが重い。
「エリーナ様ですから、大丈夫です」
「……まぁ、様子を見て伝えるよ」
リズはこの時点ですぐに動く気がないことを察するが、流すことにした。それよりもエリーナの最大の悩みを取り除くために確認しなければいけないことがある。
「クリス様。ということは、この世界は二人へのご褒美であり、次のゲームキャラに飛ぶことはないんですね」
「うん。ないよ」
「それなら安心です。そこだけでも早くエリーナ様にお伝えしてくださいね」
この部分だけでも先に伝えたいが、クリスが全てを明かす方が混乱が少ないだろう。それにリズが半端に教えたところで、つっこまれればすぐにぼろがでる。
「わかったよ。リズ、ありがとう。そして、これからもエリーのことをよろしくね」
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
そして、そろそろエリーナの勉強が終わる時間になったので、リズは一礼してクリスの部屋を後にした。まだ情報が多すぎて処理しきれていない。夜にでもゆっくり考え直すつもりだ。
「あ……」
広い王宮の廊下を歩けば、ふと大事なことを思い出した。
(クリス様にゲームの続編があることを言うの忘れたわ……)
しかもそのストーリーがゆるやかに始まっていることも。
(でも、クリス様はシナリオを知っておられるし、もうご存知よね。今度二人で話せることがあれば、詳しいシナリオと分岐を教えてもらえばいいわ)
と楽観的に考え、リズは頭を切り替えてエリーナが勉強している部屋まで向かうのだった。
「転生者って何?」
そういえば、クリスがここへ来る前に乙女ゲームの管理者がその言葉を呟いていた。リズは混乱した表情だが、ひとまずその問いには答えた。
「えっと、こことは違う世界で生きていて、死んでからこっちでリズとして生まれ変わったんです」
「……違う世界っていうと、プレイヤーがいる世界?」
クリスは疲れてきたのか、少し投げやりな表情で問いかける。なんだか取り繕うのが馬鹿らしくなってきたのだ。確かに、自分の隠し事が吹き飛ぶ衝撃的な事実だった。
「え、プレイヤーを知っているということは、クリスさんも転生……いえ、ゲームのキャラなんですね」
日本語が通じないのは確認済みだった。それに先ほどの反応は、エリーナと同じだったのだ。
「ってことは、エリーナのことも知っているのか」
クリスの中で瞬時に全てが繋がった。どうりで他のキャラと違って親しみを感じるわけだ。この世界とは異質の、プレイヤー側なんだから。
それに対してリズは信じられないと大口を開けつつ頷く。お互いこんな近くに似た境遇のものがいるとは思わなかった。
「はい。数多くの乙女ゲームで悪役令嬢を演じられたプロだと……。クリス様は、攻略キャラのプロですか?」
「……いや、モブの中にいた。プロでもない」
そしてリズがプレイヤー側だと知って気が抜けたクリスは、ポツポツと今までのことをかいつまんで話した。気づけばモブの中を転々とし、十回目でエリーナに出会い、二十九回目で彼女の解放を願い、一緒にこの世界に来たこと。そしてクリスとして目覚めてから、裏でエリーナのために暗躍したこと。それを聞いたリズは開いた口が塞がらず、ただただ驚きに腰を抜かしていた。そして思う。
「愛が、重いですね」
正直な感想だった。それを受け、クリスは不安げに眉尻を下げる。
「やっぱり、エリーナも引くよね……隠し通そうかな」
「あ、いえ……エリーナ様はどうかわかりません。すみません。つい……」
と謝ってから、リズはふと冷静になって考えてみる。
(待って、つまり二人は同じゲームキャラの中の人だったわけで……これ、どちらかが正直に話せば速攻解決するんじゃ?)
なんだか真剣に悩んでいるエリーナが可哀想になってきたリズだ。そこで、クリスを押すことにする。
「クリス様。打ち明けましょう。絶対大丈夫です。クリス様が話せばエリーナ様も話してくださいます!」
「え……でもリズ引いたよね」
クリスは真顔だ。引いてしまったことは事実なので、リズは申し訳ありませんと頭を下げる。クリスの想いは尊敬に値し、賞賛するが重い。
「エリーナ様ですから、大丈夫です」
「……まぁ、様子を見て伝えるよ」
リズはこの時点ですぐに動く気がないことを察するが、流すことにした。それよりもエリーナの最大の悩みを取り除くために確認しなければいけないことがある。
「クリス様。ということは、この世界は二人へのご褒美であり、次のゲームキャラに飛ぶことはないんですね」
「うん。ないよ」
「それなら安心です。そこだけでも早くエリーナ様にお伝えしてくださいね」
この部分だけでも先に伝えたいが、クリスが全てを明かす方が混乱が少ないだろう。それにリズが半端に教えたところで、つっこまれればすぐにぼろがでる。
「わかったよ。リズ、ありがとう。そして、これからもエリーのことをよろしくね」
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
そして、そろそろエリーナの勉強が終わる時間になったので、リズは一礼してクリスの部屋を後にした。まだ情報が多すぎて処理しきれていない。夜にでもゆっくり考え直すつもりだ。
「あ……」
広い王宮の廊下を歩けば、ふと大事なことを思い出した。
(クリス様にゲームの続編があることを言うの忘れたわ……)
しかもそのストーリーがゆるやかに始まっていることも。
(でも、クリス様はシナリオを知っておられるし、もうご存知よね。今度二人で話せることがあれば、詳しいシナリオと分岐を教えてもらえばいいわ)
と楽観的に考え、リズは頭を切り替えてエリーナが勉強している部屋まで向かうのだった。
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